2016年3月9日大津地裁、運転停止を命じる仮処分の決定について  山田耕作・渡辺悦司

2016年3月

2016年3月9日大津地裁、運転停止を命じる仮処分の決定について

2016年3月13日
山田耕作・渡辺悦司


〖ここからダウンロードできます〗
2016年3月9日大津地裁、運転停止を命じる仮処分の決定について(pdf,4ページ,152KB)

2016年3月9日、関西電力高浜原子力発電所3・4号機(福井県)について、大津地方裁判所は「福島第一原発事故を踏まえた事故対策や緊急時の対応方法に危惧すべき点があるのに、関西電力は十分に説明していない」として、運転の停止を命じる仮処分の決定を出しました。

この大津地裁決定について、山田耕作氏が感想を発信され、対して渡辺悦司氏が返信された内容を掲載いたします。本決定の画期的意義が整理されています。

仮処分決定内容は以下をご参照ください。
前半
http://www.nonukesshiga.jp/wp-content/uploads/e9782c2ea5fefaea7c02afd880dd3bfc.pdf
後半 
http://www.nonukesshiga.jp/wp-content/uploads/b6c5742c4f89061d95ceb8a0675877e2.pdf

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


2016年3月13日
3月9日の大津地裁決定についての私の感想
山田耕作

 今回の判決は営業運転中の原発が停止させられた点で貴重な判決であると思います。私は余り他の裁判に詳しくないのですが、今回の判決は表現は穏やかですが鋭く的をついた重要な判決であると思います。疑問を呈しただけという評価もありますがその疑問が容易に答えられない本質的な疑問で、原発の稼働にとって致命的な疑問であると思います。
 以下その理由を述べます。皆さんの検討の参考になれば幸いです。
判決は原発の歴史的発展、仕組みが要領よく説明された後、原告(債権者)と被告(債務者)に依る7つの争点に対する見解が記述されています。そののち裁判所の判断が各争点について示されています。
1. 争点1では福島事故を受けてどう改善したか、被告行政庁の判断に誤りがないことを債務者が示すべきであると主張しています。これはすでに原子力規制委員会で説明したことだから簡単にできるはずだといっています。「本件においても、債務者において、依拠した根拠資料等を明らかにすべきであり、その主張及び疎明が尽くされない場合には、電力会社の判断に不合理な点があることが推認される」といっています。これは債務者が原子炉安全に関する資料を持ち実際に運転しているからであるという。そして原子力規制委員会が設置変更許可を与えたという事実のみでは十分な検討をしたことにならないといっています。これは再稼動を認めた福井地裁の判決と異なるところです。
2. 争点2 過酷事故対策については福島原発事故の調査もいまだ十分でなく、事故の徹底解明がなされていない。このことに意を払わない債務者、規制委員会の新規制基準策定に向かう姿勢に非常に不安を覚えるといっています。そして津波対策、電源確保、使用済み燃料ピットなどの安全の説明が十分でないとしています。
3. 争点3、耐震性能については海底を含む徹底的な調査でないこと、断層の連動、断層の末端の決定の不確かさ、松田式の信頼性などを指摘し、裁判所には十分な資料が提出されていないといっている。特に私が注目するのは耐専スペクトルの不確かさや断層モデルの信頼性を批判し、700ガルを持って十分な基準地震動としてよいかわからないといっています。この点、耐震設計の応答スペクトルの計算は極めて難しい問題で信頼できる方法が存在しない。だからやり直せばよいという問題ではないと私は思います。現在の科学技術では信頼できる耐震設計は不可能で、日本のような地震地帯に原発を建設しないことが唯一の解決策だと思います。
 震源を特定しない地震についても「震源の位置も規模もわからない地震として全国共通に考慮すべき地震」の地震動について「そもそも予測計算が科学的知見として相当であるかはともかくとして」と鋭い洞察を見せていると思う。このような仮想的な地震に対して科学的に地震動の加速度最大値は求まるであろうか。
 例えば原子力安全基盤機構JNES(現在は原子力規制庁)は国内の地震観測記録を反映した独自の断層モデルによる地震動解析を行い,M6.5の横ずれ伏在断層で1,340ガルの地震動が起こることを明らかにしている.この結果によれば国内全ての原発の基準地震動Ssがこの値を超えて設計されるべきであるということになる。
4. 争点4 津波に対する安全性能
5. 争点5 テロ対策
6. 争点6 避難計画
 「国家主導での具体的可視的な避難計画が早急に策定されることが必要であり、この避難計画も視野に入れた幅広い規制基準が望まれるばかりか、それ以上に過酷事故を経た現時点においては、そのような基準を策定すべき信義則上の義務が国家に発生しているといってよいのではないだろうか」といっています。「債務者には、万一の事故発生時の責任はだれが負うのかを明瞭にするとともに、新規制基準を満たせば十分とするだけでなく、その外延を構成する避難計画を含んだ安全確保対策にも意を払う必要があり、その点に不合理な点がないかを相当な根拠、資料に基づき主張及び疎明する必要がある」という。

 このように「規制基準は満たしても安全とは言わない」という原子力規制委員会や「世界一厳しい基準で安全」という政府に対して当然の批判がなされ、だれが責任をとるのか明確にしろといっています。
 それにしても高浜原発は300ガルくらいの地震動に耐える設計で運転を開始し、長年運転され、現在は700ガルと関電も言っているわけですから、長年幸運にも無事で来られたものだと思ってしまいます。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


山田耕作氏の感想に対する渡辺悦司氏の返信

山田耕作様 皆さま
渡辺悦司より

差し止め判決についての「感想」、ありがとうございます。
同感ですし、議論のための、とてもよい「たたき台」になると思います。

もしも少し付け加えさせていただけるとしたら、法律的な面では、決定が法律的に見て非常に「手堅い」判断であって、原発の安全性の「立証責任」と、それにともなう「疎明(説明)を尽くす義務」とを、電力会社に負わせた点が重要だと思います。

このことは、テレビ朝日の「報道ステーション」のなかで、コメンテーターとして出演した憲法学者の木村草太氏も指摘していましたが、的を射ているのではないでしょうか。

つまり、決定は、
①伊方原発に関する最高裁判決において確定された判断――原発の安全性について、安全性に関する資料の多くを持っている行政側に、立証責任を負わせた――を電力会社に拡大し、住民側ではなく関電側に、安全性を証明する「立証責任」があると判断したこと。
②それに基づいて、当該原発の安全性に関して、裁判所が「十分に」納得できるような(したがって非専門家の住民や一般人が納得のいく)「資料を提出」し「説明を尽くす」義務を、再稼働する電力会社に課したこと。
③関電の説明が「尽くされていない」ことをもって「関電の判断に不合理な点がある」と判断したこと。
④原子力規制委員会が設置変更許可を与えたというだけでは、安全性に関し十分な「主張や証明があったとは言えない」と判断したこと。
――等の点で、画期的な意義があったと思います。

その結果として、
⑤この決定により、今後の裁判の展開がどうなるにせよ、法的に、あわせて政治的・社会的にも、今後の再稼働にとって仮処分裁判が高いハードルとなる状況が生みだされたこと。
⑥これらは、この裁判闘争を指導された井戸弁護士をはじめ弁護団の努力の成果であるとともに、全国の再稼働反対の広範な運動や世論のバックアップがあって初めて可能になったものであること。

というような内容を付け加えてもよいかなと感じます。

この点は、すでに皆さまにお知らせしましたように、日経社説のトーンの変化によく現れています(3月13日)。
財界紙ともいえる日経が、決定について、いろいろ「疑問」を呈しながらも、次のように書いていることに注目すべきです。

・「(大津地裁の決定のように)過去の判例に縛られない司法判断があってもよい」、
・「(決定には)関電や国が重く受け止めるべき点も多い」、
・「高浜4号機は2月末に再稼働したが、直後に緊急停止した。大津地裁が指摘したように関電は安全確保に厳しく向き合っているのか、心配だ」

これらの主張には、技術的なトラブルの深刻性という面からも、法律面からも、十分根拠があると考えるべきです。
支配層側の「動揺」と考えてよいのではないでしょうか。

皆さまの間で、議論が大いに巻き起こればよいかと思います。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 
 
 
※本ブログではコメントの
 受付はしておりません。
 

本サイト内検索

新着記事

記事分類

過去記事

リンク

profile

others

mobile

qrcode