書籍紹介 斉藤武一著「原発紙芝居」

2020年05月

お薦めしたい本
紹介者 山田耕作



斉藤武一著 「原発紙芝居」

『子どもたちの未来のために−とても悲しいけれど空から灰が降ってくる』

寿郎社出版 https://www.ju-rousha.com/
2013年4月


ISBN978-4-902269-59-8 C0036定価1500円+税 DVD付き



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書籍紹介 斉藤武一著「原発紙芝居」(pdf,3ページ,621KB)


 はじめに
 わたしがトリチウムを含む福島原発廃水の海洋投棄反対を全国の皆さんにアピールしている時やICRP勧告案の改定案に反対する共同パブコメへの賛同を募っているとき、放射線被曝やトリチウムに関連して様々の方から斉藤武一さんの市民科学者としての活動と研究成果とその著書について紹介をうけた。特に「アヒンサー」の小田美智子さんにお世話になった。本書はそれらの交流のおかげで手にした斉藤武一さんの著作の中の1冊である。2013年の出版であるから私の調査不足、怠慢で紹介が遅くなってしまった。しかし、その内容は以下に記すように新鮮で時代の最先端であると思う。
 本書の後書きによると福島原発事故以来2013年3月までの2年間で北海道を中心に130回ほどの講演を行ったということである。その時使用された紙芝居を絵本にしてできたものである。

 本書の内容と意義
 本書前半は斉藤さんのふるさと北海道岩内町の歴史と自らの生い立ちの紹介から始まって、保育士としての仕事、反原発に考えを変えた理由・動機が語られる。子どもを含め全ての人間に対する斎藤さんの暖かい心と真摯な生き方が伝わってくる。後半は原発、放射線の危険性が語られる。特に核実験や原発による死の灰の被害が紹介される。大人でも十分読み応え、見応えのある著作である。特に文科省の放射線副読本と対比してこどもたちに読み聞かせたい本であり、紙芝居・DVDである。その意味で本書の存在意義がいっそう増したと考え、みなさんに推薦したいと思った。

 内部被曝に対する警告
 子ども向けの絵本だからといって内容が抽象的で曖昧なわけではない。むしろ具体的でポイントを突いた鋭い教材である。たとえば被曝の危険性に関して言えば、ペトカウ効果を強調して内部被曝の危険性を指摘している。ペトカウ効果というのは、「細胞の膜は高線量の外部照射ではなかなか破壊されないが、内部被曝の形で放射線を持続的に受けると低線量でも簡単に破壊される」という現象である。この現象をアブラム・ペトカウ博士というカナダ原子力公社主任研究員が偶然発見したのである。ペトカウ博士の実験では脂肪の二重層でできた細胞膜のモデルに、外部被曝の形で、高線量の放射線を外部から断続的に照射すると、細胞膜は35,000ミリシーベルトでやっと壊れた。一方細胞膜を放射性の食塩水の中に入れておいたところ、低線量内部被曝の形になって、わずか7ミリシーベルトで破壊された。外部被曝の5000分の1というわずかの放射線量で破壊されたのである。そしてペトカウ博士は細胞膜を破壊するのは放射線の直接作用でなく、放射線によって生じた活性酸素による間接作用であることを明らかにした。斉藤さんはペトカウ博士の発見を紹介し、さらに内部被曝の危険性として具体的に数値を上げて次のように記述している。
 本書80ページに「日本の食品の安全基準を守っていても子ども達を守れません。1日、10ベクレルずつ取り入れたとすると、体重30キロの子どもの場合100日で600ベクレルになります。600を体重30キロで割りますと体重1キロ当たり20ベクレルになります。この20を超えると心臓に異変が起きることをバンダジェフスキー博士は発見しました」。この『長寿命放射性核種体内取り込み症候群』を発見したバンダジェフスキー博士もまたペトカウ博士と同様研究を妨害され、その上アムネスティなどの救出まで5年間無実の罪でとらわれの身となった。このように放射線被曝に関する科学的な真実が隠蔽されてきたのである。ここで斉藤さんの見解に対比して政府復興庁のパンフ「放射線のホント」などに協力してきた東大教授早野龍五氏の被曝評価を紹介したい。
 東大教授であった早野龍五氏は糸井重里氏との対談で、『知ろうとすること』(新潮文庫2014年)という本で(81ページ)「年間5万ベクレルまでというのは、ある意味安全なレベルなんですよ」といっている。とんでもないことである。斎藤さんと早野氏のどちらが科学的であるかは明白である。毎日100ベクレル摂取する(年間36,500ベクレル摂取する)とICRP(国際放射線防護委員会)によると約1年で体内に14,000ベクレル蓄積する。体重60キロの人だと体重1キロ当たり233ベクレル、体重30キロだと466ベクレル蓄積する。これはバンダジェフスキーの『長寿命放射性核種取り込み症候群』で死亡した大人や子どもの死体解剖の結果から測定された多数の死体の各臓器1キロ当たりのセシウム137の蓄積量にほぼ等しい。放射線の内部被曝により、多臓器不全で死んだ大人、子どものセシウム137の蓄積量に近いのである。斉藤さんは被曝死よりも子どもの健康を考えて心臓疾患を紹介されている。「市民科学者」と地元の人たちは呼んでいるそうであるがほとんど独学で斉藤さんは正しく科学的な結論に到達したのである。

 紙芝居・絵本の素晴らしさ
 わたしが本書の価値として重要と思うことは放射線に関する教育教材としての高い価値である。紙芝居の1枚1枚は訴えるべき結論を単純・明快に表現している。写真のように写実でなく絵本として本質を力強く表現している。これは斉藤さんが多くの子どもや父兄と話し合われた結果完成したものと思われる。文科省の放射線副読本などよりずっとわかりやすく説得力がある。ぜひ、学校や図書館で副読本と比較して読まれるべき本であると思う。先述の早野龍五氏も復興庁の「放射線のホント」というパンフ等に協力し誤った安全という情報を伝えている。ぜひ、正しい見解である本書が多くの人、特に子ども達に見て、読んで学習していただきたいと思う。
 なお斉藤さんには「理想の保育園−障害児は神様」「泊原発と肺がん」「自伝『海へ40年』−水温観測物語―」「ラドンとはなんだ」「『がんの村』と『泊原発』」など多数の研究と著書がある。