ウソに塗り固められた 復興庁パンフ『放射線のホント』ミニパンフ版 渡辺悦司

2018年06月


ウソに塗り固められた

復興庁パンフ『放射線のホント』

ミニパンフ版



市民と科学者の内部被曝問題研究会会員 渡辺悦司
2018年6月20日



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ウソに塗り固められた復興庁パンフ『放射線のホント』ミニパンフ版(pdf,9ページ,1308KB)


 政府は、放射線被曝についての子供・生徒向けのパンフレットを公表している。復興庁パンフ『放射線のホント』だ。マンガも交えて主張されているのは次の10項目。全て偽りである。


パンフレットの表紙


   「子供だまし」の10項目、嘘は子供にもにもわかるはず

 1.「放射線はふだんから身の回りにあり、ゼロにはできない」(復興庁)――だからといって追加して被曝しても「安全」という結論にはならない。
 2.「放射線は移らない」(復興庁)――放射性物質、放射性微粒子は、見えない細菌やウイルスと同じように、呼吸や皮膚から、食べた食品から「移ってくる」。
 3.「放射線の影響は遺伝しない」(復興庁)――嘘。政府が依拠している国連科学委員会の報告や国際放射線防護委員会(ICRP)の勧告でさえ、遺伝的影響が「ある」あるいは「ある可能性が高い」ことを認めている。
 4.「放射線の健康への影響はある・なしでなく量が問題」(復興庁)――問題のすり替え。被曝すれば影響や被害は「ある」のが国際的コンセンサス。
 5.「100〜200ミリシーベルトの被曝での発がんリスクの増加は、野菜不足や塩分の取り過ぎと同じくらい」(復興庁)――詐欺的なトリックである。以下に検討する。
 6.「福島原発事故の放射線で健康に影響が出たとは証明されていない」(復興庁)――本来健康影響の「証明」は数十年間・数世代観察したデータに基づいてのみ可能である。今から「証明されていない」と断定することははっきりデマである。
 7.「国連科学委員会の報告書では東電の福島原発事故で亡くなったり、重い症状となったり、髪の毛が抜けたりした人はおらず、今後のがんの増加も予想されず、また多数の甲状腺がんの発生を福島では考える必要はないと評価されている」(復興庁)――国連の権威を持ち出そうと嘘は嘘である。事故当時の吉田昌郎所長はがんにより「亡くなった」。「脱毛」は現実に多くの子どもに現れた。体験済みのことだ。福島における子どもの「甲状腺がん」の多発は疫学的に証明されている。
 8.「福島原発事故で空気中に放出された放射性物質の量はチェルノブイリの1/7。また、避難指示や出荷制限など事故後の速やかな対応によって、体の中に取り込まれた量もずっと少なかった」(復興庁)――嘘。放出量は国際基準INESによればほとんど変わらない。また、もし1/7としても、1/7の被害は当然想定される。1/7からは被害が「ゼロ」は出てこない。
 9.「福島県内の主要都市の放射線量は事故後7年で大幅に低下し、国内外の主要都市と変わらないくらいになった」(復興庁)――嘘。モニタリングポストの表示値は人為的に半分程度に操作されている可能性があるが、それでも福島県各都市の線量が今だに高いことは明らかである。また低下したとしても、過去に被曝した人体影響は消すことができない。

復興庁パンフに掲載された福島の空間線量




文部科学省による福島原発事故前の全国各地の空間線量(現在ネットから削除されている)


 10.「日本は世界で最も厳しいレベルの基準を設定して食品や飲料水の検査をしており、基準を超えた場合は売り場に出ないようになっている」(復興庁)――嘘。日本では主食のコメは100ベクレル/kgだがウクライナのパンは20ベクレル/kg。日本は飲料水が10ベクレル/kgだが、ウクライナは2ベクレル/kg。日本の基準は高すぎるのである。


  100〜200mSvの被曝は野菜不足程度ってホント?

 この比較にはトリックがある。比較するリスクの期間が5倍も違うのである。元となった国立がん研究センターの表では、野菜不足や塩分の取り過ぎは「10年間」継続した場合のリスクと明記されている。放射線は1回の被曝量による生涯期間「50年間」のがん発生・致死リスクである。




[元の表:生活習慣因子は10年間に対するリスクと下の注で明記されている]


 野菜不足のリスクを放射線被曝リスクと同じ50年に換算(5倍)した場合、そのリスクは最大で1Sv(=Gy)相当となり「致死量」に達する(表参照)。数ヵ月以内の10%未満致死量の下限値だ。喫煙や大量飲酒では、2ヵ月以内の半数致死量に達し、両方する人は2週間以内の全員致死量になってしまう。つまり、比較の枠組み自体、辻褄が合わない。反対に放射線リスクの恐るべき深刻さが示されているのだ。




  復興庁パンフの主張が実現したら何が起こるか?

 復興庁パンフの意味は、その意図するところが実現し、日本の生徒たちも大人たちも皆この復興庁パンフを信じ、放射線に被曝しても「安全安心」と考え、被曝を恐れなくなったとしたら、いったい何が起こるかを考えれば明らかだ。 
 この問題には重要な意味がある。復興庁パンフは、①大規模再稼働などにより起こることが想定されている「次の」原発重大事故に向けての準備であり、②放射能で汚染された除染残土や廃炉廃棄物の再利用を全国で進めるための宣伝であり、①アメリカと一体となった「使える核兵器」による核戦争に向けての準備だからだ。
 原子力規制委員会の更田豊志委員長は、一般住民の年間1mSv基準を、現行の空間線量に換算して毎時0.23?Svから、毎時1?Svに解釈改訂し、4倍に引き上げようとしている。年間被曝量で8.32mSvである。
 この線量なら日本の全人口約1億2600万人が被曝しても容認されるという主張だ。政府・放医研のリスク係数(1万人・Svあたり426〜1460件のがん死)によれば、およそ5万〜15万人の過剰な死者が1年間の被曝に対して生じる想定になる。生涯期間50年間では230万人〜770万人。つまり、日中・太平洋戦争での公式戦没者数240万人に匹敵するか大きく越える想定だ。



 これはがんだけであり、大きな過小評価だが、それでも、自国の住民の見えざる大量殺戮、全般的健康状態の悪化、人口の再生産の破壊という破滅的な結果を十分示唆している。

  避難とチェルノブイリ法日本版の制定へ

 国連科学委員会は、米ロ中英仏など核大国グループの下請組織であり、元来核実験の被害を過小評価するために設立された核開発・原発推進のための機関である。チェルノブイリ事故の際も「被害は全くない」と勧告し、当時のソ連政府に住民防護対策を取らないよてうに促し、被曝被害の拡大を促した。社会主義の崩壊を健康・人口面から促進した。いま、同じ工作を競争相手としての日本に対して行っている。チェルノブイリ事故の当事国はそれに気づき、住民運動の圧力の下、住民を防護するための「チェルノブイリ法」を制定した。事故から5年後だ。日本政府は、愚かにも国連科学委員会に追従し、住民の汚染地域への帰還や全国への被曝被害の拡散を意図的に推進している。避難とチェルノブイリ法日本版の制定以外に生き残る道はない。


注記:これは山田耕作氏との共著「ウソで塗り固めた復興庁パンフ『放射線のホント』」をベースとして、渡辺悦司が要約したものである。原論文について、ぜひ以下も参照されたい。
http://blog.torikaesu.net/?eid=74
http://nukecheck.namaste.jp/pdf/180524yamada&watanabe.pdf


 
 
 
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