日本人口減少問題と2011年以降の異常な死亡増加・出生減少 矢ヶ克馬

2019年11月



日本人口減少問題と2011年以降の異常な死亡増加・出生減少


2019年11月吉日

沖縄県 矢ヶ克馬





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日本人口減少問題と2011年以降の異常な死亡増加・出生減少(2019年11月)(pdf,8ページ,823KB)


市民の皆さま

2011年以降異常な健康被害が発生しています。
どうか事態を注視し命と人権を守るよう頑張りましょう。

 沖縄のシンボル的存在である首里城が炎上し、大変なショックを受けております。一刻も早い復元を願います。
 人の作ったものは復元もできます。しかし、辺野古の土砂埋め立てにより失われた生命は復元できません。沖縄のまた、全日本の民意実現のために力を合わせましょう。
 
 東日本大震災・東電原発過酷事故以来8年半を経過するところとなります。

 日本の人口急減問題の分析を致しました。安倍首相は「健康被害は無い」と宣言しましたがそれは嘘です。2011年以降の人口急減の4分の1は死亡者の異常増加と出生数の異常減少で、残りの4分の3は少子高齢化によるものです。異常の傾向とチェルノブイリの例を見ると死亡者の異常増加等は今後さらに増加する見込みです。死亡者の異常増加は汚染された食材による内部被曝とみられます。ストレスを抱えた人、弱い人から先に犠牲になります。

 毎日の食事に気を付けなければなりません。

 日本住民の生存を掛けた重大な結果を含みます。お目をお通しになっていただければ幸いです。
 論説「日本人口減少問題と2011年以降の異常な死亡増加・出生減少」(用いたデータは全て厚労省「人口動態調査」等の公的データのみ)をお届け致します。
 少子高齢化の傾向に加えて2011年以降の異常な人口減少(死亡の異常増加と出生の異常減少)が紛れもなく存在します。死亡者数だけをカウントしても、2011年から2017年までの7年間で27万6千人程の死亡者数の異常増加が有ります。出生数の異常減少も同程度です。
 原因は直接的に放射線被曝と断定はできませんが、諸事を勘案して強い蓋然性をもって放射線被曝、特に食べて被曝する「内部被曝」の影響であると推察されます。
 私たちは、子供たち、隣人たち、自らの命を守ることを最も民主主義の基本としています。是非この日本の食品汚染の現状を、健康被害の現状を率直に見て、きちんと防護しましょう。
汚染地内外で連帯の手を差し伸べ合い、自らの命と人権を守るために努力しましょう。


つなごう命の会    矢ヶ克馬
電話 080−3187−5551
e-mail yagasaki888@gmail.com




日本人口減少問題と2011年以降の異常な死亡増加・出生減少

簡略版(関連する図表などを省いております)

矢ヶ克馬(つなごう命の会)

【1】日本人口激減について、厚労省データから以下のような結論を得ました。
総人口激減の要因は自然増減(出生数から死亡数を引いたもの)の効果と2011年以降は異常な死亡増加・異常な出生減少に、社会増減(外国人の日本在留と日本人の海外在留の差)が加わったものですが、これらを定量的に把握しました。
人口が激減する2011年以降は、自然増減のうちほぼ4分の3が少子高齢化によるもの、残りの4分の1が異常な死亡増加+異常な出生減少によります。
2011年〜2017年の7年間で異常な死亡増加の総増加数は約27.6万人、異常な出生減少の総数は27.1万人です。これらは原爆の放射能死亡者の100倍規模のものです。
都道府県別死亡の異常増加は福島県が最高であり異常増加は全都道府県に及んでいます。
多種の疾病の異常死亡増加や患者数の増加などから、非常に強い蓋然性をもって、放射能被曝、特に内部被曝が異常な死亡増加の原因であると推察されます。

その要点をご紹介します。
(1)日本の総人口の年次推移を自然増減と社会増減に分解する


図1

図1は 2003年以降の日本の人口(赤)、自然増減を積算したもの(黒)、および社会増減数(緑)です。2017年で数値を合わせています。自然増減の積算値(黒)と社会増減数(緑)を合わせたものが総人口(赤)です。

(2)人口が2010年で角張って増加から減少に転じるのは:
2010年までは社会増(外国からの居住や国外への転出:図1では緑のプロット:右スケール)が増加し、その増加が自然増減(出生数から死亡数を差し引いた値)の減少を上回り、人口は増加しています。
社会増が2010年以前は前年に比較してかなりの増加だったのが、2011年から緩やかな増加に変わりました。東電事故の放射能放出により、諸外国で「帰国せよ」と通達が出されたり、あるいは新規来日を控えるような勧告が出されました。日本人の海外移住が増えたこともあるでしょう。このことを反映して「年あたりの増加」が2011年に急落しました。
2011年以降は自然増減の減少の値が大きくなり、上記とあいまって自然増減が主たる総人口減少の原因となりました。それに異常な死亡数増加と出生数減少が加わり急減しました。

(3)自然増減の解析
①死亡数の増加


図2

図2は日本の死亡数の年次推移です。30年以上の長期にわたって、ほぼ直線近似できる傾向で推移してきました。2011年以降、系統的な異常増加が直視的に認められます。

2011年以降の異常増加を定量するために、最終年度2017年から20年間さかのぼった1998年からを考察基本期間としました。1998年〜2010年までの13年間を基盤的直線と見做して2011年〜2017年までの異常増加を評価しました。この方法で死亡者の異常増加を計算すると27.6万人と計算されました。この増加は統計的に有意であると判断されました(ヒバクと健康特別号、被曝と健康プロジェクト、2019年7月1日)。
この値は広島長崎原爆の放射能で亡くなった方の数の100倍規模であり、なお増加しつつあります。
この方法の妥当性を示すために、検討区間を10年間平行移動して同じ計算を2001年〜2007年までの直線からのずれを計算すると1.4万人となりました。2011年〜2017年の異常は27.6万人であったのに対して約20分の1の値です。1988年〜2007年の区間はほぼ直線であるがわずかに上向きとなっていることを示しています。この値から、1988年からの30年間は直線よりわずかに増加する傾向を示すが、2011年以降の異常な増加を直線で近似して定量する方法は意味のある試算であることが分かります。なお、少子高齢化の年齢ピラミッドや年齢構成その他のデータから、少子高齢化そのものが、ある年を境に突然の変化を示すような振る舞いをする要因は見出されておりません。
2011年以降異常死亡増加は合計約27.6万人に及ぶものです。原爆死没者総計(広島14万人、長崎7万4千人)よりはるかに多く放射能による被害者数の100倍にも及ぶ規模です。
なお、長期にわたる少子高齢化の傾向は基盤となる直線的増加で代表されるものです。
結論は2011年以降の異常死亡数が少子高齢化傾向に加算されていることが分かりました。

②出生数の減少


図3

図3は1988年以降の出生数と特殊出生率です。特殊出生率は2005年に鋭く折れ曲がる極小値を示し、出生数も同じ年に異常極小が見えます。

出生数は迷信による出産控えや社会条件・政策等を反映しやすく、死亡数に比べれば短期間で変動し長期間での直線近似は当てはまりません。2005年に特殊出生率が最低になり、それ以前のモードとそれ以後のモードが異なることを示しています。したがって、2011年以降の異常を判定するために、2006年〜2010の平均直線化が、短期間ではありますが、意味あるものとなっています。
チェルノブイリ原発事故の1986年を境界として周辺国では、それ以後の出生率が明瞭に著しく減少しています(ウクライナとベラルーシの人口変動:http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/genpatsu/ukraine1.html)。日本では少子高齢化を反映して出生数も2010年以前から激しく減少していますが、2011年を境界としてさらに鋭く落ち込んでいることが図4で見て取れます。

図4は図3の出生数グラフの当該部分を拡大して示すもので、2003年以降の出生数の年次推移です。2005年の異常点より後の2006〜2010年を直線近似の基盤として、この直線近似を少子高齢化の傾向を示すものとして扱いました。この分析により2011年から2017年までの異常な出生数減少(図4では黒い直線からの減少)が総計27.1万人に及ぶ数値が得られました。死亡者の異常な増加数の総計と同程度の落ち込みです。
2011年〜2017年の出生数も直線近似していますが、2011年以降は異常に減少していることが分かります。


図4


【2】 少子高齢化(直線近似)と異常増減


図5

図5は、死亡数の異常増加(青)と出生数の異常減少(赤)とそれを合わせた全異常数(黒)をプロットしたものです。異常死亡者数は図2の直線から上の部分、異常出生減は図4の直線から下の部分を年度ごとに示しています。出生の異常な減少数の値は年々増加傾向を示し、死亡異常数は2016年まで減少しますが、2017年は増加する傾向を示し、不気味です。

図6は自然増減の年次推移(黒プロット)と少子高齢化傾向(紫直線)、異常減少(死亡異常増及び出生異常減)(赤いプロット)(図5の全異常))を示しています。同時に右軸には全自然増減数に対する異常減少の割合を示す(茶色:右軸)。実に、少子高齢化直線からずれる異常数の全変化に対する割合は平均25.0%です(2011年〜2017年に対してそれぞれ、36.5、29.1、23.6、22.3、17.0、20.0、26.4(%))。少子高齢化分と異常減少分はほぼ3:1です。
自然増減の減少の中で4分の3が少子高齢化による減少、4分の1が異常な死亡増加と出生減少によるものと算定できます。自然増減の実に4分の1が異常減少なのです。


図6


【3】異常な死亡増・出生減は放射能被曝によると推定される。
2011年を境として諸事に異常な激増等が見られました。それを列挙します。なお、これらの急増は少子高齢化現象と直接の関わりを持たないものです。
(1)2011年以降の異常な増加が特に多く見られた事象は以下のようなことです。
①死亡(全死亡者、周産期死亡、乳児死亡、幼児死亡)
②死因別死亡(老衰、アルツハイマー、認知症、精神・神経系疾患、急性心筋梗塞、等々)
③死産(自然死産、人口死産)
④奇形(先天性心奇形、先天性停留精巣)
⑤特別支援学級児童生徒数、学生の精神疾患、精神疾患患者数、難病総数 等々
⑥運転中の運転中止、事故(数年遅れで激増)
(2)現れ方の特徴



図7

図7は図2と同じ方法で求めた各県別死亡率の異常増加です。特徴は死亡率の異常な増加は全国の都道府県で確認されました。また、それは福島県が一番大きいものでした。
①都道府県別死亡の異常増加の割合は福島県が最大である。
②異常増加は全都道府県に及ぶ。


諸事にはそれぞれの特有な要因もあると思います。異常なデータから2011年を境として急変する共通の要因を探ると「放射能被曝」が最終的に残ります。

【4】放射能犠牲の現実は厳しい。
住民はもちろんオリンピックの来客に対する危険が憂慮されます

①東京オリンピックが招致決定した時の記者会見で、安倍首相は汚染水問題を質問されて、「まず、健康に対する問題は、今までも、現在も、これからも全くないということははっきりと申し上げておきたいと思います。」と語っています。全官庁あげて放射線被曝の問題を「風評払拭リスクコミュニケーション強化戦略」と捉え、「放射線のホント」の「洗脳」ともいうべき科学的事実に反するキャンペーンを厚く行い、「知ってもらう、食べてもらう、来てもらう」の大運動をしています。事実は異なります。犠牲を産んだ食べ物が現存します。
このレポートで報告しているような多大な犠牲を無視して、世界市民に対し誤まった認識を吹聴し、日本市民にますますの犠牲を大とする施策を迫っているのではないかと危惧します。
②東電福島事故に際して、特に日本は、チェルノブイリでは移住が求められた5mSv /年間 以上〜20mSv/年間までの高汚染地域に100万人規模の食糧生産者が生活し生産しています。
居住を強制し、生産をしなければ何の保証も得られない行政が強行されました。
チェルノブイリでは生産が禁止された5mSv/年 以上の汚染地で、日本では生産が継続され汚染された農作物が全国に拡散され、内部被曝の危害をもたらしました。
③原子力緊急事態宣言が出され、放射能防護の法律(年間1mSv等)が簡単に破壊されました。強く推進された政策が「食べて応援」です。放射能の危険を語らせない「風評被害」も大きな言論統制となりました。そして「健康被害は一切ありません」の趣旨の発言は高汚染地帯に居住する人々の麻薬になりました。破壊された原発から放射能は漏れ続けます。実際はトリチウム水も含めて「アンコントローラブル」と言い換えねばなりません。
復興は悲願です。しかし、日本ではチェルノブイリ条約が制定された事故後5年目で早くも避難者への住宅提供が廃止され、「帰還」の強制と無謀な「復興」が企てられました。その上に巨費を費やしての「東京オリンピック」です。危険な被曝のおもてなしはいけません。
④国際原子力機関(IAEA)が「チェルノブイリ事故後10年」で出した結論は、「市民の被曝を軽減する古典的防護は現実問題を解決できない。永続的な汚染地に住み続けることを前提にそれを支える心理学的対応を含めて新しい体制を求めなければならない」と、事故の際の方針を「防護」から「汚染地帯に住み続けさせる」に変えました。放射線防護概念を逆転させたのです。国際放射線防護委員会(ICRP)が2007年勧告でそれを具体化しました。その防護せずに済み続けさせるという逆転概念の施策が日本に適用されました。
「汚染地に住み続けさせる」政策で悲劇が数層倍化しました。二次被曝の拡大再生産です。
⑤高汚染地域に留まる者の被曝だけでなく、全国住民に食べて被曝すなわち内部被曝をさせてしまうシステムが猛威を振るったのです。さらに、居住する場所を「除染」する際に出た「除染土壌」も8000ベクレル/圓泙乃されて全国の国土を汚染する仕組みが作られました。

私たちは、子供たち、隣人たち、自らの命を守ることを最も民主主義の基本としています。是非この日本の食品汚染の現状を、健康被害の現状を率直に見て、きちんと防護しましょう。
汚染地内外で連帯の手を差し伸べ合い、自らの命と人権を守るために努力しましょう。

原発事故放射能によると推察される死亡率その他   (つなごう命の会調査)
日本の2011年以降の死亡率増加は非常に不気味です。安倍首相が「健康被害は皆無です」と言って招致した東京オリンピックが来年に迫りましたが、健康被害はお年寄りと子供を中心として深刻です。7年間で異常死亡が28万人!!!福島だけの問題ではなく全国を襲っています。沖縄も例外ではありません。ご覧ください。


図1 放射能は子供たちの精神機能を襲います。
2011年以降知的障害や自閉症・情緒障害が急増しています。



図2 放射線被曝は病人を増やします。
難病患者数が2011年以降飛躍的に増加しています。



図3 魚屋で買ったイワシ
全部の背骨が曲がっていた。



図4 お年寄りの老衰による死亡増。
2011年以降の沖縄の急増ぶりは心が痛みます。
食べて応援のとばっちり。



図5 アルツハイマーによる死亡率。
2011年以後急増。全国で認められる。



図6 沖縄における脳・神経系死亡率。
脳・心臓は新陳代謝が乏しい臓器。分子切断が蓄積。

放射線防護哲学の逆転に反対する ―「防護する」から「高汚染地に住み続けさせる」核推進体制― 矢ヶ克馬

2019年11月



放射線防護哲学の逆転に反対する

―「防護する」から「高汚染地に住み続けさせる」核推進体制―

(ICRP PUBLICATION 1XXに対するパブリックコメント)

沖縄県 矢ヶ克馬



 
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放射線防護哲学の逆転に反対する―「防護する」から「高汚染地に住み続けさせる」核推進体制―(pdf,6ページ,230KB)

 
ICRPに対する提案
ICRP2007年勧告の体制は、世界の放射線防護の哲学を、被曝を防護する体系から被曝を強制する体系へ変化させるものである。すなわち、被曝防護の基本を「住民の被曝軽減」から「長く続く放射能汚染地域に住民を住み続けさせる」ことに変換させるものである。
今回のDraft Documentもまた、「防護の最適化の目標は年 1mSv 程度 のレベルに なるように徐々に低減することである。」としているが1mSv/年以上の地域に期限も明確にせず住み続けさせることを基準化しようとしている。しかも「the order of 1 mSv per year」としており、参考レベルという線量概念(④参照)の基に1mSv台(1〜<10mSv/y)で住み続けさせようというものである。
ICRP2007年勧告体制とそれを継承する「汚染地域に住民を住み続けさせる」ICRP体系を全面的に撤回すべきである。それを補強する今回の新勧告は全面的に改めるべきである。
ICRP防護3原則のうち、「正当化」、「最適化」は、人命より産業利益を優先する「功利主義」であり、民主主義に反する。民主主義の原則を維持するために廃止すべきである。
③「線量限度の適用」は2007年勧告体制は、計画被曝状況だけに適用し、緊急被曝状況及び現存被曝状況には適用しないことになっている。これを廃止し従前どおり全ての被曝状況に適用すべきである。すなわち従来通り、年間1mSv以上の人工放射能からの被曝を避けるべき体制を維持すべきである。
線量基準を「線量限度」に対する基準に1本化し、「参考レベル(Reference Level)」を廃止すべきである。「参考レベル(Reference Level)」は住民を高汚染地域に住み続けさせるための「防護」ではなく「被曝強制」のための欺瞞的線量体系である。さらに物理的に環境放射能を過小評価することが判明している測定具である「個人線量計」を基準測定具として扱うことは避けるべきである。科学の名において住民の被曝過小評価体系を作るべきではない。
福島原発事故の後たった7年間で28万人近くの死亡者の異常増加が有り、小児甲状腺がんの異常増加をはじめとする全面的な健康被害が事実としてある。ICRPはそれらの事実を認め、人類を被曝から守る哲学に復帰すべきであり、住民を被曝から守る根本的使命に復帰すべきである。もしそれができないならば、「国際放射線防護委員会」は即刻解散すべきである。

(論述)
 ICRP PUBLICATION 1XX の冒頭(1.1.背景)では本勧告がICRP2007年勧告に基づいていることと、「事故後の10年間に得られた教訓」(「チェルノブイリ後10年」1996年、ウィーン)とともにこれらの問題のいくつかに対処する、と述べている。

まず、私は本ICRPdraft の基礎となったICRP「事故後10年」とICRP2007年勧告の防護の哲学の変更に反対します。

(1)被曝「防護から強制」への防護哲学の天地逆転に反対する
「チェルノブイリ後10年」の特徴はその総まとめ(CONCLUSIONS AND RECOMMENDATIONS OF THE TECHNICAL SYMPOSIUM)の項で述べられている次の言葉で代表される。
「通常、住民は毎日の放射線リスクを受け入れる用意がある」。
また、「介入という範疇で規制される古典的放射線防護は複雑な社会的問題を解決するためには不十分である。住民が永久に汚染された地域に住み続けることを前提に心理学的な状況にも責任を持つために、新しい枠組みを作り上げねばならない」(CONSEQUENCES OF THE ACCIDENT FOR THE FIELD OF RADIATION PROTECTION)と述べている。
このセンテンスは、住民の被曝量を低減することを目標にしている「古典的な介入」すなわち被曝軽減措置を防護基本から外し、「住民を長く続く放射能汚染地域に住み続けさせる」ことを措置の基本とすることを宣言したものである。被曝防護から被曝強制へ防護哲学の転換宣言である。核産業の居直り宣言と捉えるべきである。
この「防護から強制へ」の具体化方針はICRP2007年になされた。被曝状況の概念を拡大することにより「被曝防護から被曝強制へ」の具体方針を展開した。それまで「計画被曝状況」だけであったのに加え、「緊急被曝状況」、「現存被曝状況」が加わった。人類は原発放射能事故と共存せよ、というものである。
被爆3原則の3番目:「線量限度の適用」の原則は、犒弉菷鑁状況の結果として確実に受けると予想される線量に対してのみ適用される瓩箸掘⊃靴燭防佞渦辰┐2つの被曝状況に対しては適用しないことを宣言したのだ。
今迄線量限度に対して用いられてきた閾値論、限度値を1%程度凌駕すると閾値を超えたと判断する概念を、「計画被曝状況」だけに適用し、「長期にわたって汚染される地域に住み続けさせる」概念で表される疑似非「規制」線量を「参考レベル(Reference Level)」と称して別体系とした。
「参考レベル(Reference Level)」は対数正規分布的に展開する市民の被曝線量分布の中央値に近い値を設定して、住民を高線量地域に住み続けさせながら、線量の軽減を計るという戦略として新線量概念をさりげなく提出している(ICRP2007年勧告、p.76, 図4、ICRP draft 図2.3)。
「緊急被曝状況」および「現存被曝状況」では住民は線量を区切って防護するという古典的防護はもはや適用されないのである。

放射線防護の基本概念の逆転、すなわち「放射線防護を止めて汚染地に定住させる」基準化に反対致します。
住民を放射線被曝から防護する、という古典的介入を排除する防護の基本を 除外した「緊急被曝状況」、「現存被曝状況」の設定を廃止し、元の年間1mSv以上の人工放射線から防護する原則を貫くことを強くコメントいたします。
地域に放射線を拡散することも住民に被曝させることも全て原発産業の責任でなされたことです。住民を原則的に保護することができないのならば、原発産業に廃業していただくしか他に方法はありません。
ICRPは利益相反を改めて、「放射線防護」を文字どおり民衆を守ることとすべきです。民衆の防護を基本に置くならば、原発産業の廃止を主張すべきです。


(2)従来からか掲げてきたICRP防護の3原則の第一原則「正当化」と第2原則「最適化」は功利主義であるが故に廃止すべきである。第3原則は全ての場合に適用するよう2007年以前の体系に復帰すべきである。
①行為の正当化
ICRP2007勧告「用語解説」によると以下のとおりである。

(1)放射線に関係する計画された活動が、総合的に見て有益であるかどうか、すなわち、その活動の導入又は継続が、活動の結果生じる害(放射線による損害を含む)よりも大きな便益を個人と社会にもたらすかどうか;
 あるいは(2)緊急時被ばく状況又は現存被ばく状況において提案されている救済措置が総合的に見て有益でありそうかどうか、すなわち、その救済措置の導入や継続によって個人及び社会にもたらさせる便益が、その費用及びその措置に起因する何らかの害又は損傷を上回るかどうかを決定するプロセス。」

 人が放射線に被曝する行為は、それにより、個人あるいは社会全体に利益がもたらされる場合でないと行うことはできないとするものである。行為の正当を判断するには、被曝させる行為が健康被害(死亡も含む)などの害に比べて利益(公益)が大きいか、また経済的に適性であるかなどについて検討される。

この表現の現実の意味は、害すなわち発がんによる死亡などが生じることを認知しながら、「害に比べて公益が大きい」あるいは「経済的に適正である」等と称して、一産業に過ぎない原発産業等の営業行為による経済的利益を優先することである。原発産業の営業利益をその行為による人の死亡等「人格権の基本」を対等物として天秤にかけるという、哲学上の問題を量的比較に貶めて、論じるものである。
 これが医療行為などに適用される場合は、医療的メリットと被曝のリスクは同一の個人に生じ、被曝のリスクと医療のメリットのどちらを選択するかは個人の権利に属する。この場合モラルとして常識化されている原則は、被曝を与える場合は必ずその個人の承諾を得なければならないことである。
 受益者とリスク者が同一の場合はこの「正当化」の原則は未だ納得が得られる。
 しかしいったん原発という経済利益と結合した営業行為についてこれを当てはめると途端に人命より営業利益を重視する「功利主義」そのものに豹変する。誰が発電という「公益」を受けるのか、だれが被曝という「リスク」を受けるのかたちまち具体性が無くなり、被曝を受ける住民の誰一人として「本人の承諾」を与えたためしは無い。「発電による放射能放出で、場合によっては命を失うリスクが有りますが、あなたはその放射能被曝を承諾しますか?」と問われて「はい、そのリスクを受け入れます」と回答した住民は皆無である。東電福島原発事故は都民のために電気を供給し犠牲は集中して福島県民なのである(被害の実態は全日本住民)。
 結果として民主主義の最重要な基盤である命が軽視され、その被害が隠ぺいされ、産業の営業利益を優先する事態が現実となる。
 人格権の背骨である命と営業利益とを同じ天秤の両腕にかけ比較することこそ、民主主義の破壊原理である。
 「個の尊厳」として位置づけられる人格権の否定、基本的人権を否定する暴論である。民主主義が基本となる近代的社会において民主主義の基本理念を真っ向から否定する考え方であり、民主主義社会としては受け入れてはならない倫理違反である。ICRPは功利主義哲学を廃止すべきである。
 ましてや、事故を起こすこと自体を「正当化」することは金輪際許し難い。何百万人もの命を奪い、健康を脅かし、故郷を奪うそのもとになった原発産業を「正当化」して「再稼働」を図ることなど、民主主義社会ではあってはならないことである。
 正当化は受益者とリスク者が一致し本人の了解が得られる場場合にのみ当てはめ、それが明確でないあらゆる場合には事業を許さないことにすべきです。

②防護の最適化

同じくICRP2007勧告「用語解説」によると以下のとおりである。

いかなるレベルの防護と安全が、被ばく及び潜在被ばくの確率と大きさを、経済的・社会的要因を考慮の上、合理的に達成可能な限り低くできるかを決めるプロセス。


放射線防護においては、集団の被曝線量を経済的及び社会的な要因を考慮して、合理的に達成可能な限り低く(ALARA:As Low As Reasonably Achievable)保つようにすることをいう。「最大限住民を保護するために力を尽くせ」というのではなく、国の予算や企業の営業活動に支障が来ない範囲で無理しないで防護したらよい。というものである。

 これは企業や国家の政治的経済的都合を考えて、その都合のつく範囲で人々の防護を考えるべし、というものである。例えば、東電の爆発があった直後政府が防護量を、今まで年間1mSvだった公衆の被ばく限度を20倍に引き上げた。これはICRPの勧告に従って政府が従前のプロセスを一切無視し、学問的検討など何もせずに決めたものである。法律的に「防護」という以上、20倍まで被曝許容限度を上げることなど民主主義国家にとっては許されるものではない。極めて乱暴な横暴な方法である。事故により日本在住者の放射線防護力が20倍になるはずがない以上住民防護である法律を変更するのは住民切り捨てそのものである。この国家による暴力行為がICRP2007年勧告により許されたのである。ICRPの罪は大きい。
 ICRPの功利主義は民主主義社会では受け入れるべきではない。ICRPは防護第一原則「正当化」を廃止し、民衆を防護する基本に戻るべきである。
 
 ICRPはAs Low As Reasonably Achievable ではなく、発足当初掲げた As Low As Possible に変更すべきです。

③線量限度
同じくICRP2007勧告「用語解説」によると以下のとおりである。

「計画被ばく状況から個人が受ける、超えてはならない実効線量又は等価線量の値。

 放射線被ばくの制限値としての個人に対する線量の限度で、ICRPの線量制限体系の一つの要件である。線量限度は、確定的影響に対する線量に対してはしきい値以下で、癌などの確率的影響に対しては、しきい値がなく、そのリスクが線量に比例するという仮定の下に、容認可能な上限値として設定されている。線量限度には、自然放射線と医療による被ばくは含まない。実効線量と等価線量の限度が、職業人と一般公衆の当初は線量当量限度と表記されていたが、2013年に国際放射線防護委員会(ICRP Pub.60)勧告の取り入れにより、「線量限度」に改正された。組織線量当量も同様に「等価線量」に改正された。
 福一爆発時に設定された年間20mSv等の限度引き上げは典型的に住民の健康切り捨てである。
 ICRP2007年勧告では、線量限度は「計画被曝状況」のみに適用され、「緊急被曝状況」および「残存被曝状況」には適用されないことになっている。この線量限度の適用の制限化は「永久(長期的)に汚染された汚染地域に住み続けさせる」ための新体制に入るものであり、「放射線防護」哲学に根本的に反する。断固として反対である。ICRPはあくまで住民の被曝を直接軽減すべき基準に復帰すべきである。
 したがって、参考レベルは使うべきでない。参考レベルは、長期に続く汚染地に住民を住み続けさせるために導入された「住民の被曝線量を制限させない線量の概念」である。防護学としては使うべきでない。
 ICRPはあくまで「超えてはならない」線量の概念により住民を保護すべきである。
 特に福島原発事故後の死亡者の異常増加は2017年までの統計で28万人になんなんとする(矢ヶ克馬;「福島原発事故後に猛威を振るう『知られざる核戦争』」、ヒバクと健康特別号、2019年7月1日)。 数十万人の故郷を奪い、広く健康不良を蔓延し命を奪う原発事故を、「原発産業はそのまま継続させ」、「社会は被曝被害を容認せよ」というICRPの新体系は人道的に許されるべきものではない。民主主義を破壊する哲学、実践指針として即刻廃止すべきである。

(3)個人線量計は線量測定の基準として用いるべきではない。個人線量計はテクニカルな被曝量測定器具である。平行な放射線が前方から襲来する場合についてのみ測定値が相当であり、周囲から全方向的に襲来する環境放射線を測定するには過小評価することが明確に判明している。ICRPはこのような目的限定で使用できる個人線量計を空間線量の代用として用いようとすることは、見かけ上の吸収線量の切り下げ(個人線量計の指示値)を事実上の被曝線量として取り扱おうとするもので、実施すべきではない。上記したが、参考レベル(Reference Level)は住民の人格権を保護する立場からの保護基準としては受けれるべき線量概念ではなく、使用すべきではない。


「放射能汚染水の危険と大阪湾等への放出反対」 渡辺悦司

2019年10月



「放射能汚染水の危険と大阪湾等への放出反対」

2019年10月14日
渡辺悦司




 
〖ここからダウンロードできます〗
放射能汚染水の危険と大阪湾等への放出反対(pdf,89ページ,1847KB)

2019年10月14日に「Go West Come West」が開催した「放射能汚染水の危険と大阪湾等への放出反対」学習会のプレゼンテーションスライドです。
上記からダウンロードしてごらんください。

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ICRPの改定案に対する 共同パブコメの報告 山田耕作、高橋博子

2019年11月

ICRPの改定案に対する 共同パブコメの報告

山田耕作、高橋博子


〖ここからダウンロードできます〗
ICRPの改定案に対する 共同パブコメの報告(pdf,18ページ,446KB)


最終的なハブコメの投稿を行いました。
ICRPの以下のページをご覧ください。
 http://www.icrp.org/consultation.asp?id=D57C344D-A250-49AE-957A-AA7EFB6BA164

投稿者  Kosaku Yamada,
Organisation: Citizen and Scientists Demanding Standards that Protect People from Radiation Exposure (Add.Support Members 賛同者追加)
 をご覧ください。

さらに添付のPDFにも英文、日本文、賛同者リストが記載されています。
山田のパソコンでは日本語が文字化けです。PDFは全て読めます。
高橋のパソコン(マック)やスマートフォンでは全て読むことができます。
最終的に賛同者個人152人、団体19となりました。

御協力有り難うございました。

 山田耕作、高橋博子


[English Comment]
Publications 109 and 111
We demand standards that protect people from radiation exposure!

Public Comment on the draft update of ICRP Publications 109 and 111
We demand standards that protect people from radiation exposure!

Citizen and Scientists Demanding Standards that Protect People from
Radiation Exposure

In this public comment, we raise two principal questions about the production of this revision of ICRP Publications 109 and 111. First of all, the "public" in this instance refers to a very limited set of people. Only the briefest Japanese translations of the preliminary section of the document were provided, making it difficult for those who do not understand English to participate in the commenting process. Thus, it cannot be said that the ICRP is genuinely engaged in gathering "public comments" for this draft. The very structure of this process is discriminatory.

Secondly, the ICRP members involved in producing this Draft are the same as those implement Japanese Government policy as members of the Radiation Council of the Japanese Government. The people who make standards should not be the same as those who implement them. The parties charged with setting ICRP standards should do so by examining a range of studies and considering various viewpoints. Those parties responsible for setting the standards of the Japanese Government should also base themselves on various studies and viewpoints. If these parties are in fact the same, however, there is conflict of interest, and we can only conclude that the "consultation" was launched with the conclusion foregone.

Both the ICRP and the Japanese Government ignore the recommendations of the IPPNW
( https://peaceandhealthblog.com/2013/06/05/fukushima-disaster/
 https://peaceandhealthblog.com/2019/08/26/radiation-exposure/ )
and the "Report of the Special Rapporteur on the right of everyone to the enjoyment of the highest attainable standard of physical and mental health," which was submitted to United Nation Human Right Council by Special Rapporteur Anand Grover.
(https://www.ohchr.org/Documents/HRBodies/HRCouncil/RegularSession/Session23/A-HRC-23-41-Add3_en.pdf

(1) Problems presented by the ICRP 2007 Recommendations
The current standard applied by the Japanese Government in determining whether residents can return to contaminated areas is 20mSv per year, based on the recommendation of ICRP 2007. In March 2011, however, this ICRP 2007 recommendation had not yet been adopted as Japanese law. The standard of 20mSv was slipped in during the chaotic conditions following the Fukushima Nuclear Power Plant Disaster. We believe that the ICRP 2007 recommendations were based on the experience of the Chernobyl Nuclear Disaster with the intent to reduce the number of refugees and accordingly, to limit the burden of compensation payment on the part of the Japanese Government and operator Tokyo Electric Power Company (TEPCO).

The Basic Policy Committee of the Radiation Council of the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology held 20 meetings between March 13, 2009 and January 12, 2011 in order to discuss official revision of Japanese law according to the recommendation(s)? of ICRP 2007. TEPCO itself consistently had representation on this committee. In other words, parties dedicated to promoting nuclear power were part of deliberations to set standards for radiological protection. We believe this entails conflict of interest.

In its second interim report, this committee proposed the following on "reference levels for public radiological exposure during an emergency":


(Proposal of the Basic Policy Committee of the Radiation Council)
With regard to reference levels for the public in an emergency, we deem that the dose proposed by the ICRP (20-100mSv) is an appropriate index for formulating comprehensive strategy as to whether emergency protection measures need to be adopted or not, in optimizing protection, and determining the need for further protection measures. Accordingly, Japan should consider this index in establishing plans for protection activity. Standards pertaining to particular protection measures proposed to date in our country (sheltering in place, evacuation, the administration of potassium iodide) can continue to be deemed applicable in making initial determinations as to whether emergency protection measures in emergency should be taken or not.


We can see from the above that even before the Fukushima Nuclear Disaster, the Basic Policy Committee of the Radiation Council had made concrete proposals about the application of public reference levels provided by ICRP 2007. Even though the recommendations of ICRP 2007 were not reflected in Japanese laws and regulations at the time, this reference level was applied immediately after the TEPCO Fukushima Nuclear Power Plant Disaster.

The introduction of the 20mSv per year standard prompted strong objections. On April 29, 2011, a special advisor to the cabinet who was a professor of Tokyo University and a member of the Basic Policy Committee of the Radiation Council stated, "The application of this standard to infants, young children, and elementary school students is something I find difficult to accept not only from an academic point of view but from the point of view of my own humanity. I am resigning my post as special advisor to the cabinet." This demonstrates how inappropriate the application of 20mSv was felt to be. And, to begin with, the introduction of ICRP 2007 was a violation of Japanese law.

(2)Historical problems presented by the ICRP
According to the official website, the ICRP is "An independent, international organisation that advances for the public benefit the science of radiological protection, in particular by providing recommendations and guidance on all aspects of protection against ionizing radiation." It is, moreover, "A charity (not-for-profit organisation) registered with the Charity Commission of England and Wales (registration number 1166304)." Can the ICRP really be construed as a charity organization intended to advance the public benefit?

The ICRP started as IXPRC (International X-Ray and Radium Protection Committee), established in 1928. In 1950, the first meeting of the ICRP took place. L. S. Taylor, chairperson of the NCRP (National Council on Radiation Protection and Measurements of the United States) led the effort to get the organization off the ground. The NCRP was established in 1946. Many members, such as Stafford Warren, were scientists who had participated in the Manhattan Project that developed the Hiroshima and Nagasaki atomic bombs as specialists on the human impact of radiation exposure. Once the Atomic Energy Commission (AEC) was established as a successor to the Manhattan Project, its Biological Medical Division was headed by Shields Warren. Warren became a member of Sub-Committee I member of the ICRP in 1950. We consider this background, we can see the influence of U.S. nuclear strategy in the establishment of the ICRP.
This is the kind of organization whose standards, deemed international, are being applied to the children of Fukushima Prefecture. The ICRP 1990 recommendation of 1mSv per year for the general public is reflected in Japanese law, but after the Fukushima disaster, 20 times this level has been declared as applicable not only during "emergency periods" but permanently, to unborn babies, infants, and children.

(3)Problems with the Draft Update of ICRP 2007
This draft looks like a slight modification of ICRP 2007. While it appears to suggest a reduction in reference level from 20mSv to 10mSv, we understand from Figure2.3 that 10mSv represents the median of the distribution curve, not an exposure level that should not be exceeded. Thus, this proposal risks imposing tolerance of higher levels than at present. It imposes such acceptance on people who derive no benefit from radiation exposure.


(201) Specific monitoring programmes for the thyroid may be useful to detect severe thyroid disorders as early as possible. However, such monitoring should be organized ensuring that benefit outweighs harm at the population level (Togawa, 2018). In this regard, a long-term thyroid health monitoring programme should only be conducted for those individuals exposed in utero or during childhood or adolescence with 100-500 mGy absorbed dose to the thyroid.


Was this passage included in the draft in order to reduce the scope of the thyroid monitoring? Could it be that it was intended to provide justification to the authorities for reducing the targets of the thyroid survey? We, on the other hand, believe that thyroid monitoring should be expanded, that it should be ongoing, and that it should become a comprehensive examination.

This revised document will effectively provide standards for people living all over the world.
1. It anticipates that disasters on the scale of Chernobyl and Fukushima will recur on a worldwide scale.
2. It anticipates that the "usable nuclear weapons" promoted by U. S. President Donald J. Trump and others will result in nuclear war.
3. It anticipates a situation in which, should there be a nuclear attack on a nuclear power plant or a weapons facility, the nightmares predictable in (1) and (2) will compound each other.

The reference levels are revised to address such emergencies, and therefore are extremely dangerous. Needless to say, Hiroshima and Nagasaki show there is no such thing as a "usable nuclear weapon" that causes no exposure. Insofar as the ICRP reference levels assume the occurrence of nuclear war and nuclear disaster, they rationalize the abandonment of the victims.

The ICRP concept of ALARA(As Low As Reasonably Achievable) refers to holding radiation exposure as low as reasonably achievable, considering social and economical factors. From what standpoint are the social and economic factors being considered? And who is the standard of judgement for what is "reasonably achievable"? This is a rationality that excludes those who are most sensitive to the effects of exposure, especially the unborn, infants, and children. As the circumstances surrounding the nuclear industry changed, the ICRP shifted from the ALARA principle and trotted out a string of concepts, such as "justification," "optimization," "reference levels," "stake holders," and "co-expertise," habituating the public to living in contaminated areas following accidents and creating a situation in which they feel they have no choice but to adopt such an existence. Stake holders evidently refer to parties that the ICRP envisions as having relevant interests, not people who many have fled the sites of disaster.

These are concepts created by the nuclear industry for the nuclear industry, not concepts produced by the general public for the sake of the public.

The Preamble to the Japanese Constitution states, "We recognize that all peoples of the world have the right to live in peace, free from fear and want" (http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail/?id=174). "The right to live in peace" was proclaimed in the Japanese Constitution. And the Universal Declaration of Human Rights Articles 3, 6, 8, 13 state the following:


Article 3
Everyone has the right to life, liberty and security of person.
Article 6
Everyone has the right to recognition everywhere as a person before the law.
Article 8
Everyone has the right to an effective remedy by the competent national tribunals for acts violating the fundamental rights granted him by the constitution or by law.
Article 13
Everyone has the right to freedom of movement and residence within the borders of each State.
Everyone has the right to leave any country, including his own, and to return to his country.


Those who experienced the Fukushima Nuclear Disaster were robbed of "the right to live in peace, free from fear and want." Those who fled from the contaminated areas were driven out from refugee housing instead of receiving compensation and support "to live in peace, free from fear and want". "The right to life, liberty and security of person" has been violated, "the right to an effective remedy" has been threatened, and "the right to freedom of movement and residence" robbed. It is a violation of the Japanese Constitution and the Universal Declaration of Human Right to apply the ICRP's nuclear- industry oriented standards to the public.

As Professor Yasuo Nakagawa, a specialist on the health effects of radiation exposure states, “The ICRP imposes radiation exposure on the people and delivers economic and political benefits to the nuclear industry and the ruling class.” This is from his book, Expanded Edition A History of Radiation Exposure: From the Development of the Atomic Bombs by the US to the Fukushima Nuclear Power Plant Disaster (Akashi-Shoten, 2011). Far from being a charitable organization working to benefit the public, the ICRP appears to be an organization seeking to permanently impose the standard of 10mSv per year on the public in order to promote nuclear power

On March 19, 2018, Akiko Morimatsu, who evacuated from Fukushima with her two children, made the following speech at the United Nations Human Rights Council (UNHRC):

"My name is Akiko Morimatsu. I am here with other evacuees and mothers, together with Greenpeace. I evacuated from the Fukushima disaster with my two children in May 2011. Shortly after the nuclear accident, radiation contamination spread. We were repeatedly and unnecessarily exposed to unannounced radiation.
"The air, water and soil became severely contaminated. I had no choice but to drink the contaminated water, to breast-feed my baby. To enjoy health, free from radiation exposure, is a fundamental principle. The Japanese Constitution states, 'We recognize that all peoples of the world have the right to live in peace, free from fear and want.'
"However, the Japanese government has implemented almost no policies to protect its citizens. Furthermore, the government is focusing on a policy to force people to return to highly contaminated areas.
"I call on the Japanese government to immediately, fully adopt and implement the recommendations of the UN Human Rights Council. I thank UN member states for defending the rights of residents in Japan. Please help us protect people in Fukushima, and in East Japan, especially vulnerable children, from further radiation exposure."
(webtv.un.org/watch/japan-upr-report-consideration-41st-meeting-37th-regular-session-human-rights-council/5753738285001/#player)
This refugee's words must be heard. From a human right's standpoint emphasizing protection of health and life, we cannot accept the legitimation of increased radiation exposure due to an emergency. People should evacuate as soon as possible from a contaminated place. Establishing new standards compelling people to stay in contaminated areas violates human rights. People should not, cannot stay in a place that endangers life and health.

The rights of refugees must be taken seriously, and their lives should be supported economically. If the existence of nuclear power is incompatible with these principles, it should not be allowed.

We demand that the ICRP not relax the standard of 1mSv per year for the general public. For the public to be exposed to any level in excess of 1mSv per year is currently illegal in Japan, and 1mSv per year can still harm the human body. We demand that the ICRP take seriously the differences in individual sensitivity to exposure as well as the special sensitivity of pregnant women, infants, and children, as well as the highly significant role of internal exposure.
(English translation assisted by Norma Field)



[Japanese Comment]

ICRP勧告改訂の草案に対する意見−被ばくから住民を護る基準に!
住民を被ばくから護る基準を求める市民と科学者


 パブリック・コメントを提出するに際して、2つの大きな疑問を述べておきたいと思います。まず、第一に、パブリック・コメントを集める対象について、今回は、草案自体が一部のみの翻訳であり、基本的に英語を理解するもののみを対象としているので、パブリックと言いつつ、きわめて限定的で差別的に収集している点です。
 第二に、今回も含めて草案にたずさわっている当事者は、ICRPの基準を日本に導入することを検討する当事者もあるので、利益相反にあたるのではないか、という点です。基準を作る側、基準を導入する側は本来立場が違うはずなのに、ICRPの基準については、それを取り入れるのが前提で進められているところがおかしいと思います。その一方で、
 IPPNWの勧告
( https://peaceandhealthblog.com/2013/06/05/fukushima-disaster/
 https://peaceandhealthblog.com/2019/08/26/radiation-exposure/ )
やアナン・ド・グローバー氏の勧告
https://www.ohchr.org/Documents/HRBodies/HRCouncil/RegularSession/Session23/A-HRC-23-41-Add3_en.pdf)は、ICRPも日本政府も無視している状態です。基準を作る側も取り入れる側も、本来多様な研究・提言の中で、よりよいものを選択する必要があるはずなのに、予定調和がなされているのは、大変な問題だと思います。

(1)ICRP2007年勧告の問題
 現在日本政府がとっている住民帰還政策では年間20ミリシーベルトを基準にしていますが、それは国際放射線防護委員会(ICRP)が提唱するICRP2007年勧告での推奨値を参考に決められました。
 しかし、ICRP2007年勧告自体が、2011年3月の時点で、日本の法令になっていたわけではありません。年間20ミリシーベルトは福島第一原発事故のどさくさに紛れて取り入れらました。しかもICRP2007勧告はチェルノブイリの経験を踏まえ、出来るだけ避難者を少なくすることで、政府と電力会社の賠償責任などの負担を少なくすることを狙ったものであるようにしか考えられません。
 日本の法令に取り入れることを検討する文部科学省放射線審議会の基本部会は、2009年3月13日(第19回)から2011年1月12日(第38回)まで、20回にわたって、ICRP2007年勧告の国内法取り入れを検討しました。基本部会の委員としては、東京電力株式会社福島第一原発の副所長(第25回基本部会より)や、東電環境エンジニアリング株式会社 原子力事業部長(第19回基本部会から第24回基本部会まで)など、東京電力の関係者が常に入っており、原子力発電を推進する側の影響下に基準が検討されていたといえます。利害関係者が委員となっている時点で利益相反です。同部会は、2011年1月に出した第二次中間報告において、「(3−d)緊急時における公衆被ばくに適用する参考レベルについて」として次のように提言しています。


(基本部会の提言)
緊急時被ばく状況における公衆に対する参考レベルに関して、ICRPが提案する線量(20〜100mSv)は、緊急時における防護措置の実施の要否、防護の最適化、および更なる防護措置の必要性を判断するための総合的な戦略に関する指標として妥当であり、我が国においても防護活動計画の策定のためにこの指標を考慮すべきである。また我が国でこれまでに提案された個々の防護措置(屋内退避及び避難、安定ヨウ素剤予防服役用等)に関する基準は、個々の防護措置の実施の要否を判断するための初動値として継続して適用可能である。


 このように、文部科学省放射線審議会基本部会は、原発事故よりも前に公衆に対する参考レベルについてのICRP2007年勧告導入について具体的に提言していました。ICRP2007年勧告は日本の法令に反映されたわけではないのに、原発事故後、導入されたのです。
 しかし、この導入に対しては強い批判がありました。2011年4月29日、放射線審議会基本部会のメンバーであった内閣官房参与の東京大学大学院教授は辞意表明をした際には、学校施設の利用基準が年間20ミリシーベルトであることに対して、「この数値を乳児、幼児、小学生に求めることは、学問上の見地からのみならず、私のヒューマニズムからしても受け入れがたい」と述べました。それだけ、年間20ミリシーベルトという基準が不適切であることを示しています。ICRP2007年勧告の導入自体が、そもそも法令違反なのです。

(2)ICRPの歴史的問題
 ICRPの公式のホームページではICRPを「放射線防護科学を公衆の利益を進める独立した国際組織」としています。また「イングランドとウェールズの慈善団体委託に登録された(登録番号1166304)慈善団体、とのことですが、果たして公衆の利益を進めるチャリティー団体なのでしょうか。
 歴史を振り返ると、ICRPの前身は1928年に発足したIXPRC(International X-Ray and Radium Protection Committee:国際X線・ラジウム防護委員会)です。1950年に初会合が開かれたICRPは、米国放射線防護委員会(NCRP)議長のL・S・テイラーが中心となって組織されました。NCRPとは1946年に発足し、広島・長崎の原爆を開発したマンハッタン計画で放射線人体影響の専門家として携わったスタッフォード・ウォレン(同計画の医学部長)らが執行委員となっていました。またマンハッタン計画に従事した科学者たちが中心メンバーでした。さらにマンハッタン計画を引き継いで米国の核開発を担ったのは米原子力委員会という連邦政府機関ですが、その生物医学部長を務めたシールズ・ウォレンが執行委員となりました。ICRP発足の経緯そのものからして、マンハッタン計画やそれを引き継ぐ米原子力委員会(AEC)の影響が大きい、米国の核戦略の強い影響力を受けていたといえます。
 そうした組織の基準が、国際的だとして福島県内の子どもたちに適用されているのです。しかも、公衆への基準が1990年勧告において年1ミリシーベルトとなり、この勧告については日本の法令に反映されていますが、その20倍もの基準が、しかも「緊急時」ではなく永続的に、胎児・幼児・子どもにまで適用されたのです。

(3)ICRP勧告改訂の草案における問題
 今回の草案は、ICRP2007勧告に少し手を入れたようですが、10ミリシーベルトと被ばくを20ミリシーベルトから減少させたように見せながら、 図からは10ミリシーベルトは分布の中央値であると理解され、それを越えてはならない被ばく限度としておらず、むしろ現在以上の被ばくを容認する危険性を持つ提案です。被ばくによって何らの利益を得ることがない公衆に被ばくを我慢させる案です。改正案の危険性はこの参考レベルが中央値であるような図2.3として出され、被ばく限度でないことです。
 また、草案の「201」に「甲状腺に対する特別の監視プログラムは可能な限り早く甲状腺の深刻な異常を検出するのに有効である。しかしながら、そのような監視は住民の集団レベルで便益が害を上回ることを確実にするように組織されるべきである(Togawa, 2018)。この点について、長期間の健康監視プログラムは胎児期や、小児期、あるいは青年期において、甲状腺に100から500 mSvの吸収線量を受けた個人に限って取り組まれるべきである。」と述べられていますが、この記述は甲状腺調査の対象範囲を狭めるために今回の改正草案に盛り込んだのでしょうか。行政側に都合の良い基準で調査の対象を狭めることを正当化する提案を作ろうとしているのではないでしょうか。私たちは甲状腺調査の対象はむしろ広げ、また継続的包括的調査をするべきだと思います。
 今回の改訂は、事実上、「世界の住民全体」の基準になります。その改訂をICRPに迫る衝動力は次の3点に有ります。
①今後世界的規模でチェルノブイリ・福島級事故が繰り返されることが想定されている。
②トランプアメリカ大統領等の「使える核兵器」による核戦争が想定されている。
③核兵器による攻撃が、原発あるいは核施設に対して行われる場合、両方の事態が組み合わさって生じることが想定されている。
 そのための緊急時の被ばく基準改訂であり、極めて危険なものであると言うことです。いうまでもなく被ばくのない「使える核兵器」などないことは、広島・長崎の例が示しています。しかし、ICRPの基準は核戦争・核被災を前提としている点で、被災者を切り捨てることを合理化する基準だといえるのではないでしょうか。
 ICRPの使用してきたALALA(As Low As Reasonably Achievable)の原則は、社会的・経済的要因を考慮しながら「合理的に達成可能な限り低く」するという意味で使用されていますが、そもそもどのような立場からの社会的・経済的要因か、そしてその合理性が誰に向けられているのかが問題です。核産業を前提とした「社会的・経済的」が成り立つ範囲での、放射線への感受性の強い人々の存在を排除した「合理性」です。つまりは、とりわけ感受性の高い胎児・乳児・子どもたち生命・身体に影響がない程度に低くおさえることを目的にしているわけではありません。ICRPは核産業が置かれた状況の変化のもと、「アラーラ原則」から「正当化」「最適化」「参考レベル」、そして 「ステークホルダー」および「共同専門性」と、一連の概念の創出によって、事故による放射能汚染下での生活に被災者を慣れさせ、住民に放射能汚染下での生活を選択せざるを得ない状況を作り出してきたのではないでしょうか。ステークホルダーといったとき、その利害関係者とはICRPの想定する関係者であり、そこには被災から逃れている避難者が含まれてはいないようです。このような概念は核産業の、核産業による、核産業のための概念であって、けっして一般公衆の、一般公衆による、一般公衆のための概念ではありません。
日本国憲法前文には「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する[We recognize that all peoples of the world have the right to live in peace, free from fear and want(日本国法務省訳)http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail/?id=174 ]」と、平和的生存権が謳われています。また世界人権宣言では、第3条、第6条、第8条、第13条1 にて次のように謳われています。


第三条 すべて人は、生命、自由及び身体の安全に対する権利を有する。
第六条 すべて人は、いかなる場所においても、法の下において、人として認められる権利を有する。
第八条 すべて人は、憲法又は法律によって与えられた基本的権利を侵害する行為に対し、権限を有する国内裁判所による効果的な救済を受ける権利を有する。
第十三条 1 すべて人は、各国の境界内において自由に移転及び居住する権利を有する。


 しかし、日本で起こった福島第一原発事故によって被災した住民は、放射線被ばくを含むさまざまな恐怖の状況下に置かれ、平和のうちに生存する権利を奪われています。また、避難している住民も、安全に平和に生活してゆくための、賠償・補償を受けるどころか、住宅を追われている状況です。「生命、自由及び身体の安全に対する権利」が侵され、「救済を受ける権利」を脅かされ、「自由に移転及び居住する権利」が奪われているのです。ICRPの使用してきた概念にのっとった基準を、住民に適用することは、憲法違反であり、世界人権宣言に反した基準を住民に適用するということです。ICRP2007年勧告における緊急時の勧告、さらには改訂草案は住民に被ばくをさせることを前提としており、これはもう放射線防護基準ではありません。
 放射線影響史が専門の中川保雄は『増補 放射線被曝の歴史:アメリカ原爆開発から福島原発事故まで』(明石書店、2011年)の中で「ICRPとはヒバクは人民に押しつけ、経済的・政治的利益は原子力産業と支配層にもたらす国際委員会である」と述べているように、公衆の利益のためのチャリティ団体どころか、原発事故が起ころうとも、一般公衆を年間10ミリシーベルトの基準に永続的に押し込み、原発を推進するための基準を提供する団体、といえるのではないでしょうか。
 2018年3月19日、人権理事会にて、二人の子どもを連れての避難者である森松明希子氏は「わたしたちには、情報は知らされず、無用な被ばくを重ねました。空気、水、土壌がひどく汚染される中、わたしは、汚染した水を飲むしかなく、赤ん坊に母乳を与えてしまいました。放射能から逃れ、健康を享受することは基本的原則です。日本の憲法は「全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から逃れ平和のうちに生存する権利」と書かれています。しかし、日本政府は市民をまもるための施策は、ほとんど実施してきませんでした。その上、日本政府は放射線量の高い地域への帰還政策にばかり力を注いています(グリンピース訳)」と述べ、日本政府に対して国連人権理事会の勧告を、「直ちに、完全に受け入れ、実施」することを求めています。こうした避難者の声こそ、重視しなければいけません。
 私たちは人間の生命・健康を護るという人権の立場から考えると緊急時だからと言う理由でより多くの被ばくを許容できるとすることはできないと考えます。生命・健康に危険が及ぶのであれば、その場に留まっていたり、まして居住したりすることはできません。できる限り速やかに避難すべきであり、新たな基準を設けて滞在を認めることは人権に反することです。避難の権利を認め、経済的にも避難者の生活を保障すべきです。もし仮に避難が社会的に保障できないならば避難を必要とする原発等の核施設の存在を許してはなりません。私たちは基準を緩めることは許しません。日本の被ばく基準年間1mSvでさえ決して安全ではありません。むしろ、内部被曝を重視し、感受性の高く、深刻な影響を及ぼす妊婦、胎児、幼児、そして子どもたちを中心に考えるべきです。
 
 
Final List of Co-signed Individuals and Organisations

共同パブコメ賛同者 Co-signed Individuals


上里 恵子(Agari Keiko) 広島県東広島市
阿部 治 (ABE Osamu) 立教大学教授(Professor of Rikkyo University)
阿部 泰宏(ABE Yasuhiro)福島市 原発賠償京都訴訟原告団
阿部 小織(ABE Saori )  京都市  原発賠償京都訴訟原告団
荒木美知子(Araki Michiko) 京都府宇治市
五十嵐 進(Igarashi Susumu) 福島県喜多方市
五十嵐英子(Igarashi Hideko) 福島県喜多方市
池村奈津子(Ikemura Natsuko) 京都市 使い捨て時代を考える会
石田 祐三(ISHIDA Yuzo) 日本自然保護協会(NACS-J)・東京連絡会会員
石飛 幸子(Ishitobi Yukiko) 京都市
入江 紀夫(Irie Norio) 奈良市 奈良・市民放射能測定所
岩本 勲 (Iwamoto Isao) 奈良市、 大阪産業大学名誉教授
上野 益徳(UENO,Yoshinori) 京都府宇治市
内海 暁夫(Utsumi Akio)京都市左京区  反戦老人クラブ・京都
うのさえこ(Uno Saeko) 京都府京田辺市 原発賠償京都訴訟原告団
遠藤 順子(Endo Junko) 医師、青森市
大倉 弘之(Okura Hiroyuki) (京都工業繊維大学名誉教授)
大塚 要治(OHTSUKA,Yoji) 横浜市(市民と野党の共闘をすすめる港北の会)
大田 幸世(Ohta Yukiyo)  放射能から子どもたちを守る枚方の会
大見 晢巨(OHMI, Tetsuo)  京都市伏見区
大山 弘一(OHYAMA,kohiti) 南相馬市議
大和田幸嗣(Owada, Koji) 兵庫県芦屋市
奥森 祥陽(OKUMORI,Yoshiharu) 京都府宇治市
落合 祥堯(Otiai Yoshitaka) 京都市 反戦老人クラブ・京都
Eiichiro Ochiai Vancouver, Canada
岡田 俊子(Okada Toshiko) 脱被ばく実現ネット
小田切 豊(ODAGIRI,Yutaka) 青森県平川市
小張佐恵子(Obari Saeko) 福島応援プロジェクト茨城
垣内 玲子 (Kakiuti Reiko)放射能から子どもを守る会・茨木
柿原 泰 (Yasushi KAKIHARA) (東京海洋大学准教授)
梶川 ゆう(Yu Kajikawa) ベルリンに在住の日本人による反原発グループSayonara Nukes Berlin
加藤美恵子(Katou Mieko) 神奈川県相模原市、原発井戸端会議
片岡 直樹(KATAOKA, Naoki) 東京都江東区
川安弥子(Kawasaki Ayako) 京都市 原発賠償京都訴訟原告団
河本 薫 (Komoto Kaoru)京都市 原発賠償京都訴訟原告団
北本 誠一(Kitamoto Seiiti) 盛岡市 三陸の海を放射能から守る岩手の会
金田 善裕(Kaneda Yoshihiro)東京都狛江市、作家(Komae A Writer)
金丸 博 (Kanemaru Hiroshi) 京都市 労災被災者
川越 啓子(Kawagoe Keiko) 大阪府枚方市
熊谷 まき(Kumagai, Maki) 埼玉県新座市 映画配給
蔵田 計成(Kurata Keisei) ゴフマン研究会所属
倉田 謙 (Kurata Ken) 神奈川県横浜市
倉田千鶴子(Kurata Chizuko) 神奈川県横浜市
黒川 眞一(KUROKAWA, Shinichi) 高エネルギー加速器研究機構名誉教授
黒田 静代(Kuroda Sizuyo) 大阪府吹田市
小出 裕章(Hiroaki KOIDE)元京都大学原子炉実験所助教, (Former Assistant Professor of Research Reactor Institute , Kyoto University)
古賀 詩子(Koga Utako) 京都府長岡京市 ヌヴェール愛徳修道会
小林 立雄(Kobayashi Tatsuo) 宮城県多賀城市
小林 雅子(Kobayashi Masako) 京都市 原発賠償京都訴訟原告団
小東ゆかり(Kohigashi Yukari)神戸市
コリン・コバヤシ(Kolin Kobayashi) 独立系ジャーナリスト、パリ在住
小林 将夫(Kobayashi Masao) 京都府京田辺市
小森 次郎(Jiro Komori)帝京平成大学 准教授、(Associate Professor, Teikyo Heisei University)
小山 潔 (Koyama Kiyoshi)大阪府高槻市 放射能健診署名運動全国実行委員会・事務局長
小山 敏夫(Koyama Tosio) 京都府宇治市
菅原佐喜雄(SUGAWARA,Sakio) 岩手県一関市The Japan Scientists' Association
斉藤さちこ(Saito Sachiko) 大阪市 南福崎土地株式会社 測定室
齋藤 夕香(Saito Yuka) 京都市 原発賠償京都訴訟原告団
酒井 恭子(Sakai Kyoko) 福島県 会津若松市
佐藤 和利(Sato Kazutoshi)大阪府高槻市 京都市民放射能測定所
佐藤 恭子(SATO, Kyoko) スタンフォード大学
佐藤 利夫(Satoh Toshio) 千葉県習志野市
沢田 昭二(Sawada Shoji) 名古屋大学名誉教授
佐原 若子(Sawara Wakako) 日本歯科医師会会員
島 明美 (Shima Akemi) 福島県伊達市、個人被ばく線量計利用の検証と市民生活環境を考える協議会
白岩 孝一(Shiraiwa Kouichi)福島県河沼郡湯川村
杉 勝利 (Sugi Katsutoshi)京都市、反戦老人クラブ・京都
鈴木 絹江(Suzuki Kinue) 原発賠償訴訟・京都原告団
須田 稔 (Suda Minoru)立命館大学名誉教授、京都府宇治市
瀬川 嘉之(SEGAWA, Yoshiyuki) (高木学校)
宗川 吉汪(Sokawa Yoshihiro)日本科学者会議(The Japan Scientists' Association)京都支部代表幹事
高木久美子(Takagi Kumiko) 京都市 原発賠償京都訴訟原告団
滝本 健 (Takimoto Takeshi) 大阪府吹田市
高橋 武三(Takahashi Takezo)兵庫県神戸市
高橋 博子(TAKAHASI Hiroko) 名古屋市
高原 康生(Takahara Yasuo) 奈良市
田口 弘子(Taguchi Hiroko) 佐賀県唐津市、玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会会員
竹内 正三(Takeuchi Shozo) 京都市南区
田代 真人(Tashiro Masato)栃木県那須町
申東 愛 (DONG-AE SHIN) 北九州市立大学教授
田中 一郎(Tanaka Ichirou) 東京都
田中輿念子(Tanaka Yoneko)京都市 西京原発ゼロネット
竹浪 純 (Takenami Jun) 青森県弘前市
田平 正子(TAHIRA Masako)京都市左京区 反戦老人クラブ・京都
辻本 誠 (Tujimoto Makoto) 奈良市 奈良・市民放射能測定所
槌田 劭 ( TSUCHIDA Takashi)京都府宇治市
土田あゆみ(TSUCHIDA AYUMI)愛知県知多郡阿久比町
土井 妙子(DOI, Taeko)金沢大学 教授(Professor  Kanazawa University)
手塚 美子(TEDUKA YOSHIKO) 大阪府枚方市
寺田あきこ(Terada Akiko) 京都市 京都市民放射能測定所
豊田 護 (Toyoda Mamoru)京都市
中須賀徳行(NAKASUKA Noriyuki) 名古屋市, 岐阜大学名誉教授(Gifu University, Prof. Emeritus)
中澤 讓二(Nakazawa Joji) 大阪府高槻市 京都市民放射能測定所
長嶺 歩 (NAGAMINE AYUMI)京都市左京区  介護福祉士
新美 治一(NIIMI JIICHI) 名古屋経済大学名誉教授 愛知県知多郡阿久比町
新美 正代(NIIMI MASAYO) 原発なくそうinあぐい呼びかけ人 愛知県知多郡阿久比町
西 傳  (Nishi Tutae)京都市山科区
西川 和男(Nishikawa Kazuo)京都市上京区
西崎 伸子(NISHIZAKI Nobuko) 福島大学行政政策学類
西野 博之(Nishino Hiroyuki)大阪府枚方市
ノーマ・フィールド(Norma Field)シカゴ大学名誉教授
野口 宏 (Noguchi Hiroshi) 滋賀県大津市 原発を考える琵琶湖の会
登 清美 (Nobori Kiyomi) 京都市
野村 修身(NOMURA Osami) 工学博士 エネルギー科学
萩原ゆきみ(Hagiwara Yukimi)京都市 原発賠償京都訴訟原告団
橋本 恵美(Hashimoto Emi) 兵庫県神戸市
長谷川沙織(Hasegawa Saori)京都市 原発賠償京都訴訟原告団
服部 庸 (HATTORI YOH) 京都市伏見区
羽石 敦 (Haneishi Atsushi) 大阪市
林 衛  (HAYASHI Mamoru) 富山市
東田 晴弘(Higashida Haruhiro)奈良市
日野川静枝(HINOKAWA, Shizue) (拓殖大学名誉教授)
平佐 公敏(Hirasa Kimitoshi) 滋賀県東近江市
深田 直三(Fukada Naozo)京都市山科区 反戦老人クラブ・京都
福島 敦子(Fukushima Atsuko) 京都府京田辺市 原発賠償京都訴訟原告団、大飯原発差し止め京都訴訟団
藤岡 郁子(Fujioka Ikuko) 大阪府交野市 美浜の会、大阪高教組
藤岡 毅 (FUJIOKA, Tsuyoshi) 大阪経済法科大学客員教授
藤田 敏雄(Fujita Toshio) 大阪府東大阪市
藤野 健正(Fujino Takemasa) 千葉県松戸市 「乳歯を保存するプロジェクト 代表
星川 まり(Mari Hoshikawa)緑の党グリーンズジャパン(Greens Japan),
 脱原発の日実行委員会(Nuclear-free Japan)
堀江みゆき(Horie Miyuki)原発賠償京都訴訟原告団
本多百合香(HONDA Yurika)東京都
増田 善信(Masuda Yoshinobu) 「黒い雨」の研究者
松井 英介(Matsui Eisuke)、岐阜県 Gifu Prefecture, 医師 Physician,
 岐阜環境医学研究所 (Gifu Research Institute for Environmental Medicine)
 乳歯保存ネットワーク (Preserving Deciduous Teeth Network)
松井 和子(Matsui Kazuko)、岐阜県 Gifu Prefecture, 元教員 Teacher
 乳歯保存ネットワーク (Preserving Deciduous Teeth Network)
松田 幹雄(Matsuda Mikio) 大阪府枚方市
松山 陽子(MATSUYAMA Yoko) 京都市
水戸喜世子(Mito Kiyoko)大阪府高槻市
美濃 由美(Mino Yumi) 奈良県生駒市
三室 勇 (mimuro Isamu) 京都市 反戦老人クラブ・京都
宮口 高枝(Miyaguchi Takae) 脱被ばく実現ネット 劣化ウラン廃絶みなとネットワーク
向井 千晃(Mukai Chiaki)大阪市淀川区・原発賠償訴訟サポーター
牟田おりえ(MUTA, Orie)岐阜県山県市、岐阜大学名誉教授
村上 由美(Murakami, Yumi) (Finland Helsingfors フィンランド ヘルシンキ市)
守田 敏也(Morita Toshiya) ジャーナリスト
森松明希子(AKIKO,Morimatsu) 福島原発事故による国内避難民(IDP)東日本大震災避難者の会
 Thanks & Dream(サンドリ)代表
矢ヶ崎克馬(Yagassaki Katsuma) つなごう命の会会長
柳下 祥一(Yanagishita Shoichi)大阪府枚方市 反戦老人クラブ・京都
山口サエ子(Yamaguchi Saeko)京都府宇治市
山崎 正彦(Yamazaki Masahiko)大飯原発差止め京都訴訟原告団事務局次長
山田五十鈴(Yamada Isuzu) 京都府宇治市
山田 耕作(YAMADA Kosaku) 京都府宇治市,京都大学名誉教授、
山田 晴美(YAMADA,Harumi)京都府宇治市
山本 英彦(Yamamoto Hidehiko) 大阪府茨木市 医療問題研究会
山本よし子(Yamamoto Yosiko) 放射能から子どもを守る会・茨木
梁取 洋夫(Yanatori Hiroo) ジャーナリスト
吉田 明生(Yoshida Akio)京都市,京都脱原発原告団
米澤 鐵志(Yonezawa Tethushi) 京都府宇治市 反戦老人クラブ・京都
漁野 亨 (Ryono Tooru)京都市 縮小社会研究会
渡辺 一枝(WATANABE ICHIE)東京都中野区
渡辺 悦司(WATANABE Etuji) 大阪府羽曳野市
渡辺 隆一(WATANABE Ryuichi) 長野市豊野
152名 (152 individuals)
 
 
 
共同パブコメ賛同団体 Co-signed Organisations

放射能から子どもを守る岩手県南・宮城県北の会 Association to Protect Children from Radiation
 in Iwate South and Miyagi North
福島バッジプロジェクト(Fukushima Badge Project) (福島市)
京都脱原発原告団
脱被ばく実現ネット Citizens' Network for Evacuation from Radiation
劣化ウラン廃絶みなとネットワーク
福島応援プロジェクト茨城
市民が育てる「チェルノブイリ法日本版(Chernobyl law Japan version)」の会 医療問題研究会
NPO法人使い捨て時代を考える会 (A group that warns the disposable culture)
東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ): Association of the Fukushima Nuclear Disaster Evacuees
乳歯保存ネットワーク Preserving Deciduous Teeth Network Email Address : pdmn311@gamil.com
在英日本人の反原発ネットワーク「JAN (Japanese Against Nuclear) UK」
脱原発の日実行委員会(Nuclear-free Japan)
京都・市民放射能測定所
原発賠償訴訟・京都原告団を支援する会
会津放射能情報センター
子ども脱被ばく裁判の会
なくせ原発!河内長野デモ
個人被ばく線量計データ利用の検証と市民生活環境を考える協議会
19団体(19 organisations)


東京オリンピックでの被曝の危険性を警告し開催に反対する 渡辺悦司

2019年9月



東京オリンピックでの被曝の危険性を警告し開催に反対する

2019年9月15日
渡辺悦司




〖ここからダウンロードできます〗
東京オリンピックでの被曝の危険性を警告し開催に反対する(pdf,128ページ,4798KB)
          (サイズ大なので時間を要する場合があります)

たんぽぽ舎で開催された講演会のプレゼンテーションスライドです。
上記からダウンロードしてごらんください。

「東京オリンピックでの被曝の危険性を警告し開催に反対する」
講 師:渡辺悦司さん(市民と科学者の内部被ばく問題研究会会員)
日 時:9月15日(日)13:30〜16:00(開場は13時)
会 場:「スペースたんぽぽ」(ダイナミックビル4F)
参加費:800円(学生400円)



【冒頭と結論を抜粋して掲載】プレゼンテーションスライドp001-p005,p128















福島県立医大および東大による宮崎早野論文調査報告について 山田耕作

2019年8月



福島県立医大および東大による宮崎早野論文調査報告について

山田耕作
2019年8月2日


2019年8月15日 島明美氏、黒川眞一氏、石田祐三氏のコメント追加


〖ここからダウンロードできます〗
福島県立医大および東大による宮崎早野論文調査報告について(pdf,22ページ,2065KB)


1.はじめに

 科学者は科学性と人権に基づいて行動しなければならないという観点から、以前から宮崎・早野論文に対する問題点を指摘してきた。第一に論文の結論「ガラスバッジで測定された個人線量が航空機で測定された住居近くの空間線量に比例する。その比例係数が0.15である」という結論が統計的に証明されておらず、科学的根拠がない。さらに2論文中の多くのデータの数字の間に整合性がない。また、図中のある空間線量値に対して箱ひげがない箇所があり、その空間線量値に対応する大部分の個人線量がゼロであるという明らかなデータの間違いがある。また航空機により測定された空間線量とガラスバッジの測定値がともに信頼できないことなど、科学性を著しく損なった論文であることが明らかにされている。例えば、ガラスバッジは全方向から来る放射線を部分的にしか測定できないし、航空機は上空のため住宅街より広い除染されていない場所からの放射線をも加えて測定してしまう。研究倫理の上からも、調査対象者のデータを研究や論文で使用することの同意を得ておらず、宮崎・早野論文は人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に違反する人権無視の論文であるとして批判されてきた。
 2019年1月8日には文科省の掲示において、早野龍五氏が同論文で被ばく線量を3分の1に過小評価していた間違いを報告し、謝罪をすると言うことがなされた。
 2019年7月19日、福島県立医大と東大から宮崎・早野論文に関する研究不正事件の調査報告が出された。ともに瑕疵や研究計画書違反はあったが、故意による重大な不正や倫理指針違反はなかったという報告である。意外な結果であるのでその報告の正当性を検討する。最初に福島県立医大報告を検討するが同報告の「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に対する無理解に驚かされる。


2.福島県立医大報告の検討

6.調査結果
 (1) 医学系研究の倫理指針に対する違反について
ア データの提供に同意していない市民のデータを使用していることについて
 個人被ばく線量把握事業実施時に、伊達市において同意・不同意の確認をとっている状況、および当時の倫理指針を踏まえると、研究者が提供されたデータの同意状況を確認することまでを求めることはできない。

 「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(文部科学省、厚生労働省平成26年12月22日決定)はその目的および基本方針で「⑤ 事前の十分な説明及び研究対象者の自由意思による同意」を上げている。同意を得ることは伊達市の問題ではなく、研究者の責任を伴う研究者の倫理の問題である。なぜならデータの必要性・使用目的を正しく説明できるのは研究者だけである。研究とその公表の結果に対する責任も研究者だけが負えることである。医学系研究の研究倫理指針を調査委員は無視ないしは誤解している。いかなる困難があろうと研究の対象者への事前の説明と同意は倫理指針にあるように研究に不可欠の前提である。事前の同意を得ない調査・研究は人権の侵害に当たるからである。

結果として、当該研究にデータの提供に同意していない市民のデータが含まれていることは非常に問題であると考えるが、これは伊達市による同意情報の管理が不十分であったことに起因するものであり、被告発者側に倫理指針に対する重大な違反や過失があったとは認定できない。

 倫理指針にあるように研究を実施する研究者が責任を持って研究の開始以前に研究対象者の同意を得るべきものである。論文を書くことは伊達市とは直接関係がない。論文に責任を持つことができるのは論文著者のみである。その研究者としての責任を自覚していないことが著者と監督機関福島県立医大に見られ、倫理指針に違反している。伊達市が市民の同意を得たというが研究者に代わって論文執筆の承認を得ることはできない。同意情報の管理が不十分であったとすれば研究の実行者である研究者の責任である。政府や軍の指示で人体実験をした過去の過ちを考えると、説明と同意は直接研究者が責任を持って行うべきことである。それにしても監督すべき福島県立医大の調査委員会が、大学の責任を伊達市の責任に転嫁している無責任な姿勢からは,同大学が医学系研究における倫理指針を理解しているとは考えられない。驚くべき事態である。倫理指針は言う。「研究者等、研究機関の長及び倫理審査委員会をはじめとする全ての関係者は高い倫理観を保持し、人を対象とする医学系研究が社会の理解及び信頼を得て社会的に有益なものとなるよう、これらの原則を踏まえつつ、適切に対応することが求められる」。福島県立医大の調査委員会が自らの責任を自覚していないのである。

研究対象者に研究が行われていることと研究内容が公知されておらず、同意撤回の機会が与えられていないことについて
研究計画書通りの研究告知が実施されていなかったことについては、当該研究の依頼者 である伊達市の判断で決定すべきものであり被告発者の裁量の範囲を超えていること、並び に、研究者及び研究機関としては必要な研究告知の手続きを行っていることを考慮すると、被告発者側に倫理指針に対する重大な違反や過失があったとは認定できない。

 論文に対して責任があるのは論文著者であり、伊達市ではない。伊達市の依頼によって研究をしたとしても市民に説明し,実施に責任を持てるのは研究者のみである。研究への個人データの使用の同意確認は研究者が責任を持って実施すべきものである。伊達市に作業への協力を依頼するとしても研究者自ら確認もしないのは明らかな研究不正である。市民の多くが知らなかったのであるから必要な告知がなされなかったことは明らかである。この不備は研究者の責任である。 過去の戦争中の人体実験も軍の依頼であったということで 研究者の責任は逃れられないのと同じである。「研究告知が・・・伊達市の判断で決定すべきものであり被告発者の裁量の範囲を超える」とは研究者の責任逃れのみならず、県立医大が研究対象者の同意を必要と考えていないことを示している。

ウ 研究計画書が承認される前にデータ提供を受け研究を開始していることについて告発者は以下の2点を根拠にして、当該研究が2015年12月の倫理審査委員会承認前に 開始されていると主張している。 ① 当該研究に使用された伊達市民の個人被ばく線量のデータが、伊達市から研究者に対し2015年8月に提供されていること。 ② 2015年9月13日に伊達市で開催された「第12回ICRPダイアログセミナー」 において、当該研究の共同研究者である早野龍五氏が伊達市民の個人被ばく線量のデ ータを解析したグラフを用いて解説しているが、このグラフは第2論文中に登場するものと実質的に同じものであること。
 上記①について、被告発者は当該研究の主任研究者であるとともに、2015年1月に伊達市の市政アドバイザーの委嘱を受け、事業をサポートする立場でもあった。当該研究に使用したデータは、研究承認前の2015年8月に伊達市から受領したものであることは被告発者も認めているところである。当該研究は、被告発者が市政アドバイザーとして事業をサポ ートした延長線上に企画・実施されたものであると考えられる。

 伊達市の依頼であれ、学術会議や原子力規制委員会の依頼であれ、倫理指針によれば研究者自身が研究を開始する前に研究計画書を公表し、対象者から承認を得なければならない。市政アドバイザーの地位を利用してその延長線上でずるずると人権を侵害することが危惧されるから倫理指針があるのである。研究計画書が承認される前にデータを入手し,研究を実施し、結果を発表しているとするなら何のために「人を対象とする医学系研究の倫理指針」があるのか。市政アドバイザーならいっそう厳密に研究に関する倫理規定を遵守し、市民の人権に配慮しなければならない。宮崎氏はガラスバッジを配布する前に伊達市に倫理規定について当然アドバイスすべきであった。それどころか研究対象者の同意を得る前に研究を実施しているのであるから、地位を利用して市民のデータを研究論文に利用したととられても仕方がない。この研究の目的も社会的に見て、被ばくから市民を守るためなのか、被ばくを強要するための調査なのか明確に判断できない。倫理指針は「研究が社会の理解及び信頼を得て社会的に有益なものとなる」ことを求めている。このように計画を公表して同意を得ていないことは伊達市も認めているのである。倫理指針違反は明白である。

 本来であれば、当該研究承認後に改めて研究用データの提供を受けるべきであったと考えるが、当該データが提供元である伊達市の了解のもとで、個人情報を含まない状態に匿名加工されていたものであることを考えると、被告発者側に倫理指針に対する重大な違反や過失があったとは認定できない。

 伊達市がガラスバッジによる被ばくデータを集めるには、当然研究対象者の事前の同意が必要である。宮崎真氏や田中俊一氏は市政アドバイザーとして研究者として倫理指針を守るよう伊達市にアドバイスすべき立場であった。さらに匿名であれ個人データの使用に当たっては対象者の承認が必要である。「研究承認後に改めて研究用データの提供を受けるべき」と言って承認前にデータの提供を受けて良いとしているが、これではすでにデータが使用されているのだから研究承認の意味がない。伊達市が自由にデータを使用できると考えているようであるが、伊達市の了解の問題ではなく、市民の人権の問題、市民の同意の問題である。マンハッタン計画などでは現実にフィルムバッジを用いて原爆の人体実験が行われたのである。福島県立医大の調査委員会は 市民の了解を得ることなく伊達市の了解で良いとする姿勢であるが 市民の人権を無視した権力的・高圧的な態度である。

 上記②の第12回ICRPダイアログセミナーにおける早野氏のプレゼンテーションが研究成果の公表に該当するか否かについては、本セミナーが過去の開催分も含め、原発事故被災地域における課題を住民が共有する場であり、学術成果を公表する場ではなかったこと、早野氏のプレゼンテーションも当該セミナーの趣旨に沿って実施されたものであることを考えると、当該発表が研究成果の公表に該当するとは言えない。
 よって、被告発者及び共同研究者である早野氏に倫理指針に対する重大な違反や過失があったとは認定できない。

 学術発表のみが問題ではない。承認なしに研究をしてはならない。対象者の承認を得る前にデータを入手し研究を開始してはならない。まして同意なしの個人データを用いた結果をいかなる形であれ発表してはならない。何処で発表しても、研究計画書に対する研究対象者による同意なしに研究を開始することは医学系研究に対する倫理指針違反である。

 エ 発表すべき研究成果を発表せず、研究計画書に定められている研究の成果でない論文を研究成果として報告していることについて
 告発者は以下の2点を根拠にして、当該研究の研究成果に疑問を呈している。 ① 研究等終了報告書において、当該研究により得られた主要な知見などとして2018 年2月の査読付き論文(38-310、2018、Journal of Radiological Protection)が 報告されているが、これは倫理審査員会の承認を得た研究計画書に基づく研究成果とはいえない。 ② 第1論文において、今後、外部被ばく線量と内部被ばく線量の相関を示すことが 示唆されているが、それに該当する研究成果が発表されていない。
上記①について、委員会として精査した結果、研究等終了報告書に記載のとおり「派生的 な成果」であり、研究計画書からの逸脱には該当しないと判断した。 これを踏まえると、被告発者に倫理指針に対する重大な違反や過失があったとは認定できない。 上記②については、被告発者より、解析の過程で内部被ばく線量の有意検出者数が極めて少ないことがわかり、依頼者である伊達市と協議した結果、個々の被験者の特定につながる 恐れがあることから研究成果として公表しないこととした旨の説明があった。 この点については、被験者保護の観点からも適切な措置であったと考えられ、被告発者に 倫理指針に対する重大な違反や過失があったとは認定できない。

 依頼者である伊達市と協議して決めれば正当化されると考えているようであるが,問題は研究者と調査対象の市民の人権の問題である。調査委員会は基本的なことを理解していない。内部被ばくの調査結果を、人権を配慮して公表しなかったとしているが,データの使用の同意を得ないで無断使用という基本的な人権侵害をしておきながら,人権を理由に倫理規定違反を正当化するのは一貫性がない。人権を侵害しない形で調査対象者の同意を得て発表することは可能であり、勝手に報告を中止することは公平性と公明性の原則に反し、それを公表しないことは研究倫理違反である。公表しないことは著者達の予想に反し、内部被ばくと線量の本来あるべき強い相関が見られたのかもしれない。
[ヘルシンキ宣言36「否定的結果および結論に達しない結果も肯定的結果と同様に、刊行または他の方法で公表されなければならない。」]。

 (2) 研究不正について
 ア 研究の全データをすでに破棄していることについて
 当該研究において、研究者が研究終了時に破棄したのは「伊達市から提供された個人線量データや国が公開している航空機による空間線量モニタリングの数値などの既存情報」であり、解析に用いた数式(Mathematica 言語で書いたプログラム)や図表等は研究終了後も保存されていることは確認できた。研究者が研究終了後時に破棄した既存情報は、長期間に渡って研究者が保存すべきデータには該当しないと考えられ、研究計画書に記載のとおり研究終了時に既存情報を破棄していたことは不適切な対応であったとは言えない。 よって、研究不正に該当するとは認定できない。

 データを残すのは論文発表後の疑問や批判に答える責任があるからである。疑問や批判に適切に回答できず、混乱し、訂正発表の撤回もなされた。もしもデータが残っているなら、1月8日の早野氏の文科省掲示もそれらを用いて確実に確かめられたはずである。このときは生涯線量も「3分の1に過小評価されていた」はずである。 なぜ同じデータを用いているにもかかわらず、今回撤回し、生涯線量の3分の1の過小評価が消えたのか。理解できないことである。

 イ 第2論文に捏造と疑われるグラフが存在することについて
 告発者及び被告発者側の主張と照らし合わせた結果、以下のとおりであると判断した。
① 第2論文を精査したところ、告発者が指摘した図の誤りについて、図7が該当する。
② 図7を作成する際に、図6において個人線量計のデータを3ヵ月の積算線量から 1時間当たりの線量率に変換するために行った処理(/3/24/30.5*1000(= 0.455))が不要であったにも拘らず同様に行われた。
③ 第2論文の結論に示された生涯線量の数値は妥当であり、告発者側が主張する個人線量の過小評価はない。

 0.455が不要であれば生涯個人線量は1/0.455倍になるはずである。それ故、生涯線量は過小評価されていると考えられる。これは論文の重要な目的であり根幹をなす数値であるからこの過ちは許されないものである。生涯線量が正しく計算されて図7だけが間違っていたとすれば図7の数値が結論である生涯線量と不整合であることがわかるはずである。2人の著者が結論に相当する図の間違いに気づかないのは不自然である。まして図と数式が保存され、それに基づくはずの1月8日の文科省掲示では図6を3ヶ月の線量と間違え、生涯線量も3分の1に過小評価したと説明していた。今度は異なる原因で2.2分の1に過小評価しているとしている。疑問はいっそう深くなったにもかかわらず、調査委員会は生涯線量の数値は妥当としている。不思議なことである。

以上のことから、第2論文中に誤りがあると認められたものの、総合的かつ客観的にみ て、意図的な捏造であったとは考えられない。 よって、研究不正に該当するとは認定できない。

 意図的でないことはどうしてわかるのか。生涯線量が妥当であることは如何に証明されたのか。どうして妥当とわかったのか。いずれにせよ意図的であれ、非意図的であれ大きな間違いは研究不正と考えるのである(以下の定義を参照)。

[定義 「研究不正」
ランセット誌の "Handling of Scientific Misconduct in Scandinavian countries" では以下のように簡単に定義している。
デンマークの定義:科学者の故意もしくは重大な過失による、虚偽の科学的メッセージ、偽の評判、強調。
スウェーデンの定義:虚偽のデータ、文章、仮説、他の研究者による原稿や論文により、研究過程を故意にゆがめること。もしくは、他の方法で、研究過程を故意にゆがめること。]

7.結論 当該研究においては、研究計画書からの逸脱等は散見されるものの、倫理指針に対する重大な不適合に該当するものではなかった。 また、第2論文中に故意ではない誤りは認められたものの、捏造・改ざん・盗用に該当する研究 不正については認定できない。

 研究計画書からの逸脱は一切あってはならず、散見されてはならないのである。研究計画書からの逸脱は研究不正である。故意ではないから不正ではないというが一般的な定義は「科学者の故意もしくは重大な過失による、虚偽の科学的メッセージ、偽の評判、強調」となっており、故意でなくとも重大な過失による虚偽も研究不正なのである。研究の最終的な結論が2から3倍変わって、2転、3転するのはたとえ故意でないとしても研究不正である可能性は極めて高い。「研究計画書からの逸脱」を認識していながら「研究不正」ではないとい県立医大調査報告は倫理指針に違反している。

8.付記 当該研究の依頼者である伊達市から提供を受けた既存情報のなかに包括同意時に不同意の意思表示をした市民のデータが含まれていたことは被告発者の瑕疵(かし)とは言えないものの問題である。 また、解析過程の計算誤りが見過ごされていたことも杜撰(ずさん)であった。 本来であれば、伊達市から同意者のみのデータの再提供を受けて、正しい計算式で再解析し、第1 論文及び第2論文を再投稿すべきである。伊達市からは「データの再提供については、調査委員会 (伊達市が設置した第三者委員会)の報告書が出てから判断したい。」旨の回答があり、現時点では それが実現可能かどうか不透明な状況である。 該当論文2編は速やかに是正されるべき状況にあり、本学としては伊達市が研究依頼者としての 責務を果たすことを強く希望するものである。

 依然として伊達市からデータの提供が正当化されているが,その前に「論文を作成し,広く公表する」ことに対する同意を研究対象者から得るべきである。論文の形式で公表されることは市民に周知徹底されておらず、対象者が調査に同意していたとしても、論文作成許可まで同意されていないから、研究依頼者の伊達市が決めることができない。研究者が対象者である市民から、論文発表の同意を直接得るべきである。伊達市から特定の研究者への個人データの漏洩とその論文への利用は人権侵害である。福島県立医大が許可をした研究で人権侵害や瑕疵があったのに県立医大の責任が一切問われておらず,自らの監督責任を不問にして、伊達市の依頼責任のみを追及しているのは公平性の原理に違反している。しかも宮崎氏は市政アドバイザーであり、ガラスバッジの利用では市側の重要な地位にあったのである。


3.東京大学宮崎・早野論文の調査について

 東大名誉教授早野龍五氏はこの論文以前から福島原発被曝の安全論で知られている。例えば2014年糸井重里氏と出版した『知ろうとすること』(新潮文庫)では食品摂取の安全について「年間5万Bq(ベクレル)までというのは、ある意味安全なレベルなんですよ」(p81)と書いている。ICRPによると毎日100Bqのセシウム137を1年間摂取する(年間3万6500Bq)と約1万2000Bqのセシウム137が体内に蓄積する。体重60kgの人なら体重1kg当たり200Bq/kgが蓄積する。これはベラルーシやロシア、ウクライナで「長寿命放射性核種取り込み症候群」として多臓器不全で死亡した大人や子供のセシウム137の体内蓄積量に近い(ユーリ・バンダジェフスキー著『放射性セシウムが人体に与える医学的生物学的影響』合同出版2011.12。アレクセイ・ヤブロコフ他著『チェルノブイリ被害の全貌』岩波書店2013年)。さらに1桁少ない20Bq/kgの蓄積でも子どもたちの心電図に異常が出ることが知られている。日本では100Bq/kgをコメなどの食品の安全基準としている。しかし、これは内部被曝を評価する際ICRPの経口摂取のベクレルからシーベルトへの過小評価された換算係数に基づく誤りである。なぜなら、がんと遺伝的影響のみを考えるICRPの換算係数ではセシウム137の経口摂取の場合、7万5千Bqが1mSvに相当するとしているが、これが桁違いの過小評価であるからである。この科学者早野氏の被曝容認の言葉は単なる誤りではすまず、現実に子どもや妊婦、未来の世代に対して極めて危険で、重大な責任を伴う。
 今回のガラスバッジを用いた被曝安全論は宮崎・早野両著者だけではなく、前原子力規制委員会委員長田中俊一氏や産業総合研究所フェローの中西準子氏、伊達市の当時の仁志田市長、半澤隆宏政策監の支持と協力のもとに行われている社会的なものである。仁志田市長はIAEAにまで行って報告し、除染の被曝の基準を5mSvに緩和するよう要請している。被曝した住民に対する責任が問われる。

東京大学報告
東京大学科学研究行動規範委員会(以下、規範委員会という)は、本学大学院理学系研究科元教授による研究活動について、倫理指針違反と研究不正の疑いがあるとの申立てを受け、 東京大学科学研究行動規範委員会規則(以下、規範規則という)第 10 条に基づき調査を行いました。
 申立ての内容は、別紙に示す研究内容について、
1)データ提供に同意していない市民のデータの使用(倫理指針違反)
2)福島県立医科大学の倫理委員会への研究計画書提出前の研究発表(倫理指針違反)
3)論文(別紙記載②,③)発表後1年経過した時点で資料・情報が全て破棄されている (研究不正)
4)セミナー発表(別紙記載①)のスライドと論文のグラフの値に齟齬がある(研究不正)
というものです。調査を行った結果は以下の通りです。 なお、調査では、規範規則及び文部科学省の「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成 26 年 8 月 26 日文部科学大臣決定)に定める不正行為の定義を踏まえつつ、不正行為の有無を判断しました。

別紙記載①のセミナーに用いられたスライドと別紙記載③の論文間の齟齬については、スライドの縦軸の数値が Individual Dose(個人線量率。単位:?Sv/h)を示すことを想定してい たため、生データ(3 ケ月毎の積算線量、単位:mSv)を読み込んで得た数値に 0.455 倍( /3(ヶ 月)/30.5(日) /24(時間)*1000(倍))されるべきところであったが、これが行われていないこと、さらに、別紙記載③の論文内の図6縦軸の数字はこの変換が行われていることを確認しました。 別紙記載③の論文内のデータ間の齟齬については、同論文図7縦軸の数値が Cumulative Dose (積算線量。単位:mSv)であり、本来 2.2 倍(上記 0.455 倍の逆数)されるべきところ、対象研究者が同論文図6からの計算時に失念していたことによることを確認しました。

いずれも論文著者の精査不足に起因するものであり、軽率なものであったと考えますが、規範規則第 2 条に定める「故意」によるものとは認められず、また、 「研究者としてわきまえるべき注意義務を著しく怠ったことによるもの」とまではいえないと判断しました。
データ破棄については、論文の元となる研究データが伊達市において保管されていることを前提に、解析後に研究データを破棄する旨を記載した研究計画を福島県立医科大学倫理委員会に予め提出し、承認を得ていたことから、対象研究者による研究データの破棄は不正行為に該当しないと判断しました。
なお、倫理指針違反については研究不正に関する調査を任務とする、規範委員会及び調査 委員会の調査範囲外の事項であり、この点については判断しないこととしました。

 東大規範委員会は「故意」によると認められないので研究不正ではないとしている。しかし、ガイドライン(研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン 平成26年8月26日 文部科学大臣決定)のページ8には次のように書かれている。
「(2)研究機関における一定期間の研究データの保存と開示:故意による研究データの破棄や不適切な管理による紛失は、責任ある研究行為とは言えず、決して許されない。
 (3)研究データは一定期間保存する。第三者からの批判への自己防衛のためにデータの保存は不正防止のためにも必要である」。
 それ故、実験ノートとともに生データを保存しておくのが原則中の原則である。
 ガイドライン第3節 1の(3):対象とする不正行為(不特定行為)では、
 「故意または研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによる投稿論文などの発表された研究成果の中に示されたデータや調査結果等の捏造、改ざんおよび盗用である」と書かれている。
 宮崎・早野論文はこの改竄に当たると思われる。東大規範委員会の言うような単純なミスであればなぜ早野氏は1月8日に異なる説明を文科省に張り出したのだろうか。数式と図は保存されていたとのことなら,生涯線量値が変わるはずがない。そしておよそ半年後になぜそれを撤回したのだろうか。上記のガイドラインのように生データが保管されていればこのような混乱は起こらなかったであろう。
 他にも多くの間違いが存在する。99%タイルが90%タイルと考えられること、中央値と平均値が混同されていること。
 しかも第1論文第1式でガラスバッジの個人線量と航空機による空間線量の比率を平均している。数学では比率は平均できない量である。低線量域と高線量域で比率の数値の精度が異なり,平均はできず、誤差の計算もできない。両論文の重要な結論である個人のガラスバッジと空間線量の比率が一定で0.15±0.03であること、つまり、ガラスバッジの個人線量が住居近くの空間線量に比例することが統計的に証明されていない。単に平均できないものを平均して0.15±0.03 (真実は平均ではなく中央値であると思われる)としただけである。
 一読すれば宮崎・早野の2論文には多くの理解できない混乱・不一致・矛盾がある。それらは岩波の科学で2019年2月号から7月号に詳しく黒川眞一氏達によって紹介されている。誰でも気がつくのは箱ひげがなくはずれ点のみが存在するグラフの空間線量値の箇所(ビン)である。上に上げた平均値と中央地の混同も1例である。黒川氏をはじめ多くの学者が指摘している問題点は論文中に多く「散見」(福島県立医大報告書)される。そのことに東大の規範委員会も気がつかないはずがない。それをわざと無視しなければこのような図7だけを取り上げた調査報告は書けないであろう。本来、総合的で科学的な研究と教育の中心である大学による調査である。誠実な調査報告は人権の擁護はもちろん日本の科学と未来の研究者のためにも不可欠である。
 このような不誠実な調査報告は研究不正につながる倫理指針違反ではないだろうか。調査報告は故意でないから研究不正でないとしているが,研究不正の定義は「科学者の故意もしくは重大な過失による、虚偽の科学的メッセージ、偽の評判、強調」となっており、故意でなくとも重大な過失による,虚偽の科学的メッセージ(例えばガラスバッジを用いて得られた個人線量は政府の0.6に比べ4分の1にすぎない)は研究不正である。この「宮崎・早野論文が研究不正に当たらない」という東大の報告は日本の科学の将来をゆがめる重大な虚偽であると思う。


別 紙
 対象研究者及び対象の研究活動
  ※上記②の論文の「論文タイトル」については、掲載雑誌上の表記を記述する。
 対象研究者 早野 龍五
 対象の研究活動
 ① セミナー発表:セッション「測って伝える」におけるスライド 発表 (第十二回福島原発事故による長期影響地域の生活回復のための ダイアログセミナー「Experience we have gained together(これ までの歩み、そしてこれから)」)

 ② 掲載雑誌名等 : Journal of Radiological Protection, 37(2017),1 - 12 論文タイトル:Individual external dose monitoring of all citizens of Date City by passive dosimeter 5 to 51 months after the Fukushima NPP accident (series): 1.Comparison of individual dose with ambient dose rate monitored by aircraft surveys

 ③ 掲載雑誌名等 : Journal of Radio logical Protection, 37(2017),623 - 634 論文タイトル:Individual external dose monitoring of all citizens of Date City by passive dosimeter 5 to 51 months after the Fukushima NPP accident (series): II. Prediction of lifetime additional effective dose and evaluating the effect of decontamination on individual dose


 
【研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン】

 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針
 人を対象とする医学系研究は、研究対象者の身体及び精神又は社会に対して大きな影響を与える場合もあり、様々な倫理的、法的又は社会的問題を招く可能性がある。研究対象者の福利は、科学的及び社会的な成果よりも優先されなければならず、また、人間の尊厳及び人権が守られなければならない。

 第1 目的及び基本方針
 この指針は、人を対象とする医学系研究に携わる全ての関係者が遵守すべき事項を定めることにより、人間の尊厳及び人権が守られ、研究の適正な推進が図られるようにすることを目的とする。全ての関係者は、次に掲げる事項を基本方針としてこの指針を遵守し、研究を進めなければならない。
 ① 社会的及び学術的な意義を有する研究の実施
 ② 研究分野の特性に応じた科学的合理性の確保
 ③ 研究対象者への負担並びに予測されるリスク及び利益の総合的評価
 ④ 独立かつ公正な立場に立った倫理審査委員会による審査
 ⑤ 事前の十分な説明及び研究対象者の自由意思による同意
 ⑥ 社会的に弱い立場にある者への特別な配慮
 ⑦ 個人情報等の保護
 ⑧ 研究の質及び透明性の確保



【島明美氏、黒川眞一氏、石田祐三氏のコメント】

島明美氏のコメント
申 立 人 の コ メ ン ト

 今回の調査結果を読み、心から驚きました。そして、被ばくデータを含む個人情報が軽視されていると強く感じました。
 私を含む家族全員、そして伊達市民の大半が、宮崎真氏と早野龍五氏に研究対象とされていました。研究を開始したことも知らされず、同意書も無視され、同意撤回の機会もないままに、「被ばく線量」という極めてデリケートな情報と住所と突合し、解析されました。その研究に至る過程は極めて不透明で、現在も伊達市と伊達市議会が調査を続けています。
 このような不透明かつ非科学的な研究を、倫理違反も、研究不正もないとする今回の判断は到底、理解できませんし、許すことも出来ません。研究の基本をないがしろにしていると思いますし、科学への不信感がますます募ります。これが許されるのであれば、「人を対象とした医学系研究に関する倫理指針」や「研究不正ガイドライン」の存在意義はないと思います。
 今回の調査結果は、「研究計画書からの逸脱等は散見される」「誤りが認められた」と、私の申し立て内容を認めています。
 「人を対象とした医学系研究に関する倫理指針」*1では、研究計画書に従って研究が適正に実施することを規定しています。調査結果は、「倫理指針に対する重大な不適合に該当するものではなかった」と結論づけていますが、同意が取れていないデータを使用していることは「重大な不適合」ではないのでしょうか。伊達市民の前で納得のいく説明をしていただきたいです。
 また文部科学省が定めている「研究不正に関するガイドライン」では現在、「研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによる不正」も不正行為と規定しています。計算結果が数倍も異なる「誤り」は、これに該当します。
 私は2年前、黒川眞一高エネルギー加速器研究機構名誉教授とともに、宮崎氏と面会しました。この論文に関するごく基本的なことを確認するためです。しかし、宮崎氏は筆頭著者でありながら2、3 を除いて、ほとんどの質問に答えられませんでした。筆頭著者であり、この論文で博士の学位をとっているにも関わらずです。共著者の早野氏に確認するということで、その日は終了しましたが、その後回答は一切、ありません。
 今回の論文は、伊達住民を置き去りにしたまま、きわめて不透明な経過を経てかかれました。伊達市前市長の要望による論文であったことや、市の文書に改ざんがあったことが明らかになるなど、政治的な背景があることが浮き彫りになっています。にもかかわらず、本調査の過程も結果も、非常に不透明かつ不誠実であったことを、非常に残念に思います。
 現在、多くの研究者がこの論文に関する検証作業を行なっています。今や大きな研究不正が指摘されるに至っており、今後、新たな申し立ても行われる予定です。そこで、さらに踏み込んだ科学的な検証がなされ、不透明な研究経緯と研究不正が明らかになることを期待しています。
2019年7月19日
申立人:島明美(個人被ばく線量データ利用の検証と市民生活環境を考える協議会代表)

*1 倫理指針 第 2 章 研究者等の責務等 第 4 研究者の基本的責務 2 研究の倫理的妥当性及び科学的合理性の確保等 (1) 研究者等は、法令、指針等を遵守し、倫理審査委員会の審査及び研究機関の長の許可を受けた研究計画書に従って、適正に研究を実施しなければならない。

これまでの経過
2015年
1月     宮崎氏が伊達市の市政アドバイザーに就任
2月20日  千代田テクノルの個人線量データを宮崎・早野氏に提供
7月30日  宮崎氏が伊達市に解析データを提示
8月12日  伊達市が宮崎氏・早野氏にさらなるデータを提供
9月12日  ICRP ダイアログで早野氏が伊達市データを発表
10月    伊達市が宮崎氏あての研究依頼書を作成(日付は8月1日付けに改ざん)
12月1日  宮崎氏が福島県立医大倫理委員会に研究計画を申請
12月17日 福島医大倫理員会が宮崎市の研究計画を承認
2016年
8月18日  第1論文を JRP に投稿
12月6日  第1論文が JRP に掲載
2017年
1月8日   第2論文を JRP に投稿
4月12日  申立人が「宮崎・早野論文」の使用データについて初の情報開示請求
4月24日  情報公開を受け、伊達市と宮崎氏が緊急会議
6月27日  申立人と黒川氏が宮崎氏と面談
7月6日   第2論文が JRP に掲載
2018年
11月    黒川氏が JRP に論文の誤りを指摘
12月12日 伊達市議会で論文におけるデータの不正使用が表面化
12月19日 申立人が東京大学に倫理違反・研究不正申し立て
2019年
1月8日   申立人が福島県立医科大学に倫理違反・研究不正申し立て
1月8日   早野氏が同論文に見解発表
1月25日  放射線審議会の報告書から同論文データ削除
2月4日   伊達市に「被ばくデータ提供等に関する委員会」発足
2月22日  伊達市議会で黒川眞一氏を招聘して勉強会開催
5月30日  個人被ばく線量データ利用の検証と市民生活環境を考える協議会発足
6月26日  伊達市議会に「被ばくデータ提供等に関する調査特別委員会」設置


黒川眞一氏のコメント
2019年7月
宮崎早野論文における研究不正および倫理違反の疑いについて

1.研究不正

解析方法やグラフにおいて、不整合で不可解な内容が複数あり、意図的なデータ改ざんや捏造が行われている可能性が高い。


データおよびグラフの改ざんの疑い
  • 99 パーセンタイルとされる記載とグラフは実は90 パーセンタイルである。(第1論文・第2 論文ともに)
  • 1 パーセンタイルとされる記載とグラフは10 パーセンタイルである。(第2 論文)
  • 第2論文におけるA 地区の平均周辺線量はおよそ2.7μSv/h であり、係数はおよそ0.15 であることが第1論文および第2論文を見比べることで推定できる。第2論文では、この値をそれぞれ2.1 μSv/h と0.10 としている。恣意的なデータ改竄の疑いが濃い。
    →このため、生涯線量の平均はほぼ半分に過小評価されている。さらに論文で99パーセンタイルの生涯線量とされているものは正しくは90 パーセンタイルでの生涯線量である。生涯線量の99 パーセンタイル値は100mSv を超える。
  • 上で示したデータの改竄につじつまがあうように、生涯線量を示すグラフ図7 は縦が47%に縮められている。また累積線量の推移を示すグラフ(図5A)の縦が55%に縮められている。(第2 論文)
  • 上の二つの項で示した矛盾は、第2論文図6に集中的に表れている。論文本文中では、図6中の曲線は平均周辺線量2.1 μSv/h と係数0.10 を用いて描かれているとされているが、図6のキャプションでは、平均周辺線量とされたものが、周辺線量の中央値と係数を用いて描かれたされている。いずれにしても図6の曲線は、t=0.65y において、周辺線量と係数の積である0.21 μSv/h の点を通らなければならないのに、0.33 μSv/h の点を通過するように描かれている。


  • (『科学』2019年7月号より)

  • 第2論文の図7のビンの多くで外れ値の個数が異様に少なく、99 パーセンタイルに整合するように外れ値の一部を恣意的に削除した疑いが強い。
  • 90 パーセンタイルを99 パーセンタイルといつわることにより、被曝線量の高い市民のデータを示さないように図の縦軸の最大値を恣意的に低くしている(第1 論文図4、第2 論文図6)。図6の最初のビンについては、論文のデータから本来の図を復元できる。復元した図を添付する。


  • (『科学』2019年6月号より)

恣意的解釈と結論
  • 第1論文において「個々の市民が受けた外部被曝線量は航空機モニタリングデータから推定することが可能であると結論する」と書かれているが、方法論的にもデータの取り扱いにおいても、これは不可能である。
    →著者の宮崎氏も2017 年6 月28 日の伊達市との打合せの中で、「航空機もモニタリングでの空間線量から個人の線量を導くことはできない。」と述べている。
  • 公衆に対する被曝防護において拘束値あるいは参考レベルとされる値は、95 パーセンタイル値である。第1論文では係数の平均値を政府が定めた基準と比較しているが、比較すべきは係数の95 パーセンタイル値である。
  • 第2論文の冒頭に記述されている第1論文の要約は、第1論文の内容と異なる。
  • 航空機による線量測定が地上における線量測定値と比べると1.7 倍程度の過大評価となることを考慮していない。第1論文が書かれる以前に行われた、論文と同一のガラスバッジ測定値を用いて伊達市が独自に行った地上における線量測定値を用いた調査は、航空機による測定値が、1.4〜1.7 倍ほどの過大評価となることを示している。
  • 第2論文における対象者が特殊な集団であることが記述されていない。A 地域の対象者の半数ほどは特定避難勧奨地点の市民であり、多くの市民が実際に避難している。B およびC 地域の対象者はほとんどが15 歳以下の子供である。
  • 第2論文の結論、「除染は被曝線量を低減する効果がない」について、論文中に根拠が示されていない。

2.倫理違反と虚偽説明

  • 第1論文の図3に示されている点の最小間隔は50m である。航空機による線量測定のグリッドの間隔はほぼ250m である。このことは、著者たちが加工されていない生の住所データを知っていたことを意味する。これは、研究計画書の記述とことなり、また第1論文の記述である、「市民の住所は伊達市によってGIS 化され、解析前に1/100 度に丸められた」という記述ともことなる。論文の記述は虚偽である。
  • 「科学」2019 年2月号に次のような7つの倫理指針違反を指摘している。
    (1) データ提供に同意していない伊達市民のデータを使用した。
    (2)伊達市民に研究に内容を公知せず、オプトアウトの機会を与えなかった。
    (3)伊達市長から論文作成を依頼されたことを隠蔽した。
    (4)研究が福島県立医科大学の学長によって承認される前に伊達市民のデータを使った研究を開始した。
    (5)研究計画書に書かれている内部被曝線量と外部被曝線量の相関を調べる研究をどこにも発表していない。
    (6)研究終了報告書に(5)の研究の発表をしなかったことを記さず、研究計画書に書かれていない、「人を対象とする医学的研究」ではない研究を成果として報告している。
    (7)倫理指針がデータをできるだけ長期間保管するように定めているのにかかわらず、全データを研究終了予定日の1 か月前に廃棄している。
    以上


石田祐三氏のコメント
両大学調査委員会の調査報告の疑問点
石田祐三
2019年8月13日

 多くの疑惑を持たれたM・H論文の調査報告(福島県立医大調査委、東大・規範委員会)に対し、明快な批判・見解と関連資料(黒川氏・島氏論文等)を提供して頂き大変有り難うございます。大変参考になりました。小生の気掛かりな点は、ほとんど山田さんの批判で代弁されています。重複になりますが、あえて幾つか小生なりに意見を述べさせて頂きます。

1)倫理規定違反について、
 同意のない個人データが研究名目で勝手に利用されているので、明らかに「倫理規定違反」。何のために研究計画書を作成し、倫理審査委員会の承認を受けたのか。医学系分野の当事者なら一番よくご存じのはず。調査委は「非常に問題」といいつつ、重大な違反・過失はないともいう。依頼した市側の情報管理の不適切さにあると責任転嫁している。公平・公正であるべき調査委が、被告発者擁護のための苦し紛れの便法が使われている。これでは調査委の使命が果たされているとはいえない。
 最近の「改正個人情報保護法」において、オプトアウトの方法(あらかじめ本人に通知し、又は本人が容易に知りえる状態に置く)による個人データの第三者提供手続きが厳格化(本人が要求すれば、個人データ利用は停止)されています。

2)研究不正について、
 解析過程の計算間違い等のために最終結論(影響力大)が2転、3転するという事実は、データの不正操作が行われていたのではないかと疑われる。単純なミスとはいいがたい。
 更に、研究終了と同時に元データが消去されているならばかなり悪質である。これでは、図は残っていたとしても、お互いに検証不可能になる。昨今いたる所で証拠隠滅・改竄等が横行している。研究者なら、全てのデータや実験記録は何年も保存する習慣があるはず。
 論文としての信頼性が著しく損なわれており、「研究不正」の典型例といえる。また、研究計画書で予告しておきながら、第3論文の発表を中止したことへの説明に一貫性がない。同意なく個人情報を勝手に使用しておきながら、別の研究項目では有意検出者数が少ないため特定個人につながる恐れがあり、被験者保護の観点から公表は止めるとは一見もっともらしいが、行動が矛盾している。急遽打ち切らざるを得なかった背景には、データの早期廃棄、不都合な結果によるこれまでの主張に矛盾発生、あるいは批判に晒されることへの懸念等あったのではないかと色々疑念が湧いてくる。
 両調査委員会とも、何の根拠も示さず一般論で「故意ではない誤り」であるから、倫理的に重大な違反は認められない、研究不正に該当するとも認められないと理解不能な主張を繰り返す。逆に言えば、最初から研究不正はないという前提で調査しているから、論理的に一貫性がなくなり、矛盾が出てきて苦し紛れの説明になる。これでは調査委自らが不正をやっていると誤解されても仕方ない。本来、故意かどうかなど人の心の作用を他者がどうやって的確に判断できるのか疑問です(本人がそう言っているので信じます(性善説)?)。その曖昧さを逆に悪用しているのではないか。

3)福島県立医大報告の「付記」について、
 結論では「倫理規定」違反はない、「研究不正」はないと認めていながら、あえて「付記」の項目まで付け加えているのは何故なのか、結論だけでは後味が悪かったか?
 伊達市から同意者のみのデータの再提供を受け、杜撰な解析・計算誤りの所は正した後、是正した第1・第2論文を再投稿すべきと提案している。これは、実質倫理規定違反、研究不正ともに認めているのではないか。それでも、なお研究依頼者である伊達市に責任転嫁しなければならない苦しさが滲み出ている。市側にも個人情保護違反の疑いがあるが、これは市議会・住民達で問いただすことである。
 個人的意見としては、数多くの疑惑が露呈し信頼を損ねた投稿論文(2件)は取り下げる、そのことで責任を果たしてもらいたい。

4)東大調査委員会について、
 わざわざ行動規範委員会と銘打って、研究不正のみを調査し、倫理指針違反に関しては調査範囲外の事項なので判断しないと避けている。研究不正は研究者として守るべき規範やルールを犯しているから発生するのであり、それを敢えて分離して考える手法は根本的に疑念を生じさせる。倫理指針違反は誰が見ても認めざるを得ないから、調査を避けたと捉えられても仕方がない。また、疑惑だらけの論文内容について、軽率であったが「故意」とは認められない、それ故不正行為でないと結論付ける。
 多数の軽率さが積み重なれば、実質故意に等しい。また、日頃の発言・行動(その人固有の心的反映)を見れば、ある程度推測はつく。また、本当に故意でなく単純ミスなら、他者から間違いを指摘されれば素直にそれを認めて直ぐに訂正するはずである。捏造・改ざん・盗用等なら、そう簡単には認められないであろう。一方、内部調査委の指摘に対しては、いとも簡単に主張を撤回するとは何とも軽率な行動であり、何が本当か分からなくなり更に混乱を起こしてしまう。

 本調査委員会(規範委)の調査内容と結論は、福島県立医大調査委よりもっと事態を矮小化し、杜撰、無責任態勢の調査としか思われない。本M・H論文は早い段階から多くの良識ある研究者や市民レベルの人達の間で疑惑を持たれ、多数の誤りがあることを指摘されてきた。既に、マスメディアを通して不正論文が報道されてきた。こうした研究者達から指摘された問題点にはほとんど答えられていない。公正・公平であるべき調査委員会が機能不全を起こしている。これほど疑惑を持たれた研究者を匿う理由は何処にあるのか。不正を不正と認めず一個人を擁護することになれば、この研究分野だけでなく大学自体の社会的信頼を失墜させてしまう。改めて倫理規定違反も含めて検討する調査委員会を発足させ、疑惑に応えるべく再調査し納得いく報告してもらいたい。

 注)福島県の発表では、毎回検査のたびに当時18歳以下の甲状腺がん、他のがん・もしくはがんの疑いがある人が増え続けています。しかし、検査を検証している検討委員会は「これまでのところ被曝の影響は考えにくい」と毎回枕詞のように同じことを繰り返している。しかし、多くの国民は疑問を抱いているだろう。誰がどういう科学的根拠で判断を下しているのか明らかにしてほしい。最近、被曝線量(低線量レベル)と小児甲状腺がん発症率の間に比例関係があるという研究結果が報告されている(加藤聡子氏等)。
 もし、上記のような研究者・関係者がその中に含まれているとしたら信頼性を損ねる。誤った発言・論文等で多くの市民を惑わせるのではなく、その時点で明らかになった正確な情報を提供し、十分な説明・理解を深めながら信頼関係を築いて行く。個々人の立場の違いは尊重する。そうしたほうがずっと安心感が生まれ、適切なケア(予防・治療)を受けることが出来るであろう。



文献
 岩波の特設サイトがある。
 https://www.iwanami.co.jp/kagaku/hibakuhyoka.html
1.黒川眞一、島明美、「科学」岩波書店,2019年2月号
https://www.iwanami.co.jp/kagaku/201902-kurokawa-shima.html
2.黒川眞一、「科学」 岩波書店、2019年3月号
3.黒川眞一、谷本 溶 「科学」 岩波書店 2019年4月号
4.記事の紹介 A.週刊金曜日6月30日号 B.ガラスバッジに関して
http://blog.torikaesu.net/?eid=63
ファイルは以下に格納
http://www.torikaesu.net/data/20170716_yamada.pdf
5.宮崎・早野論文には単純な数学の誤りがある―比率を平均している
http://blog.torikaesu.net/?eid=65
ファイルは以下に格納
http://www.torikaesu.net/data/20170813_yamada.pdf

福島原発事故に猛威を振るう「知られざる核戦争」 矢ヶ克馬

2019年7月

日本の市民の方々、全世界から日本へいらっしゃる方々に深刻な事実をお届けいたします


福島原発事故に猛威を振るう「知られざる核戦争」


―「放射線による健康被害は一切無い(安倍首相)」の背後に死亡率大量増加が―

矢ヶ克馬


 
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福島原発事故に猛威を振るう「知られざる核戦争」(pdf,33ページ,1286KB)


§1 概説――「放射線による健康被害は一切無い(安倍首相)」のファシズム――
 核戦争は巨大な破壊力の核兵器を投下するあるいはそれで威嚇することと理解されている。それに対し、「知られざる核戦争」は、ヒロシマナガサキ原爆投下以来、アメリカを中心とした核戦略と原発を推進するためにとられた「放射線被害を市民に認識させない情報操作」の核戦争を指している。この核戦争は著者による造語であるが、一般市民に未だ「知られざる」状態にあるために「知られざる核戦争」と称す。
 ヒロシマナガサキ原爆による放射性降下物放出を隠しその被害を隠し続ける。その後500回以上を記録した大気圏内核実験、採鉱や核兵器核燃料製造、原発運転と再処理工場操業、核・原発事故、劣化ウラン弾使用などによって莫大な量の放射能が放出されて環境中に蓄積した事実を隠し、全世界でその被曝による人的被害が想像を絶する規模(ECRR推計で6000万人以上)で続いていることを隠している。これが「知られざる核戦争」の実態である。
 福島原発事故後は史上最悪の「知られざる核戦争」が展開されている。日本に典型的なファシズムが「知られざる核戦争」を一層激しいものとしているのである。
 政府発表でさえ広島原爆の168発分(実際はその10倍程度とみられる:渡辺悦司ら:放射線被ばくの争点(緑風社)2016)の放射性物質が放出したにも関わらず、「放射線による健康被害は一切無い」の言明(東京オリンピック決定時の安倍首相記者会見)が先行した。
 これは原爆投下直後の「知られざる核戦争」に匹敵する。1945年9月6日、マンハッタン管区調査団の指揮官トーマス・ファーレル准将 が東京で記者会見して言明した「広島・長崎では,死ぬべき者は死んでしまい,9月上旬現在において,原爆放射能で苦しんでいる者は皆無だ」、「残留放射能の危険を取り除くために,相当の高度で爆発させたため,広島には原爆放射能が存在し得ず,もし,いま現に亡くなっている者があるとすれば,それは残留放射能によるものではなく,原爆投下時に受けた被害のため以外あり得ない」(「広島ジャーナリスト」HP)の虚偽宣言に匹敵するものである。東電事故後の放射線被曝対策は、戦後アメリカがファーレル言明に沿って原爆被害を処理した歴史に瓜二つである。
 政府はその虚構をシナリオの芯に据え、全官庁あげて「風評払拭リスクコミュニケーション強化」を大宣伝している。放射線被ばくの現実を「心の持ちよう」にすり替えるのだ。首相の「健康被害は一切無い」という虚言が事実を乗り越えて「現実を見る目」となる。虚偽の基に被曝強要策が進む。指定区域外避難者に対する住宅支援を停止することによって、指定区域外避難者を避難者統計から外し、避難者が減少したことにする。避難指示区域を解除することで、汚染が無くなったことにする。あろうことか被曝被害を拡散拡大することで高汚染地域の被害を見え難くして、「福島の放射線被害は無い」を合理化するという屋上屋を重ねる虚偽の世界が日本の現実である。
 福島原発事故後ほどなくも主として文科省から各大学長と各学会長宛てに「放射能に関するデータは政府が発表するデータである。個別の研究者が調査したり研究したりすることの無いように」という趣旨の通達がなされた。もちろん政府が責任もって諸測定を行ったのではない。「データが無いことは被曝が無いこと」とされた。チェルノブイリ事故後にIAEAウィーン会議(1996)で今後生じ得る原発事故に際して、①避難させるな、②情報を統一せよ、③専門家を自由に動かせるな、との指針をまとめたが、その方針を受けてのことであった。

 IAEA(国際原子力機関), UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)、ICRP(国際放射線防護委員会) 等を国際原子力ロビーと規定する。IAEAはチェルノブイリ事故の教訓として「住民が汚染された土地に永住をすることを前提に、心理学的指針も含めて従来の被曝防護を見直す方針を明確にした(1996年、IAEA「チェルノブイリ10年」)。原発事故版の「知られざる核戦争」の基本路線だ。ICRPが住民への被曝強制を指針として打ち出し、IAEAは福島に事務所を出張させ実地指導を行う。この方針に輪をかけて日本政府は虚偽に満ちた情報処理を行う。

 早すぎる「帰還」、「復興」。事故後たった9年目、原子力緊急事態宣言が出されたままで、放射線被曝制限値が20ミリシーベルト/年(日本の法律値は1ミリシーベルト/年)のままで、オリンピックが開催されようとしている。

 指定難病患者の異常増、各地の病院患者の異常増加などが伝えられている。爆発的に大量発生している小児甲状腺がんを原発関連と認めない。それを突破口に、一切の健康被害は認めず、一切の予防医学的な措置は封じられる。原発事故以降に発生した大量死亡率増加は報道さえされてない。

 東日本(東北、関東)の食材汚染は今なお非常に深刻な汚染を示し、メルトダウンした炉心からは空に海に放射性物質が放出し続けている。日本は危険な放射能環境に満ちている。

 周産期死亡率が福島事故9〜10か月後(2012年)から、放射能高汚染県(12%増)、中汚染県(8.4%増)で増加が始まって現在も継続している。死亡率は土壌汚染に相関していた。(ドイツの放射線防護専門誌「放射線テレックス(2017年2月)(Strahlentelex)」No. 722-723 / 02.2017 http://www.strahlentelex.de/ )
 他方、乳児の先天的奇形:複雑心奇形は2011年から、停留精巣の奇形は2012年から増加が確認され、日本全土すなわち土壌汚染の低い地域にも分布し、先天的奇形の原因は土壌汚染の多寡に拠らない食物流通を通じた内部被曝によることが強い蓋然性として推察される。すなわち妊婦の内部被曝の結果であることが推察される。(村瀬ら: 「Journal of the American Heart Association」に 2019年3月13日掲載、村瀬ら: 「Urology」に 2018年5月8日に掲載された「Nationwide increase in cryptorchidism after the Fukushima nuclear accident.」)
 厚労省人口動態調査から全国、福島県、南相馬市の死亡率を検討すると深刻な死亡率の異常増加の事実が認められる(小柴信子及び矢ヶ)。
 その一部を後出の図2(全国、福島県、南相馬市)に示すが、1998年〜2010年の死亡率はほぼ直線的な変化と見做すことができ、その変化を基礎にすると2011年以降の死亡率は全国的に異常に増加する。事故後2011年から2017年の間、予想直線を上回る異常増加死亡数は福島県で11200人(95%信頼区間7710人〜14700人)、全国で276,000人(95% 信頼区間は164,990人〜387,100人)ほどになる。
 なお、2011年の地震津波の関連死は19416人と発表されているが、全国での2011年における死亡者の異常増加分は6万1千人に上り、地震・津波の犠牲者以外に大量の犠牲者が出ている。死因別の死亡率も2011年から急増する。日本全国でお年寄りの老衰死が激増し、アルツハイマー、認知症などの脳神経に関わる死亡率が急増した。異常な死亡率増加は2017年以降さらに上昇する気配を示す。
 危険な放射能環境で開催されることを知らずに日本にやってくる世界の人々は放射線被曝(外部被曝と呼吸と飲食で蒙る内部被曝)に晒される。日本政府と国際原子力ロビーの強行する「知られざる核戦争」の犠牲者を増やしてはならない。世界の市民は日本で進む「知られざる核戦争」:ファシズムの危険を洞察すべきである。

 危険極まりない「復興」「オリンピック」が最大の事故後対策として政治の中心に据えられ、オリンピック競技などが汚染地域で設定される。これが姿を変えた「日本型ファシズム」である。
 このような多数の異常死亡者増が存在することと、東日本における放射能食品汚染が今なお深刻であることと、今なお、メルトダウンした炉心から、空に海に放射能汚染が拡散され続けている事実を正常に受け止めれば、「原子力緊急事態を解くことができない「放射能環境」下で行われるオリンピック日本開催に伴う危険性を世界に警告せざるを得ない。

「日本で生じている健康被害の実態を世界の方々にお知らせしなければならない」と道義的に強く思うのである。


第1部放射能被害の現状

§2 日本の放射能汚染の危険な現状(1)―食糧汚染と死亡率―


図1 日本の食品汚染の現状(厚労省測定:2017年 ホワイトフード地図化)東日本全域が危険域



図2 全国、福島県、南相馬市の死亡率
2011年〜2017年の異常死亡者増は福島県で1万2千人程。全国で29万人程になる。

 図1には2017年上半期の厚労省測定、ホワイトフード地図化による食品放射能汚染地図を示す(https://news.whitefood.co.jp/news/foodmap/8295/)。ホワイトフードHPにはこう書かれている:「検出限界値の平均は22.7Bq/kg。 検出限界値がとても高いにもかかわらず、計2,781検体から放射能が検出され、国の基準値100Bq/kgを超える放射性物質を検出した食品だけでも110検体に及んだ」。より健康を重視した基準1Bq/kg程度を検出目標とするならば(ホワイトフードは最も厳しい基準値として0.5Bq/kgとしている)、夥しい数の食品汚染が報告されるはずだ。この状況は現在も基本的に同じである。

表1 福島県及び全国の2011年以降の異常増加死亡者数


 表1の「実際値」は厚労省人口動態調査の値、「推定値」は1998年〜2010年の直線近似式を2011年以降に外装してそれぞれの年の原発事故等の外因が無いとした場合の予想値である。「異常増加量」は実際量と推定値の差。「95%信頼区間」は標準偏差をσとして±2σの値を用いた。いずれも2011年以降の「異常増加」は有意である。

 食糧制限に関し、政府は「基準値100Bq/kg以下は安全である」と言う。これは明確な虚偽である。食品放射能基準は「社会的・経済的基準」である。汚染された食品を食することによる内部被曝は必ずリスクを伴う。食品放射能基準は「リスクはあるが、流通させざるを得ないので承知してくれ」と言うべきものである。故に、多くの国は異常事態時と通常時の2重の基準を持っている。日本政府は他国の異常事態時の基準と比較して「日本は世界で一番厳しい基準を持つ」などとする(環境庁「放射線のホント」)。ここでも日本政府のファシズムの手口が人々の判断を狂わしている。
 今日本の政府に求められる政策は「汚染地内の農民にも、汚染地外の消費者にもともに危険を知らせ、被曝を避ける最大限の防護柵を講じる」ことである。被災者同士の「汚染地農民」対「全国消費者」の利害相反のたたかいとしてはならない。ともに図2に示す異常(放射能に起因すると考えられる)死亡者多数の現実を率直に認め、共に「命どぅ宝」:人格権に基づくともに手を携えた連帯を示さなければならない。これがファシズムとたたかう民の力となる。
 図2は1998年から2017年まで(20年間)の全国、福島県、南相馬市の総死亡率の年次変化である(南相馬市は2010年以降)。死亡率分析の基礎となるデータは、
日本人口は総務省総計局:https://www.stat.go.jp/data/jinsui/new.html
死亡率は厚労省人口動態調査、総務省統計局:https://www.stat.go.jp/data/jinsui/new.html
政府統計の総合窓口:https://www.e-stat.go.jp/
福島県人口、南相馬市人口死亡数は福島県HP:https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/11045b/16890.html
に拠った。参考にすべき統計は、小柴信子: https://yahoo.jp/box/aPQLvUhttps://yahoo.jp/box/7aVNQ1
参考にすべき論述は、矢ヶ克馬:「南相馬市の死亡率増加は「帰還」の危険性を物語るのか?」
https://www.sting-wl.com/yagasakikatsuma30.html である。
 このグラフは福島原発事故以後の極めて深刻な異常な死亡率増加を示している。

<福島県と全国の死亡率>
 図2の直線は1998年から2010年までの死亡率年次変化を直線近似したもので、上の直線は福島県、下の直線は全国の死亡率年次変化の近似直線である。近似直線は最小二乗法で求めた。図で分かるように福島県、全国の場合ともに、2010年以前の死亡率は直線により概略近似できる。
 少子高齢化の傾向が2010年以前の直線変化に現れていると仮定すると、福島県の2011年以降の死亡率は少子高齢化傾向を大幅に上回り異常に増加している。異常値の予想からのずれを異常増加死者数とすると、異常増加数を表1に示す。
 2011年〜2017年の7年間の異常増加死亡者数は福島県で11207人(95%信頼区間7714人〜14700人)、全国で276,048人(95% 信頼区間は164,991人〜387,104人)である。
 この異常死亡増加数は2011年以降記録される。周産期死亡、乳児先天的奇形(複雑心奇形、停留精巣)の2011年以降の増加と合わせて考慮すると、これらは強い蓋然性を持って主として「放射能に依存する」と推定される。2012年以降年々の通常死亡率(2010年以前の直線外挿値)からの異常増加はほぼ5%程度である。
 さらに2011年の突出的死亡増を検討すると、福島県では地震津波関連死1607人、行方不明207人 とされている(警視庁資料)ところ、上記異常増加死者数は4016人と計算され、地震津波関連死のおよそ2.5倍の死亡者異常増が浮かび上がる。
 南相馬市立総合病院副院長(元)の及川友好医師が2013年5月8日、衆議院の東日本大震災復興特別委員会に参考人として出席し、原発事故後の患者の健康管理などについての現状報告の中で明らかにしたことは「まだ暫定的ではあるが、恐ろしいデータが出てきています」「われわれの地域での脳卒中発症率が65歳以上で約1.4倍、35歳から64歳までの壮年期では3.4倍に上がっている」と公表した(衆議院インターネット審議中継)。これは氷山の一角とみられるがこのように急増した疾患の死者が上記異常増加死者数の内容となると推察される。放射能の直接害に加えて避難など災害下のストレスが相乗作用する。
 同様に2011年から2017年までの全国の異常増加死亡者数(一番下のプロット)は、上記同様に算出するとおよそ29万人に上り、巨大な異常死者数になる。周産期死亡率や乳児の先天的奇形の発生と全国分布は放射能の関連性を強く示唆するものであるが、同様にこれらの異常増加死亡数も放射能関連死と強く推察される。

<南相馬市死亡率は早すぎる「帰還」・「復興」の危険を物語る>
 南相馬市立総合病院のHPに院長及川友好氏のあいさつがあるが、その中に次のようなくだりがある。
2011年3月11日の東日本大震災、その後の原発事故により、南相馬市の人口は一時7万人から1万人以下に減少しました。平成27年10月現在、6万4千人(うち震災以前からの市民は4万8千人)まで回復していますが・・・。」 南相馬市の実人口は2011年には1万人以下にまで減少し(90%ほどの市民がいったん避難し)、2015年には6万4千人まで回復していると述べている。
 南相馬市は「帰還困難区域」を地域内に抱え多くの市民が避難しその後帰還した自治体である。
 図2の南相馬市の死亡率はあくまで住民票登録数に基づくものであり、市外に避難している人を含む数値なのである。
 図2中の最も上のプロットで示す南相馬市の死亡率は2014年までは福島県の死亡率とほぼ同じであるが、2015年で急増している。放射能の健康被害は直ぐ現れるものとある程度期間が経ってから現れるものがあることはよく知られているところだが、グラフに現れているこの死亡率急増は実人口の変化を考慮すると、いったん避難した人の半数以上の市民が南相馬市に帰還した後で死亡率が急上昇していることを示す。
 2011年から2014年までほぼ福島県のそれと同じ期間は、市のほとんどの人が避難しており、南相馬市より放射能汚染の低い土地(福島県内のより汚染が低い場所、あるいは他府県)で暮らしている条件が反映した低い死亡率として理解できる。細かく見ると、2012年と2013年はむしろ福島県より若干低い値を示しており、2014年は福島県と同率となる。その後、2015年〜2017年の死亡率の急増加が記録された。これは今、国や福島県の進めている「帰還」「復興」の危険性とその犯罪性を表す重大証拠となるのである。南相馬の場合だけでなく、他の市町村でも帰還した方にも同じような危険が迫っているのではないか?命を削って「復興」と「帰還」を迫るのは日本政治のファシズム性を良く表しているのではないか?

§3 日本の放射能汚染の危険な現状(2)―乳児死亡と先天的奇形―
(1)周産期死亡
 Scherbらによる(ドイツの放射線防護専門誌「放射線テレックス(2017年2月)(Strahlentelex)」No. 722-723 / 02.2017 http://www.strahlentelex.de/ ) 日本における死産と周産期死亡、乳児死亡−2001年から2015年までのトレンド解析アップデート

 Scherb, H.H., K. Mori,and K. Hayashi, は「Increases in perinatal mortality in prefectures contaminated by the Fukushima nuclear power plant accident in Japan: A spatially stratified longitudinal study.」:Medicine (Baltimore), 2016. 95(38): p. e4958.において初期のデータに基に新しいデータを加え解析している。

 2011年3月に日本を襲った震災と原発事故の被害を受けた都県においては、日本全体では通常早期死亡が減少傾向を示すのに対して、放射能放出後9か月ないし10か月経った後に当該都県の汚染度に応じて早期死亡と周産期死亡が突然約5%から20%、統計上有意な上昇を示し続けた。汚染されていない他の道府県では、このような影響は見られなかった。

 ドイツの放射線防護専門誌「放射線テレックス(2017年2月)
(Strahlentelex)」No. 722-723 / 02.2017 http://www.strahlentelex.de/



図3 汚染された福島県、群馬県、茨城県、岩手県、宮城県、栃木県(6県)の周産期死亡の年次経緯。
地震・津波直後に一時的に上昇し(21.5%上昇)、10か月過ぎて(2012年1月)からは12.0%の死亡率上昇を示す。



図4 中レベルに汚染された千葉県、埼玉県、東京都(3都県)の周産期死亡の年次経緯。
地震・津波直後に一時的に上昇し、10か月過ぎて(2012年1月)からは8.4%の死亡率上昇を示す。



図5 中レベルに汚染された3つの都県(千葉、埼玉、東京)と高レベルに汚染された6つの県
(福島、群馬、茨城、岩手、宮城、栃木)を除いた38道府県における周産期死亡の年次経緯。
死亡率の上昇は観察できない。



図6 図3,4,5に関する上昇オッズ比の自然対数(プラス/マイナス2標準誤差)。


第一原発事故後にバックグラウンド線量が年間約1mSvから2mSvと倍になる傾向があったと推定すると、図3と図6から年間線量1mSv当たりの死産の相対的リスクが、オッズ比:1.12(12%上昇)、95%信頼区間[1.035, 1.209]となることがわかる。汚染された11の都県では2015年までに自然死産で今までより過剰にナクな多乳児は1140人と彼らは報告している。
自然死産率の上昇はチェルノブイリ事故後のヨーロッパでも観測されている。チェルノブイリ原発事故後、バイエルン州では放射性物質の降下量と、死産および先天奇形の間にはっきりした環境上の量反応関係が観察された。
周産期死亡は土地の放射能汚染と相関して生じていることが解明された

(2)先天的奇形
周産期死亡は地域の放射能汚染と明瞭に関連していたが、先天的奇形は2011年ないしは2012年から発生し、土壌汚染程度に依存せず、全国的に展開していることが特徴である。
①複雑心奇形
名古屋市立大学の村瀬らは 「Journal of the American Heart Association」に 2019年3月13日掲載において、
日本胸部外科学会が福島原発事故前から集計している先天性心疾患に関する手術データに着目し、本研究では2007年から2014年までの手術件数を使用して解析を行いました。このデータには、日本における46種類の先天性心疾患に関する手術件数がほぼ全て含まれています。私たちは、心臓の発生の早期段階の障害に起因する、高度な手術治療を必要とする複雑な先天性心疾患(複雑心奇形・29種類)に着目し、事故前後の手術件数の変化を解析しました。・・・
福島原発事故後に14.2%有意に増加したことを確認しました。

と述べている。


図7 複雑心奇形の経年変化 2011年から増加している。


□複雑心奇形(29種類)のうち有意に増加したものは以下の通りである。

表2 心奇形症状別頻度
付記:複雑心奇形(29種類)の中で手術件数が有意に減少したものは無い。
複雑心奇形は広範囲に認められ、全国的展開があることが認められた。

②停留精巣
停留精巣も同様に手術・退院の統計を取った。
名古屋市立大学の村瀬らは
「Urology」に 2018年5月8日に掲載された「Nationwide increase in cryptorchidism after the Fukushima nuclear accident.」
において、震災前後における手術退院件数の変化 として
停留精巣は生後半年以上経過してから診断されることを踏まえると、震災の影響が手術退院件数に主に反映されるのは2012 年度以降であると考えられました。そこで、2010-2015 年度の6年間を集計したデータ(35 県94 病院)において、2010-2011 年度を震災前、2012-2015 年度を震災後として比較すると、13.4%(95%信頼区間:4.7%-23.0%)の有意な増加が認められました(図9、分布図は図10)。2008-2015 年度の8 年間を集計したデータ(25 県40 病院)においても、12.7%(95%信頼区間:2.1%-24.4%)の有意な増加が認められ、6 年間データと 同様の結果となりました。なお、6 年間データについて3 歳未満の推定手術件数を用いた場合は16.9%(95%信頼区間:2.9%-32.4%)の有意な増加と推定されました。
と述べている。
停留精巣の手術は2012年に増加が始まった。この異常増加の始まりは周産期死亡の異常増加の始まりと同じタイミングである。


図8 停留精巣の手術退院件数の推移 (人口1 千万対)

A. 2010-2015 年度 (6 年データ、35 県94 病院)、B. 2008-2015 年度 (8 年データ、25 県40病院)。いずれの場合でも2011 年度と2012 年度の間で増加が認められる。2010 年度は9 ヶ月分の集計、2008 年度及び2009 年度は6 ヶ月分の集計であったため、それぞれ合計件数を4/3 倍あるいは2 倍したものが示されている。

次図に停留精巣の各県別上昇率を示す。左側は各県の増加数を示し、右側は地図による増加数の展開を示す。福島原発事故現場周辺も多いが、増加率の多い県は遠く九州・沖縄地区にもおよび、全国に展開している。
周産期死亡の場合は強汚染地域、中汚染地域、低汚染地域で明瞭に土壌放射能汚染と相関が示され、低汚染地域では異常死亡率増加が認められなかったが、停留精巣の展開は全国に渡っており、周産期某率の分布とは明瞭に異なる。食物の流通による食べての内部被曝が大きな原因とみられる。後述するが、お年寄りの「老衰」死の激増も全国くまなく展開しており内部被曝によると推察される。


図9 停留精巣の手術退院件数の増加率



図10 停留精巣の手術退院件数の増加率の分布

彼らは「停留精巣のリスクファクターである低出生体重児や早期産の割合は調査期間中においてはほぼ一定であり、原発事故の関与が主要な原因として考えられました。しかしながら、本研究ではそれを証明するには至っていません。」としている。

§4 日本の放射能汚染の危険な現状(3)―精神神経系死亡・障害と老衰等―
 放射能の脳機能への打撃は大きいことが予想される。
 その根拠は
 ①心臓とともに血液が一番集中する臓器であること。内部被曝の場合、水溶性放射性物質と微小な放射性微粒子は血液などに乗って全身を循環することとなるが、血液が集中する心臓や脳に対する被曝が大きい。
 ②脳組織は新陳代謝が非常に少ないと言われているが、脳神経組織に電離・分子切断が生じると蓄積効果となって現れる。
 ③腸内優勢細菌バクテロイデスとアルツハイマーなどの相関が指摘されているが、放射線が活性酸素を生成し、嫌気性菌であるバクトロイズムの活性状態に影響を与えると生命組織の相互依存で脳神経組織の伝達機構などに影響を与え、脳神経系の疾患や死亡率が増大すると予想される。「お年寄りは放射能に影響されない」などの俗論があるが、逆に一番影響される年令帯ではないかと危惧される。免疫力や体力に脆さがあるとされるお年寄りが被曝した場合に、被曝は総合的に体力や免疫力を弱めるので、多大な死亡率増加などが予想される。そこでこれらに関するデータを収集した。


図11 アルツハイマー死亡率―秋田県、福島県、東京都、京都府、鹿児島県及び沖縄県



図12 認知症死亡率 秋田県、福島県、東京都、京都府、鹿児島県及び沖縄県

 図11に見るようにアルツハイマーの死亡率は図2に示した総死亡率と同様に2011年から異常増加を示す。
 直線は2010年以前の変化の近似直線である。2010年以前の死亡率の大きさは北に行く(寒さが厳しい)ほど大きくなる傾向があるが、一意的変化ではない。異常増加の大きさは福島事故原発からの距離には依存していない。被曝では食糧流通による内部被曝が地理的距離に依存しないことと、気候的影響などについて知見を得なければならない。図12は認知症の死亡率である。アルツハイマーと同様な傾向がある。


図13 福島県における特別支援学級児童数と全児童数の変化



図14 特別支援学級児童数の全生徒に対する割合

 図13と図14は福島県における特別支援学級の児童に関するデータである(高崎朋子氏の収集による)。図13からは全児童数は減少傾向が一貫し、特別支援学級児童数は増加傾向が一貫している。特に地震・津波・原発事故の発生した2011年以降の変化が増大している。図4は特別支援学級の知的障害、自閉症・情緒障害及び総数の全児童に対する割合の年変化を示す。いずれも2010年以前は非常に良い直線的変化を示しているが2011年以降急増を示している。


図15 老衰による死亡率変化(秋田県、福島県、東京都、鹿児島県及び沖縄県)



図16 難病登録数の年次変化

 図15は老衰によるお年寄りの死亡率の変化である。前記のいくつかの死亡率と同様、2011年でそれ以前の死亡率変化を大きく上回る増加を示している。2011年を境に急増しているのである。俗論の「お年寄りは放射能に影響されない」は誤りであり、事実はその逆であることを示すのではないか。

 図16は難病の登録された人数の変化である(国立難病情報センター)。2009年以来指定難病数は変わっていない。2011年で急増して変化傾向は2010年以前と別のブランチを形成する。ここでは難病のみを取り扱うが、多くの疾病患者数が2011年以前より異常増加している。


第2部 知られざる核戦争―市民に苦難が押し付けられているー

§5福島被曝――史上初の異常被曝環境
 強調すべきは「高汚染と政治的虚偽に満ちた強制被曝状況」で住民が苦しんでいることだ。
<1>チェルノブイリより深刻な被曝状況
 チェルノブイリでは年間1ミリシーベルト以上では当該政府が「ここは危険です。移住を希望する人が有れば政府が面倒を見ます」、5ミリシーベルト以上では「ここには住んではいけません。生産もしてはなりません」と、文字通りの放射線防護の基本線に沿った住民保護を行った。33年経った今でも子供の保養などを筆頭に市民生活が被曝から保護されている。
 これに反し日本では、チェルノブイリで「チェルノブイリ法」が施行された事故後5年で、「避難指示区域」などの縮小削減が始まり「指示区域外避難者」への住宅供与が停止された。法律で規定されている保護基準の年間1ミリシーベルトは「原子力緊急事態宣言」で無視:捨て去られ、それより20倍も高い20ミリシーベルト基準で規制が行われている。「復興」、「オリンピック」はこの状態:「原子力緊急事態宣言」を発したままの状態で猪突する(猪に申し訳ない表現であるが)。
 チェルノブイリを上回る日本独自の被曝の拡大再生産のしかけ がいくつか生じた。
①その一つはチェルノブイリでは年間5ミリシーベルト以上の汚染地では居住も生産も禁止されたが、日本ではその汚染地域で20ミリシーベルトまでの地域に大量(百万人に達する)の住民が住み、食料を生産し、「売らなければ食っていけない」状況に追い込まれた。そのために、チェルノブイリになかった「汚染地での生産」による被曝の拡大再生産が展開した。食料放射能汚染による内部被曝の全国拡散が日本独特の悲惨な被曝状況を作った。政府は世界の科学的確認事項に反する虚偽「健康被害は無い」を大宣伝し、全住民の被曝強制である「食べて応援」を大キャンペーンし、民間もそれに呼応し「食べて応援」の被曝るつぼが展開した。この際、いわゆる「専門家」、大手マスコミなどの、アベ虚偽政治を拡大する犇力“がなされた。重大な「未必の殺人」への共犯である。
②第2の特徴は、住み続ける条件として行った居住地周辺「除染」の結果集積された大量の「除染廃棄土」が生じてしまった。「除染廃棄土」を政府は公共事業等への再利用で全国に拡散して減少させようとしている。政府はオリンピックのために汚染土入りフレコンバック集積の異常光景を外国客に見せないために強行の度を上げている。放射の汚染処理の原則に違反し汚染土を全国に拡散させようというわけだ。2次被曝を全国に拡散する。
③第三の日本の特徴といえるのは、チェルノブイリでは事故後7か月で石棺により基本的には放射能物質の環境への拡散は極力抑えられが、日本では大量の地下水により汚染水が海に放出し続け、空中への放射能放出も深刻に続いている。メルトダウン炉の封じ込めに成功していず、生活環境と自然環境を汚染し続けている。
④国際原子力ロビーは次の原発事故が生じた場合「住民はリスクを受ける用意があり、汚染地で永住することを望んでいる(1956年IAEA会議)」として「避難や移住を避ける」方針を打ち出したが、その具体策がICRPによっても明確に打ち出された直後に東電事故が生じた。「知られざる核戦争」の実態は、住民を高汚染地域にとどめ置き、健康被害の事実を認めず、したがって住民への健康保護施策を全く欠き、逆に被曝を強制する。これは農民などの「先祖伝来の土地を守りたい」願望に付け込んで適用された。騙しにもちいられた「放射能は健康被害を産まない」キャンペーンは未必の殺人行為である。

<2>日本政府の異常な放射線被ばく対策
――首相の「虚言」が全ての政治・行政の出発点――
 安倍首相は東京オリンピック招致に際し記者会見において、汚染水問題等原発事故の収束状態を聞かれ、「まず、健康に対する問題は、今までも、現在も、これからも全くないということははっきりと申し上げておきたいと思います。」と宣言した(2013年9月7日、
https://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/0907argentine_naigai.html)。
 首相の虚偽に基づく言明の後の施策は、全官庁あげて「風評払拭リスクコミュニケーション強化」運動として現れている。健康被害防止に万全を尽くすのではなく、「健康被害が無いように見せる・思わせる」ことに最大重点を置いて住民の放射線警戒心を解除して強制被曝させているのが実態である。「放射能被害の懸念が全く無い」ことを大キャンペーンして、「知ってもらう、食べてもらう、来てもらう」のスローガンで官民の大運動を展開する。
 政府筋発行の「放射能のホント」(復興庁)、「放射能副読本」(文科省:小・中・高校生対象)には原発事故後の健康被害は全くないという事実無根が述べられ、「放射能に危険はない」ことが強調されている。既に小児甲状腺がんの大量発生があり、「原発事故に関係するとは証明されていない」という体制側からの論が、本来あるべき「予防医学的」な放射線防護政策を妨げている。

(虚言の内容)
(1)放射線による健康被害は一切無い

ICRPでさえ、確率的影響のリスクは低線量まであるとしている:「直線的閾値無しモデル」が国際的に認められている」としているにもかかわらず、日本独特の理論「健康被害は一切無い」虚構を大宣伝する。

(2)100ミリシーベルト以下は安全

これも日本独自に虚構理論である。ICRPは「約100ミリグレイ(低LET放射線または高LET放射線)までの吸収線量域ではどの組織も臨床的には意味のある機能障害を示すとは判断されない」などとしているが、日本では「機能障害を示すとは判断されない」を「機能障害は無い」と言い換え、しかも確率的影響にまで拡大して適用している。日本の虚構理論の根拠としている山下グループの実験はICRPが吸収線量を照射線量で置き換えるという彼らの定義を無視して物理量を扱っていることに根拠を持つ間違いである。彼らの結論「100mGyまでは安全(DNAの損傷は残らない)」は、「吸収線量」と照射線量の区別を明確にし、ICRPの行っている吸収線量定義(ICRP自体が定義を無視しているのだが)に従えば、「2mGyに満たない吸収線量でDNA損傷が残存する」と結論すべきものである。100mSv 以下は安全」など全く科学的根拠は無く、良くぞここまで嘘が吐けたな!という代物である。


<3>コントロールされたマスコミ
 現在の日本のマスコミからは「放射能」の用語はほとんど使用されなくなっている。8周年の報道も大手マスコミは「放射能」の用語を抹殺し、その被害の可能性は毫も語っていない。代って「風評被害」だ。「復興」、「帰還」という言葉で満ちあふれ、あまりにも早すぎる「復興オリンピック」の無謀さに警告することなど、報道機関の客観性人道性の発揮は期待しようが無い。日本型ファシズムの一端である。

<4>「子ども被災者支援法」はまさにアリバイ作り:実効性皆無
 日本では「子ども避難者支援法」と呼ばれている住民保護が謳われた法律が成立した。しかし実態はことごとく政府の「基本方針」で骨抜きにされている。チェルノブイリ法は住民を保護する精神で作られた法律だが、事故後5年目に成立した。同じ事故後5年目で日本は「帰還制限区域」などを縮小し、避難者の住宅支援を停止した。避難者の糧道を絶つことで帰還を促し、早すぎる「復興」を強制する。汚染地域内住民の置かれた悲惨な状況を隠ぺいし、避難者の意志に関わりなく住宅支援を停止し、放射能の危険を隠して「復興オリンピック」が強行されている。ここに巨大な原発事故処理の日本の特殊性が出ている。住民保護ではなく日本市民・世界市民を棄民する壁だ。

§6 知られざる核戦争(1)―歴史―
<1>原爆投下前後
1945年7月17日-8月2日

アメリカはポツダム会談の最中に原子爆弾第 1号(トリニティ)の爆発実験に成功し,この巨大な爆発力と原子力が戦後世界の覇権の決め手になることを確信する。

1945年8月6日 広島にウラン爆弾投下
1945年8月9日 長崎にプルトニウム爆弾投下
1945年9月2日 ミズリー号艦上で日本の降伏文書調印

降伏文書調印式の機会に乗じて数人のジャーナリストが広島と長崎を訪問した。 9月3日にウィルフレッド・バーチェット,ウィリアムス・H・ローレンス記者 広島を取材。
ウィルフレッド・バーチェット 5日付け『ロンドンデイリー・エクスプレス』に,「原爆の災疫――私は,世界への警告として,これを書く――医師たちは働きながら倒れる 毒ガスの恐怖――全員マスクをかぶる」と題した記事には「最初の原爆が都市を破壊し,世界を驚かせた30日後も,広島では人々が,あのような惨禍によって怪我を受けなかった人々でも,『原爆病』としか言いようのない未知の理由によって,いまだに不可解かつ悲惨にも亡くなり続けている」と記す。
ウィリアムス・H・ローレンスは 5日付『ニューヨーク・タイムズ』に,
原爆によって4平方マイルは見る影もなく破壊しつくされていた。人々は1日に100人の割合で死んでいると報告されている」と記す。
このような原爆投下の悲惨な状況が世界に伝わると大きな反響が広がり始めた。

1945年9月6日
 マンハッタン管区調査団の指揮官トーマス・ファーレル准将 が東京で記者会見。

「広島・長崎では,死ぬべき者は死んでしまい,9月上旬現在において,原爆放射能で苦しんでいる者は皆無だ」
「残留放射能の危険を取り除くために,相当の高度で爆発させたため,広島には原爆放射能が存在し得ず,もし,いま現に亡くなっている者があるとすれば,それは残留放射能によるものではなく,原爆投下時に受けた被害のため以外あり得ない」
(広島ジャーナリストHP)

1945年9月8日
 マンハッタン計画最高責任者:グローブス准将,トリニティー核実験現場に記者カメラマンを案内。

グローブス「トリニティーの残留放射能は広島・長崎よりずっと低空で爆発したせいだ。」
「日本の死者の一部は放射能が原因だろうが,その数は相当少ない」

科学者としてマンハッタン計画を主導したオッペンハイマー 「爆発の高度は,地面の放射能汚染により間接的な化学戦争にならないよう,また,通常爆発と同じ被害しか出ないよう念入りに計算してあります」。
「爆発から1時間もすれば救援隊が町に入っても大丈夫です」
。(プルトニウムファイル p117)

1945年9月8日
 計画の医学面を担当したウォーレンら,マンハッタン管区医学調査団が広島入り。

ウォーレンの任務は負傷者の治療ではなかった。原子爆弾が放射能を残したかどうかだ。
調査 団員ドナルド・コリンズ 「自分たちはグローブスの主席補佐 トマス・F ・ファレルから,『原子爆弾の放射能が残っていないと証明するよう』言いつかっていた」と打ち明ける。 (プルトニウムファイル p119)


1945年9月22日

アメリカ軍の合同調査団 (〜1946年頃まで活動)

合同調査団は,連合国軍最高司令官総司令部軍医団(団長アメリカ太平洋軍顧問軍医アシュレー・オーターソン(全代表))・マンハッタン管区調査団(団長アメリカ陸軍大佐トーマス・ファーレル)・日本側研究班(班長都築正男)の3者で構成。

 アメリカ軍の合同調査団は放射線急性障害などを調査した。
 そこで引き出された結論は
   (1)放射線急性死にはしきい値が存在し,その値は1 シーベルト。
   (2)放射線障害にもしきい値が存在し,250 ミリシーベルト。
   (3)それ以下の被爆なら人体には何らの影響も生じない。
 というものであった。

 しかも,これらのしきい値は1945 年の9 月はじめまでの急性死を対象として引き出されたもので,10 月から12 月までの大量な急性死は除外されていた。
 被爆者が示した急性症状は脱毛,皮膚出血班(紫斑),口内炎,歯茎からの出血,下痢,食欲不振,悪心,嘔吐,倦怠感,発熱,出血等である。しかし米軍合同調査団は脱毛,紫斑,口内炎のみを放射線急性障害と定義した。
 脱毛,紫斑,口内炎が2km を過ぎたあたりから急減するという結果を,「放射線急性障害は,2km 以内に見られる特有のもの」とした。米軍は核戦略上の必要性のために,放射性降下物による被害を世界に知らせない目的で好都合な事実だけを集めた。


1945年9月27日 ファーレル グローブスに宛て覚書

「原子爆弾の報告」 (『米軍資料原爆投下の経緯』東方出版 1996奥住喜重・工藤洋三訳 資料 E,ファーレル准将の覚書,p.141〜)。

この「覚書』の注目点は,主たる死傷の原因は爆風,飛散物,および火による直接の ものであること,残留放射能がないことの2つを強調している「われわれの科学上の要員によって,何らかの放射能が存在するかどうか,詳しい測定が行われた。地上,街路,灰その他の資料にも,何も検出されなかった」。 (米軍資料原爆投下の経緯 p149)


 ウォーレン

 上院特別委員会で証言したときは,放射能による死者 は全体のわずか 5-7%だと見積り,「放射能は誇張されすぎ」と述べている(プルトニウムファイル p120)。
 原子爆弾の被害を,巨大な爆発力と熱線による火災と火傷による被害と説明し,原子爆弾を「通常爆弾」の大規模なものと規定した。
まず広島について。
 日本とアメリカで報道された話に,疎開を応援するために地域に入った 人々が死傷したというのがある。真相は,爆撃以前に発せられていた疎 開命令を実行するために広島に入っていた疎開要員が爆弾の爆発に巻きこまれて多くの死傷者がでたということである。 (米軍資料原爆投下の経緯 p148)
ついで長崎について。
 日本の公式報告は,爆発後に外部から爆心地に入った者で発病した者 はいないと述べている。 (米軍資料原爆投下の経緯p150)


1945年 11月 28日

マンハッタン計画の総責任者であったグローブスが,上院原子力特別委員会でまず最初に受けた質問は,原子爆弾が日本に放射能を残したかどうかである。グローブスは断固として答えた。
ありません。きっぱり「ゼロ」でした」。 ( プルトニウム・ファイル』上 p124)


1945年までの 総括

 アメリカの政府一軍部の核兵器に関する公式見解
原子爆弾の放射能の影響 をできるだけ過小評価するもの,ことに放射能の持続的影響を無視できるとするものであった。

1.原爆のTNT火薬何万トン相当の爆発力というような,従来型爆薬か ら類推できる兵器性能を強調する。
2. 熱線・光線による高温は,“地上に出現する太陽"といわれすべてのものを蒸発させ焼きつくす。火災・火傷による被害が甚大である。これ は爆発の瞬間に現れるが,物陰に隠れていれば避けられる,というような面を強調する。
3. 爆発当初の強いガンマ線の威力は強調するが,中性子による環境の放射能化は言わない。“死の灰"はまき散らされて薄まり,残留放射能はないとする。

TNT火薬何トン分という爆発力をできるだけ強調すること,
ついで原爆の熱線や光線は物陰に隠れたり,伏せていれば避けられるという 宣伝を盛んにした。放射能の影響は直ぐ消滅することを強調し原爆投下まもなくでも,爆心地へ入ることができるということを公式見解として盛んに宣伝した。
(「内部被ばく」について(その4):
http://www.ne.jp/asahi/kibono/sumika/kibo/note/naibuhibaku/naibuhibaku1.htm


<2>戦後の展開
1946年 被爆者をモルモットにしたABCC 設立
1947年3月 原爆傷害調査委員会(ABCC)開設
 ABCC は「調査はすれども治療せず」という被害者をモルモットにする残虐な対応をしたことで知られているが,彼らは原爆被害をありのままに調査する視点は持っていなかった。ABCC は学術組織である全米科学アカデミー・学術会議を形の上では母体としながら,米軍合同調査団の調査目的とメンバーをそのまま受け継ぎ,「合衆国にとって最も重要である,放射線の医学的・生物学的影響についての研究にかけがえのない機会を提供する機関」として発足したのである。
 もし軍事目的でなく,ありのままに原爆放射線被害を調査するのならば,科学研究にふさわしく,客観的外界を忠実に調査し,誠実に結果をまとめなければならない。急性症状には,脱毛,皮膚出血班(紫斑),口内炎,歯茎からの出血,下痢,食欲不振,悪心,嘔吐,倦怠感,発熱,出血等があった。それらの分布を正直に調査しなければいけない。なぜ,2km 以内は急性症状が放射線と関わりを持つとしながら,「それ以遠の症状は放射線との関わりがない」ものとしてはじめから断定しなければならなかったのか?科学的見地からは回答が出るはずがない。ABCC は「有意な線量」(初期放射線による被ばく)を浴びた被爆者と比較対照するべきものとして,2km 以遠で被ばくした「被爆者」を「非被爆者」として選んだのである。この際,原爆以前の広島市民の白血病死亡率が全国平均の約半分の低さであることなど,巧みに隠して,白血病死亡率が全国的レベルになるという増加を隠ぺいしているのである。ABCC は事実を見ないで核戦略にそう評価をした。ABCC が真摯に科学的な姿勢をとるならば,被ばく影響領域を自ら調査して決めるべきなのに,核戦略上に必要性から名目的に調査」し,ファーレル言明を事実をゆがめることによりフォローした米軍合同調査団の結論に従ったのは,はじめから軍事機関であり,専門的技術はそのための手段にすぎなかったからなのだ。ファーレルの9 月6 日に「言明」した「広島・長崎では,死ぬべきものは死んでしまい,原爆放射能のために苦しんでいるものは皆無だ」という枠内にデータを強制的に整える軍事に依る「科学」支配が行われたのである。

1957年 「原子爆弾被爆者の医療等に関する法律」を制定。
 この法律において,内部被曝は無視できるとするアメリカの基準をそのまま採用。
 法律で定められた被爆者の定義は第一条に定められているが,その精神は,3 号に記述される。
「原子爆弾が投下された際又はその後において,身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」とみなされる。
 具体的条件は「政令で定める」とされているが,この内容は,基本的に1945 年に米軍合同調査団が定めた「2km 以内」,「2 週間以内」というものである。この根拠は科学的な被ばく線量評価から帰結したものでは無い。
さらに,
 第七条 「原子爆弾の傷害作用に起因して負傷し,又は疾病にかかり,現に医療を要する状態にある被爆者に対し,必要な医療の給付を行う。ただし,当該負傷又は疾病が原子爆弾の放射能に起因するものでないときは,その者の治ゆ能力が原子爆弾の放射能の影響を受けているため現に医療を要する状態にある場合に限る。」とする規定から内部被曝を除外した。

1986年になってようやくDS86 第6章として残留放射線の評価が公表されるのだが,放射性降下物の評価に関連して記述されているデータは全て巨大台風の枕崎台風の襲来した後の調査によるものである。特記すべきは残留放射能の評価は唯一DS86でなされただけである。
 枕崎台風は大洪水がもたらされた広島だけ襲ったのではなく長崎をも襲い大量で強烈な雨風を伴っている。いずれも土壌に残留していた放射性物質を洗い流し,海に運んだ。他方,放射性降下物の線量評価に関わる測定は,一番早い測定で長崎は被爆後48日,広島は49 日で,いずれも台風襲来後なのである。台風襲来後の測定では原爆によりもたらされた残留放射能の現場保存がなされていず,線量評価に不適なデータを米軍は収集させた。この現場保存がなされていないことはDS86 第6章では「風の影響あり」と,台風の影響を認めているのであるが,全体の結論を記述するDS86「総括」の項では,決定的に「雨風の影響はない」と結論を押しつけている。これは明白に科学の倫理違反である。当然この文書による残留放射能評価は現実を反映していない。

1968年,日米両国政府が国連に共同提出した「廣島・長埼原爆の医学的被害報告」においては,「原爆被害者は死ぬべきものはすべて死亡し,現在,病人は一人もいない」としている。

<3>国際原子力ロビーの歴史的動き
 国際原子力ロビー:IAEA, UNSCEAR、ICRP の前2者は全て核推進の立場にある国の政府により推薦される者を委員とし、最後のICRPは原子力推進を立場とする各国の政府資金と原子力産業の資金により運営される民間団であり、共通して特徴とすべきは、これら委員会はいずれも放射線被曝被害を客観的に論じたり住民のそれからの保護を名目とする活動をしているが、全ての委員は利益相反の関係にある。ベイヴァースロックは「密猟者と猟場管理人と同一人物である」と表現する(福島原発事故に関する「UNSCEAR2013年報告書」に対する批判的検証、科学1175(2014)
https://www.iwanami.co.jp/kagaku/Kagaku_201411_Baverstock_r.pdf))。
 例えばICRPは「放射線防護」をタイトルとしているが、常に核推進の立場と時代時代の反核運動・放射線防護の国際的見識の間を揺れ動き、科学的・人道的基準ではなく、「社会的・経済的基準」に堕さざるを得なかった。ここに「社会的・経済的」とは国際原子力ロビーの特殊用語であり、「核推進の政府の都合の良いように」、「政府と核産業に過大な負担を掛けないように」という内容の粉飾表現である。
 IAEAは1996年の「チェルノブイリ10年‐事故結果をまとめる」(ONE DECADE AFTER CHERNOBYL Summing up the Consequences of the Accident, Proceedings of an International Conference Vienna, 8-12 April 1996)、においてチェルノブイリの次のアクシデントが生じた場合の新方針を打ち出した。住民は毎日の放射線リスクを受け入れる用意がある」、「介入という範疇で規制される古典的放射線防護は複雑な社会的問題を解決するためには不十分である。住民が汚染された地域に永住することを前提に心理学的な状況にも責任を持つために、新しい枠組みを作り上げねばならないとして、チェルノブイリの次のアクシデントが生じた場合の新方針が打ち出された。その内容は、住民保護の観点から施行されたチェルノブイリ法に基づく「避難・移住」を否定し、情報統制と専門家・医師らの統制が必要なことだった。
 それを受けてICRPは2007年勧告において、新線量区分体系を具体化し、緊急時において年間20ミリシーベルトから100ミリシリーベルトに及ぶ大量被ばくを住民に及ぼし得る具体策を提案した。
 それは「住民を保護する立場」ではなく国際原子力ロビーの都合から見た棄民策適用である。「事故はつきものだから住民は被曝を受け入れよ」という原発産業の開き直りである。
 その直後に東電福島事故が生じた。悲しいかな、IAEA、ICRPに具体化された国際原子力ロビーの通りの方針が日本の事故に適用された。
 それに日本政府独特の住民「愚民視」と虚偽による「住民の洗脳」が加わる過酷な政治である「知られざる核戦争:日本ファシズム版」が展開した。

 下記にICRPの歴史的重要ポイントをピックアップしたが、ICRPは時には国際的な核兵器廃絶運動に押されて防護基準を厳しくするようなこともあったが、委員会が核戦略「知られざる核戦争」遂行上の任務を明確に帯びていたことを歴史は示している。すでに1977年のICRP勧告は「防護の3原則」――①行為の正当化、②防護の最適化、③個人の線量限度設定――を導入し、功利主義を剥き出しにしていた。防護の第1原則ではリスクより「公益」(核・原発関連企業や軍閥の利益)が多ければ、リスク:被ばく者に死をもたらす営業活動が「正当化」できると主張する。第2・第3原則は防護も国と産業の経済的負担を考慮して「ほどほどに」という住民の被曝防護も安くつく枠内に留めよという主張である。
(若干のICRP歴史)
1950年  ICRP発足 米国内放射線防護委員をほぼそっくりICRP委員とした。
1951年  内部被曝委員会封鎖 内部被曝を科学的・道義的に探究したのでは「社会的・経済的」基準には達し
       えないことを認知し、委員会を封鎖した。
1954年  ICRP勧告「被曝を可能な最低レベルまで引き下げるあらゆる努力を払うべき」
       As Low As Possible ここではまだ人道的立場を表す表現をしている。
1959年  リスクベネフィット論(人権を経済活動の下位に置く)ICRP勧告「実際的に可能な限り低く維持する」
1966年  容易に達成可能な限り低く維持する(ALARA:As Low As Readily Achievable)
1970年  原子力委員会 コストベネフィット論(命の金勘定)
1973年  ICRP勧告 経済的及び社会的な考慮を行った上で合理的に達成可能な限り低く維持する
       (ALARA:As Low As Reasonably Achievable)
1977年  ICRP勧告 防護の3原則導入 【1】行為の正当化、【2】防護の最適化、【3】個人の線量限度設定
       功利主義を剥き出しにし、第1原則ではリスクより公益が多ければ、被ばく者にリスク:死をもたらす
       営業活動が「正当化」できると主張する。
       第2、第3原則は防護も国と産業の経済的負担を考慮してほどほどに、という住民の被曝防護も
       安くつくうちに留めよ 、という主張である。
2007年  ALARAを原発事故の時にまで適用
       住民が強制される年間被曝線量を20〜100ミリシーベルトにまで公然と拡大する道を明示した。

特にIAEAは1996年に行ったチェルノブイリ会議のまとめで「住民は毎日の放射線リスクを受け入れる用意がある」、「介入という範疇で規制される古典的放射線防護は複雑な社会的問題を解決するためには不十分である。住民が汚染された地域に永住することを前提に心理学的な環境にも責任を持つために、新しい枠組みを作り上げねばならない」としている。
その開き直った「社会的・経済的」原則に基づいて事故を起こした際の被曝防護量(本質は被曝を強制できる限度)をそれ以前の公衆に対する年間1ミリシーベルトを大幅に引き上げる「国際的お墨付き」をICRP2007年勧告で行ったのである。
このように国際原子力ロビーが、次の原発事故に際しては、チェルノブイリで住民保護法である「チェルノブイリ法」を施行させた二の轍を踏ませないように、準備万端整えたところに、東電福島事故が生じたのである。


§7 知られざる核戦争(2)−国際原子力ロビーの役割―
 国際原子力ロビー:IAEA, UNSCEAR、ICRP の前2者は全て核推進の立場にある国の政府により推薦される者を委員とし、最後のICRPは原子力推進を立場とする各国の政府資金と原子力産業の資金により運営される民間団であり、共通して特徴とすべきは、これら委員会はいずれも放射線被曝被害を客観的に論じたり住民のそれからの保護を名目とする活動をしているが、全ての委員は利益相反の関係にある。ベイヴァースロックは「密猟者と猟場管理人と同一人物である」と表現する(福島原発事故に関する「UNSCEAR2013年報告書」に対する批判的検証、科学1175(2014)
https://www.iwanami.co.jp/kagaku/Kagaku_201411_Baverstock_r.pdf)。
 例えばICRPは「放射線防護」をタイトルとしているが、常に核推進の立場と時代時代の反核運動・放射線防護の国際的見識の間を揺れ動き、科学的・人道的基準ではなく、「社会的・経済的基準」に堕さざるを得なかった。ここに「社会的・経済的」とは国際原子力ロビーの特殊用語であり、「核推進の政府の都合の良いように」、「政府と核産業に過大な負担を掛けないように」という内容の粉飾表現である。
 IAEAは1996年の「チェルノブイリ10年‐事故結果をまとめる」(ONE DECADE AFTER CHERNOBYL Summing up the Consequences of the Accident, Proceedings of an International Conference Vienna, 8-12 April 1996)、においてチェルノブイリの次のアクシデントが生じた場合の新方針を打ち出した。住民は毎日の放射線リスクを受け入れる用意がある」、「介入という範疇で規制される古典的放射線防護は複雑な社会的問題を解決するためには不十分である。住民が汚染された地域に永住することを前提に心理学的な状況にも責任を持つために、新しい枠組みを作り上げねばならないとして、チェルノブイリの次のアクシデントが生じた場合の新方針が打ち出された。その内容は、住民保護の観点から施行されたチェルノブイリ法に基づく「避難・移住」を否定し、情報統制と専門家・医師らの統制が必要なことだった。
 それを受けてICRPは2007年勧告において、新線量区分体系を具体化し、緊急時において年間20ミリシーベルトから100ミリシリーベルトに及ぶ大量被ばくを住民に及ぼし得る具体策を提案した。
 それは「住民を保護する立場」ではなく国際原子力ロビーの都合から見た棄民策適用である。「事故はつきものだから住民は被曝を受け入れよ」という原発産業の開き直りである。
 その直後に東電福島事故が生じた。悲しいかな、IAEA、ICRPに具体化された国際原子力ロビーの通りの方針が日本の事故に適用された。
 それに日本政府独特の住民「愚民視」と虚偽による「住民の洗脳」が加わる過酷な政治である「知られざる核戦争:日本ファシズム版」が展開した。

 事故直後「原子力緊急事態宣言」が発せられ、法律では公衆(一般市民)は年間1ミリシーベルト以下で守られなければならないことになっているところ、あろうことか、年間20ミリシーベルトまで被曝を強要されることとなった。
 これと同様な事態が、放射性廃棄物の制限にも出現した。法律では100Bq/kgであったものが8000Bq/kgまでとされたのである。
 「原子力災害対策指針」は避難住民に対してスクリーニングの基準をOIL4(Operational Intervention Level4)(事故直後の40,000cpm(120Bq/cm2)と1か月後の13,000cpm(40Bq/cm2))と指定されているところ、福島県は事故直後に100,000cpmを基準とした。
https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/ps-iryou-screening.html

 このように国際原子力ロビーが、次の原発事故に際しては、チェルノブイリで住民保護法である「チェルノブイリ法」を施行させた「失敗」の二の轍を踏ませないように、準備万端整えたところに、東電福島事故が生じたのである。
 

科学者の社会的責任と倫理−宮崎・早野論文に関連してー 山田耕作

2019年6月


科学者の社会的責任と倫理

−宮崎・早野論文に関連してー

山田 耕作
2019年5月26日


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科学者の社会的責任と倫理−宮崎・早野論文に関連してー(1)(pdf,23ページ(p1-p23),9912KB)
科学者の社会的責任と倫理−宮崎・早野論文に関連してー(2)(pdf,23ページ(p24-p46),7297KB)


 現在、福島原発事故による被曝被害が顕在化し、多くの人が被災地や避難地で病気や生活困難に苦しんでいます。それらの被災者を救済するために私たちは全力を尽くさなければなりません。被災者の救済は人権の上からも、子供たちの未来のためにも当然のことです。にもかかわらず、政府はオリンピックの大騒ぎで、福島原発事故の加害責任を忘れさせようとしています。現在、政府・東電とそれに協力するマスコミ、科学者、文化人は「被曝安全論」のデマ宣伝をいっそう強めています。東京オリンピックの開催そのことによって、さらに被曝被害を拡大します。 
 以下のスライドは2019年5月26日、日本科学史学会のシンポジウム「放射線の被曝調査と防護基準策定をめぐる科学と倫理−その歴史と現在」で報告したものです。
 ここでは「被曝安全論」を唱える論文を利用して科学者、文化人、政治家が偽りの「被曝安全論」を展開していることを批判しています。


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http://doi.org/10.1088/1361-6498/37/1/1

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http://doi.org/10.1088/1361-6498/aa6094

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https://journals.lww.com/epidem/Fulltext/2019/03000/Re__Associatio
ns_Between_Childhood_Thyroid_Cancer.26.aspx



―出版予定書籍の案内と紹介― 東京オリンピックがもたらすこれだけの危険 渡辺悦司

2019年5月

――出版予定書籍の案内と紹介――

東京オリンピックがもたらすこれだけの危険

憂慮する科学者、医師、避難者、市民は警告する(仮題)



緑風出版から近日出版予定


編集:渡辺悦司
執筆者・寄稿者:石津望、大和田幸嗣、大山弘一、岡田俊子、落合栄一郎、桂木忍、川崎陽子、小出裕章、下澤陽子、
鈴木絹江、鈴木優彰、園良太、つばくらなおみ、羽石敦、ノーマ・フィールド、福島敦子、藤岡毅、本行忠志、三田茂、
矢ヶ克馬、柳原敏夫、山田耕作、山田知恵子、渡辺悦司

2019年5月30日



〖ここからダウンロードできます〗
東京オリンピックがもたらすこれだけの危険 憂慮する科学者、医師、避難者、市民は警告する(pdf,9ページ,266KB)
 


 皆さま、われわれは、以下の内容で東京オリンピックによる被曝の危険に警告し開催に反対する書籍を出版する企画中です。原稿は出版社に発送しました。以下はその出版企画の内容(私の書いた企画の呼びかけ「序文と解題」)です。本企画に対しぜひご支援を頂くようお願い申し上げます。

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   序文と解題  渡辺悦司

 もうおよそ1年後には、東京オリンピック・パラリンピック*が開催されようとしている。本書は、オリンピックによってもたらされようとしている放射線被曝の恐るべき危険を広く日本と世界の人々に警告するための緊急出版である。
  *以下「東京オリンピック」「東京五輪」「東京2020」という用語を東京パラリンピックをも含む広い概念として使用することとする。
 すなわち、①東京オリンピックに参加することを計画しているアスリートと観客・観光客に、福島や東京が全く「安全である」「被曝リスクはない」「被曝しても健康影響はない」という日本政府の宣伝を決して信じないように強く勧告し、②短期間であっても福島や東京圏に滞在することがもつ被曝の危険性とリスクを正しく認識して、オリンピック・パラリンピックへの参加を再考するように呼びかけ、③オリンピックの大宣伝と大建設ブームの対極として進められている、日本政府による避難者や被災者への援助切り捨て、政府基準で年間20mSv(日本政府はこれに該当する空間線量率を3.8µSv/hと規定しており、実際には20mSv/yと偽って33mSv/yを押しつけている注)という高汚染地域への住民帰還、それによる「棄民」と確率的「大量殺人」――この戦争犯罪にも匹敵する「人道に対する罪」――について知るように促し、④現実に現れ広がり深刻化している福島・東京および日本全体における、被曝影響と考えるほかない健康被害を想起するように訴え、⑤日本政府に対してオリンピック開催を返上するように要求し、各国政府・スポーツ団体に対して選手の被曝リスクを真剣に考慮して東京オリンピックに選手団を送らないように勧めるものである。
 本書は、日本政府やマスコミが組織している東京オリンピックに向っての大宣伝の中で、この憂慮を共有する多くの市民・科学者・医師・避難者の人々からの寄稿により構成されている。
 言うまでもなく、本書への寄稿者全員が、本書に記すオリンピック反対の理由や根拠の全てについて意見を共にしているわけではない。各寄稿者の憂慮・反対の論拠や範囲や強調点には当然ながら見解の相違やニュアンスの差がある。だが、いかなる理由や根拠からにせよ、東京オリンピックが「危険である」と声を挙げるべきであるという点では寄稿者は完全に見解を一にしている。
 本書は3つの部分からなっている。
・第1部では、東京オリンピックでの被曝がなぜ危険なのかを科学的医学的に解説する。
・第2部では、東京オリンピックの危険を警告し開催に反対している科学者・医師・市民の発言を紹介する。
・第3部では、福島原発事故の健康影響は本当に現れていないのかを検討する。福島や東京・関東圏からの避難者たちが実際に経験した症状を概括し、その発言を紹介する。
 最も重要な論点は、「短期滞在でも危険である」と考えるべき十分な根拠があるということである。以下、主要な論点を、放射線科学・医学および具体的被曝状況という客観的側面と、道義・人道・人権上の正義に反する側面とに大きく2つに分けて概観してみよう。

  放射線科学・医学および被曝状況の側面から言えること:
 まず第1に、放射線科学と具体的な被曝状況の分析に基づいて以下の諸点を確認できる。
 ●福島原発事故の放出放射能量:福島原発事故による放射能放出量は決して「わずか」ではない。大気中放出量はセシウム137ベースで、日本政府の推計でさえ広島原爆168.5発分である。つまり日本政府の見解は、広島原爆168.5発分の「死の灰」によっても何の健康影響も一切ないという主張なのである。これは虚偽以外の何のものでもない。実際には、日本政府の行っているいろいろな過小評価を補正すると、大気中放出量ベースでも、国際的なINES基準によって比較して、福島事故は大気中放出量でチェルノブイリ原発事故とほぼ同等、海水中・汚染水中放出量を入れるとチェルノブイリ以上の放射能を放出した史上最大の原発事故であった。日本の陸土への放射能沈着量は、放出量の約27%(UNSCEAR)、日本政府発表から計算しても広島原爆のおよそ50発分である。原水爆やチェルノブイリ事故と違い、強力な上昇気流が起きなかった福島事故では、陸土への沈着量がとくに大きい。福島事故では、現存する残留放射能量は極めて大きく、チェルノブイリの汚染地区やネバダ核実験場とその近郊でオリンピックを行うに等しい。(第1部第1章)
 ●放射性微粒子:とくに福島原発事故の固有の特徴であるガラス状不溶性放射性微粒子の危険性は極めて大きい。欧州放射線リスク委員会ECRRの係数で400〜5万倍(中央値で約4500倍)である。しかも鉄分を含むので一度生体膜に付着すると排出されにくい。気象研究所の足立光司氏が発見した粒径2µm程度の微粒子は、現在約1ベクレルBq(1秒間に1回の原子核崩壊が起こる放射能量)程度であろう。それを1個を吸引したとしても、ECRR係数でおよそ4500Bq相当のリスクとなる。政府側専門家のよく言及する「安全レベル」とされる体内のカリウム40(約4000Bq)を超える「危険」水準に達する。さらにNHK番組で紹介されているように粒径1〜数μmの微粒子は東京・関東圏に広く沈着している(後述)。さらに、放射性微粒子は再飛散・再拡散・移動しつつある(土壌との反応による新たな不溶性微粒子再形成、交通機関と物流による拡散と都心集積、ゴミ焼却による微粒子の放出、放射能汚染された除染除去土・ガレキなど[ここでは除染残土と呼ぶ]の再利用による拡散、「黒い物質」の生成と拡散など)。つまり、短期滞在でも、アスリートと観客・観光客は、放射性微粒子を吸引したり食事により摂取する危険性が避けられず、生涯にわたって健康上のリスクを負うことになる。(第1部第2章)
 ●放射線量率は低くない:とくに野球とソフトボールの会場となる福島あずま球場は、セシウム137ベースで最大6176.0Bq/kgの土壌汚染がある(第2部第7章)。この数値は、日本政府の係数(×65)を利用して平方メートル当たりに換算すると40万1440Bq/m2となる。これはチェルノブイリ法での避難権利区域(18万5000〜55万5000Bq/m2、1〜5mSv/y相当[シーベルトSvは放射線被曝量の単位、1Svが放射線致死線量の最下限値])にあたり、しかも強制避難レベルにかなり近い水準である。避難指示が最近解除されたような汚染度の高い地域(政府基準での帰還基準20mSv/yは実質33mSv/y注)に10日あまり滞在すれば、国際的な一般公衆の年間被曝限度1mSvを上回る外部被曝量になる。これにさらに食品の放射能汚染度が加わるので、福島への観光旅行も決してリスクがないとは言えない。
 ●線量表示の操作疑惑:すでに『放射線被曝の争点』緑風出版(2016年)で指摘したように(194〜197ページ)、政府発表の空間線量は、モニタリングポストも放射線測定器も大きく過小に操作されている可能性が高い(ほぼ2分の1)。実際には、福島だけでなく東京の空間線量も公式発表値以上に高い可能性が否定できない(市民による実測値は上同77ページに引用)。
 ●トリチウム汚染水の海洋放出の計画:オリンピックまでに汚染水の海洋放出を開始しようとする日本政府の計画は、反対が圧倒的だった公聴会の結果(後述)にもかかわらず、依然進行中である。福島の事故原発で海洋放出すると、福島沖の南向きの海流に乗って東京方向に流れる。薄められた放出水は海水より比重が軽く海水の表面に広がる。海水中の有機物やプランクトンと反応し有機トリチウムに変化する。台風での塩害が関東平野の広い地域で観測されたように、強い東風あるいは北東風が吹けば、太平洋沿岸地帯だけでなく関東・東北の広範囲な内陸地域でもトリチウムによる被曝影響が考えられる。トリチウムのとくに有機物と結合した化合物には特別の危険性があり、その危険度は外部被曝の50〜600倍である(第1部4章、第2部第10章)。
 ●福島産の食材を選手村に集中的に提供する計画:オリンピック・パラリンピックで提供される食事には福島産の食材が優先的集中的に提供される計画である(「選手へ福島の食材を」読売新聞2018年7月24日付記事)。食品に関する日本政府の基準100Bq/kgは、事故以前は放射性廃棄物の基準であり、基準以下であっても安全とは決して言えない。各地の市民測定所で発見されるように、現在でも低線量の汚染された食品の事例は少なくない。放射能の本質からして、数ベクレル/kgであっても決して安全とは言えない。(第1部第9章)
 ●東京圏の水道水の放射能汚染:水道水についても、放射能汚染が続いている。東京や関東圏の水道水中の放射性セシウムを吸着フィルターを使って測定すると、驚くほど高い値となる(5ヵ月間使用で最高1400Bq/kg)。2018年以降、東京の水道水のセシウム汚染はおよそ2倍に上昇しているという結果が出ている。東京都水道局の浄水場発生土からは、2019年2〜3月にも、依然として最高48Bq/kgの放射性セシウムが観測されている。飲用の場合の内部被曝、シャワーの場合の肺と皮膚よりの被曝、水泳などの場合の内部被曝の危険性について、深刻に考えるべきである。(第1部第8章)
 ●被曝影響の蓄積性:食品の放射能汚染が体内で蓄積されていく傾向については第1部第9章が検討している。それと同様に、がん発症の引き金となるDNA・ゲノムの変異は「蓄積」されて発症に到ることが明らかになっている。これは、最近注目されている慢性炎症からの発がんの場合でも同じである。つまり、少量の追加被曝でも、すでにDNA・ゲノム変異あるいは炎症性病変が「蓄積」されておれば、低線量の被曝でも発症への「最後の引き金」になり得るということである。
 ●放射線感受性(影響の受け易さ)の個人間の相違は非常に大きい:年齢・性・遺伝的特質・アレルギー体質などにより、個人によっては放射線感受性が極めて高い人々が存在する。とくに幼児や成長期の子どもなどはとりわけ感受性が高いと考えられる(過小評価が明らかなICRPでさえも2〜3倍)。内部被曝の場合の個人差は最大で100倍。対数の中央値でとると上下に10倍ということになる。つまり微粒子から同じ線量を浴びても、10倍相当の被曝影響が現れる人々がいるということである。(第1部第3章)
 ●事故原発は今も不安定な状態:事故原発からはいまだに「自発核分裂」(東京電力の表現)による放射能が放出され続けている。政府・東電が現在進めでいる廃炉作業自体が放射能とくに放射性微粒子を放出し続けている。大量放出や再臨界を引き起こす危険が現にある。重大な余震や新たな地震、津波の危険も去っていない。地震で損傷した排気塔(その内部には広島原爆1発分の放射能があるといわれる)が倒壊する危険性がある。その除去作業がオリンピックまでに始まろうとしているが、排気塔を溶断することになっており、その際大量の放射性粉塵を放出し、極めて危険な再飛散の事態が生みだされようとしている。
 ●除染残土(およそ広島原爆5発分の放射能を含む)の再利用による拡散:除染作業で出た残土(2200万トン、日本政府のデータから計算すると広島原爆約5発分が含まれる)が公共事業で再利用されようとしている。日本全土が人為的に再汚染されようとしている。場所や詳細が公表されていない場合が多く、日本政府は文字通り核物質をバラ撒く「核テロリスト」として振る舞っている。福島では、除染残土の「中間貯蔵施設」へのピストン輸送によって、輸送路周辺地域の放射線量が急上昇している。
 ●国連科学委員会UNSCEARの「被害ない」評価の虚偽:政府や専門家たちは、福島原発事故放出放射能による健康被害について、国際的権威としてUNSCEARの評価を持ち出して、影響や被害は「一切ない」と主張している。このような主張は虚偽のものである(第1部第6章)。
 ●現実に健康被害が出ている:福島だけでなく東京や関東からの避難者の実体験で明らかなように(第3部第4章)、また最近の病院統計などが示すように、現実に健康被害は深刻な形で発生している。臨床医学的にも、操作されている疑惑のある厚労省の病院統計でも(がんとくに白血病)、さらには文科省の学校統計(子供の精神発達障害)などにさえも、はっきり現れている(第3部第2章)。また福島と関東の子供たちの尿検査の結果(第3部第3章)にも明確に現れている。人口動態統計の分析からも、事故後の7年間で約28万人という過剰な死亡増が生じており、日本の人口学的に深刻な事態は明らかである(第2部第12章)。福島や東京からの避難者が実際に体験した健康影響についての手記も、現実の被害を示している。
 ●被曝によるアレルギー症状:短期滞在であっても深刻なリスクが考えられる症状の1つは、自己免疫異常・アレルギーである。すでに、避難者などの経験により、福島や東京への訪問や滞在によって、アレルギー体質・症状をもっている場合それが急に重症化したり、今はアレルギー体質・症状をもっていなくても被曝により新たに発症したりする危険性が示されている。(第3部第1章・第4章1)
 ●本来何をなすべきか:帰還政策・復興政策を中止し、反対に大規模な避難、とりわけ幼児や子供たちとその親たち、若者たちを汚染地域から避難させ、それを国家的に組織し支援すべきである(第3部第4章4)。これ以外に道はない。太平洋戦争中の学童の「集団疎開」に学ぶべきなのである。現在すでに避難している避難者たちへの住宅と生活の支援を国家的・行政的に支援すべきである。福島のみならず東京を含む広範な東日本の汚染地域からの「避難の権利」を保障すべきである。オリンピック予算は本来事故による被曝被害の対策、避難者の支援策に使われるべきなのである。

  道義・人道・人権の側面から言えること:
 第2に、東京オリンピックへの反対の根拠として、その道義的・人道的側面、人権と民主主義の観点からの危険性を認識することもまた重要である。
 ●避難者や被害者の犠牲の上に行われている:オリンピックの準備は、避難者や被害者への援助を切り捨てと一体のものとして行われている。東京オリンピックを容認することは、避難者・被害者への「棄民政策」を容認することにつながる(第2部小出論考)。それはまた、20mSv/y(実質33mSv/y注)地域への避難者の帰還を強いることを基礎として行われている。日本政府・放医研の放射線リスク係数に基づいてさえも、帰還によって15%の人が帰還後に早死することが予測されるのである。日本では、福島原発事故放射能への被曝強要による「大量殺人」が現在実行中である(第1部第5章)。オリンピックを無批判に受け入れたり参加したりすることによって、この戦争犯罪にも等しい人道への犯罪を容認してはならない。
 ●除染労働者・建設労働者の犠牲の上に行われている:土木建設独占企業の莫大な利益と対照的に、除染作業は、劣悪な条件の下で除染労働者の「搾取」と被曝を前提として、被曝による疾患や致死の発生という犠牲を払って行われている(国際環境NGO「グリーンピース」の調査報告、国連人権理事会特別報告者による報告などを参照のこと)。オリンピック施設の建設作業現場でも同じである。労働安全衛生法に違反する危険作業や恐るべき過重労働、無休日での長時間労働が常態化している。すでに2人の労災死が報告されている。だが、これは氷山の一角にすぎない。国際建設林業労働組合連盟(BWI、本部・ジュネーブ)は、外国人労働者を含む、「労働者が極めて危機な状況に置かれている」「危険な現場や過重労働の実態」などを指摘し、「惨事にならないようすぐに対策をとるべきだ」とする報告書を大会組織委員会や東京都、日本スポーツ振興センター(JSC)に送った(朝日新聞2019年5月16日)。無批判にオリンピックに参加することは、これら除染労働者・建設労働者の置かれてきた苛酷で違法な半ば奴隷的な労働条件を容認することにつながる。
 ●福島原発事故被害「ゼロ」論に基づき日本と世界の人々への被曝強要政策を正当化する道具としてのオリンピック:オリンピック誘致決定時の安倍首相の声明のとおり、日本政府は、福島事故放出放射能による被曝の健康被害を過去・現在・未来について一切「ない」とする見解である。このようなことはありえない虚言である。被曝のリスクに関して日本政府の言うことを一切信用してはならない。「ゼロ」論の論理には、核事故であろうと核実験であろうと核戦争であろうと、その論理によって支配される民族を、けっきょくは人類全体を、被曝による自滅へと導いていくほかない本質がある(第1部第5章)。被曝被害が「全くない」というウソとデマによる支配が確立した日本では、被曝被害が「ない」ことを宣伝し「証明」するために、可能なかぎり多くの、可能なかぎり著名な(日本と世界の)人々を、可能なかぎり大きな被曝リスクに曝し、結果として可能なかぎり多くの人々の健康を破壊して被曝関連の疾患を発症させ、可能なかぎり多くの人々を被曝関連の疾患による致死に陥れるということが、あたかも「自己目的」であるかのように実行されている。文字通り「知られざる核戦争」が行われているのである(第2部第12章)。
 ●東京オリンピック誘致過程での汚職と腐敗:JOC竹田恒一(前)会長へのフランス検察当局の贈賄容疑での捜査が進行中であることに典型的に現れている(第2部第6章)ように、日本のオリンピック誘致過程自体が汚職にまみれた「道義に反する」「汚れた」行事である。このような腐敗オリンピックを許してはならない。
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 本文と上記の追加の根拠を全て総合すると以下の結論が出てくる。
 ドイツの医師団体(IPPNWドイツ支部)が警告するように、東京2020は「放射能オリンピック」「被曝オリンピック」となることは避けられない。全世界の最高のアスリートと全世界からの観客・訪問者が被曝リスクに曝される重大な危険が迫っている。
 東京オリンピックは、日本政府が行っている原発事故被害者・避難者切り捨て政策、帰還者への「棄民」政策=「大量殺人」政策の一環であり、知らずに参加したり無批判にその観客となることは、日本政府のそのような試みを黙認し容認する共犯につながりかねない。
 東京で開催されようとしているオリンピックは「人間の尊厳」を損なうものである。オリンピック憲章の規定する「オリンピズムの目的」すなわち「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てること」に真っ向から反している。
 日本政府は東京オリンピックを返上すべきであり、各国のオリンピック委員会は東京オリンピックをボイコットし、国際オリンピック委員会は本書に述べた全根拠により東京オリンピックを中止するべきなのである。

   第1部 東京オリンピック・パラリンピックでの被曝が危険なこれだけの根拠

 ここでは、東京オリンピック・パラリンピックがはらむ世界から参加するアスリートと観客・観光客への被曝のリスクについて、福島原発事故の規模とその深刻性を客観的科学的に分析し、訪れる世界のアスリートと観光客の諸個人にとって、たとえ短期滞在であってもその後の生涯にわたる被曝リスクが「ある」ことを明らかにする。
 福島原発事故による放射能放出量に再び立ちかえる必要があること、福島事故が放出した不溶性放射性微粒子が特別の危険性をもつことを、渡辺悦司論考で指摘する。放射線感受性の個人差が大きいことについて本行忠志(大阪大学医学部教授)論考が論じている。トリチウムが特別の危険性をもつことについて渡辺悦司・山田耕作(京都大学名誉教授)論考が扱っている。福島原発事故健康被害「ゼロ」論の論理とその帰結――可能なかぎり多くの人々・可能なかぎり著名な人々を可能なかぎり大きい被曝のリスクに曝す――について渡辺悦司論考が取り扱う。政府が被害全否定論の論拠としているUNSCEARの虚偽を藤岡毅(大阪経済法科大学客員教授)論考が明らかにしている。微粒子に加えて、生物濃縮によると考えられる「黒い物質」「黒い物体」と汚染の循環について大山弘一(南相馬市議会議員)論考が論じている。ゼオライト・活性炭フィルターを装着した場合に容易に観測される東京圏の水道水の明確な放射能汚染と最近の悪化について鈴木優彰論考が明らかにしている(下澤陽子による補足がある)。食品汚染の現状と福島産食品を集中的に選手たち供給することの危険性と道義的責任について大和田幸嗣(元京都薬科大学教授)論考で扱われている。

   第2部 東京オリンピック・パラリンピックの危険を警告し開催に反対して発言する科学者・医師・市民

 ここでは、すでに東京でのオリンピックの危険を警告し開催に反対して発言してきたさまざまな科学者・医師・市民の活動を紹介する。
 先駆的な意義をもつ雁屋哲(「美味しんぼ」の作者)のIOCへの2013年10月3日付公開書簡を石津望論考が紹介する。核戦争防止国際医師会議IPPNWドイツ支部の声明(梶川ゆう訳)も掲載する。さらに、ドイツにおける反被曝・反東京五輪の運動を桂木忍・川崎陽子論考が、米カリフォルニア州における東京オリンピック反対運動を石津望論考が紹介する。小出裕章(元京都大学原子炉研究所)のオリンピックの危険性を指摘した声明(抄録)を、ノーマ・フィールド(シカゴ大学名誉教授)の序文を付けて掲載する。アーニー・ガンダーセンの「放射能被害への塗り薬」と題する論考を渡辺悦司が紹介する。東京オリンピック・パラリンピック反対と返上の活動を積極的に行われている村田光平(元スイス大使)のインタビュー記事を掲載する。脱被ばくネットとチェルノブイリ法日本版の制定の運動が始めた東京オリンピックでの被曝反対の運動について岡田俊子・山田知恵子・柳原敏夫(弁護士)論考が扱っている。福島事故原発からのトリチウム汚染水の放出反対の運動については、山田耕作論考をお読みいただきたい。落合栄一郎(米ジュニアータ大学名誉教授、カナダ在住)論考は、自らの経験を踏まえて放射線の「見えない脅威」をあらためて強調している。矢ヶ克馬(琉球大学名誉教授)論考は、7年間で28万人の過剰死という健康被害の実情を示し、「一切健康被害は無い」という日本政府のキャンペーンが安倍ファシズムの象徴であり「知られざる核戦争」の一環であることを明らかにする。

   第3部 現実に出ている被曝影響、福島や東京・関東圏からの避難者は事故後体験した健康影響を訴える

 ここでは、福島原発事故による被曝影響や放射能被害と考えるほかない日本における健康状況と、現実に福島事故からの避難者、福島からだけでなく関東や東京圏からの避難者が実際に体験した健康影響についての手記を掲載する。
 避難者に現れている健康影響について臨床医として診療に当たっている三田茂論考がその全体像を概括する。現実に出ている被害について、がん、とくに白血病・血液がん、教育統計に現実に現れている子供の精神発達への影響を渡辺悦司論考で取り扱う。尿検査(放射性セシウム)に見る福島・関東の汚染については、調査を行った斉藤さちこ論考を渡辺悦司が紹介した記事を掲載する。東京・福島からの避難者の人々が実際に体験した被曝影響について、福島敦子(福島から避難)、羽石敦(茨城から避難)、下澤陽子(東京から避難)、園良太(東京から避難)による手記と、鈴木絹江(障がい者の立場から、福島から避難)のインタビュー記事を掲載する。(筆者・寄稿者の敬称はすべて省略させていただいた)。

注記:文科省「福島県内の学校の校舎・校庭等の利用判断における暫定的考え方について(通知)」(2011年4月19日)など。政府発表のあらゆる年間被曝量についても同じ係数操作により過小評価がなされている。日本政府は、IAEAによる放射能放出事故の際の屋内避難時の被曝量を評価する場合の木造家屋の遮蔽効果係数0.4を援用し、屋内に16時間・屋外に8時間生活すると仮定して、空間線量からバックグラウンドを差し引いた値に0.6を掛けるという係数処理を行っている(環境省「追加被曝線量年間1ミリシーベルトの考え方」[2011年10月10日]、IAEAの屋内避難時の係数の引用は、原子力安全委員会(当時)「屋内避難等の有効性について」[1980年6月])。IAEAの係数は遮蔽効果の過大評価であり、正しくない。しかし、日本政府がIAEAに依拠するのであれば、本来放射性プルーム(放射能雲)が来襲した際の「屋内避難」という短期間の対応策にだけ、しかもガンマ線に対してだけ、適用すべき係数であるはずである(正確には遮蔽係数0.4はプルームの「沈着後」のみ、来襲時は0.9で遮蔽効果は限定的とされている)。だが、日本政府はこれを、IAEAの定義にさえ違反して不当に永続化し、空間線量を少なく見せるための恒常的な手段として使っている。

放射線被曝のもたらす健康影響の全体像の把握に向けて――集団病態・症候学的方法による福島事故健康影響全否定論の批判 渡辺悦司

2019年2月
2019年6月改訂
2019年7月改訂

放射線被曝のもたらす健康影響の全体像の把握に向けて
――集団病態・症候学的方法による福島事故健康影響全否定論の批判


市民と科学者の内部被曝問題研究会会員 渡辺悦司
2019年2月19日
2019年6月11日改訂
2019年7月7日改訂


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放射線被曝のもたらす健康影響の全体像の把握に向けて――集団病態・症候学的方法による福島事故健康影響全否定論の批判(pdf,278ページ,7332KB)
 

   見えぬけれどもあるんだよ。
   見えぬものでもあるんだよ。
        (金子みすず「星とたんぽぽ」『童謡全集 空のかあさま 上』所収より)

  はじめに

 以下の論考は、 日本政府と政府側専門家たちが行っている福島原発事故放出放射能による健康影響全否定論(被害「ゼロ」論や「全くない」論あるいは「被曝安全安心」論)を批判する活動の一環として、 放射線被曝のもたらす健康影響の全体像を把握しようとする世界的・歴史的な努力を概観し、その中に福島原発事故による被曝被害を位置づけようとする一つの試論である。本論考は大きく3つの部分に分かれている。
 第1部は、日本政府・政府側専門家たちの福島原発事故放出放射能による健康影響全否定論(「ゼロ」論あるいは「全くない」論)の最近の進化―いっそうの露骨化と暴論化、デマによる支配の全面化と教育への権力主義的押しつけなど―を特徴づけ、その理論的な批判を取り扱う。 あわせて、政府側の新動向が反被曝の運動内部にどのように反映しているか、すなわち運動内部にどのような動揺・後退・屈服的諸傾向が進んでいるかを検討する。 疫学的データや統計に現れている事故影響のエビデンスについては、 すでに多くの人々によって検討が行われており、 ここでは省略して別の機会に譲りたい。
 第2部は、大きく3つの編に分かれている。第1編は、広島・長崎の原爆被爆者、核実験による被曝者、さらにはチェルノブイリ事故の被曝者などに現れた疾患・症状群の全体像(グローバル被曝被害)を歴史的に概括することである。第2編は、最近革命的な進歩を遂げつつある分子病態学・症候学によって解明された一連の基盤病態が生みだす広範な疾患・症状群と、放射線被曝によって生みだされることが解明済みの一連の基盤病態とを結びつけ、放射線被曝が生みだす疾患・症状の全体を疾患・症状群として特定しようとする試みである。つまり「放射線→基盤病態」と「基盤病態→疾患・症状」が解明されておれば、「放射線→疾患・症状」を推定することができるという考え方を実際の症例にあたって検証しようとしたものである。第3編は、福島原発事故による具体的な放射能放出量や放出形態、被曝状況や被曝形態を分析し、 それによってもたらされている具体的な疾患・症状を洗い出し、それと原爆被爆者、核実験被曝者、チェルノブイリ被曝者に現れた疾患・症状群とを比較対照しようと試みたものである。典型的な事例として、震災後の米軍トモダチ作戦に従事した兵士・士官・軍属の示している疾患・症状群を中心に過去の被曝例と比較対照し、さらに上記の放射線関連の基盤病態が関連する疾患・症状群に記載があるかを検証する。個々人について具体的な現れ方は相違するであろうが、集団として現れた疾患・症状の全体を見た場合、当該の被曝者集団が示している疾患・症状の全体から、その集団が(したがってその構成員が)被曝を受けたかどうかを病理病態学的・症候学的に特定することが可能であるのではないか、そこからその集団を構成する諸個人もまた被曝者であることが示せるのではないかという論点を提起する。
 第3部は、それに関連して、日本政府や政府側専門家たちが主張している福島原発事故放出放射能による健康被害の全否定論(「ない」論あるいは「ゼロ」論)の社会経済的基礎と政治的意味について検討する。 とりわけ、世界を支配しながら世界の勢力圏分割と世界支配の覇権を求めて相互に「使える核兵器」による核戦争を準備している帝国主義―現代では核帝国主義――の問題を取り扱う。福島原発事故に関連して、日本政府の行っている住民と国民全体に対する被曝強要策が、潜在核保有国としての日本も含む核帝国主義による「知られざる核戦争」 (矢ヶ崎克馬氏)であることを指摘する。あわせて、核帝国主義の被曝問題を扱う機関としてのUNSCEARやICRPが、一方で被曝被害の実情を科学的に認識しようと努力すると同時に核開発の利害からそれを矮小化し過小評価し最後的には全否定するという、二面的で矛盾した、しかし核帝国主義的利害に貫かれた本質を批判的に検討する。それにより明らかにされるのは、核帝国主義は、被曝被害を「知って」諸国民を被曝させようとしているということである。核帝国主義が廃棄されなければ、それは繰り返される原発事故・核事故によっても、通常運転による日常的な放射能放出によっても、蓄積されていく法外な量の核廃棄物によっても、来たるべき核戦争によっても、世界と人類を放射線被曝による滅亡に導かざるを得ないであろうという結論が出てくる。またそのような結論を避けることはできない。

 本論考は、まだ未完の部分も多く、研究ノートや資料集に近いが、議論のために皆さまに公表することとしたい。
 いろいろな病気名や症状名が極めて多く出て来て煩わしく感じられる読者がおられるかもしれない。表などは、読み飛ばしていただいてかまわないが、被曝した人々や避難者にとっては、これら症状は、全体についても、一つ一つについても、決定的に重要な健康問題であり死活の関心事である。どうかご容赦願いたい。
 読者の皆さまに訴えたいのは、政府側専門家たちが、また彼らが国際的権威として依拠しているUNSCEAR等もまた、相手を見てしゃべる言語を変える一種の「二言語話者(バイリンガル)」であり、端的に言えば国民向けと専門家内部向けでまったく別な発言をして何とも思わない「二枚舌」であるということである。
 国民に向けた政府側の広告塔として、「科学」的権威を傘に、被曝しても健康影響は「ない」などと主張している「専門家」は、みな虚偽の言語を語っている「詐欺師」である。その意味でもはや「専門家」でも「科学者」でもない。この点で、われわれは皆、理論的科学的に自信を持つべきであると考える。彼らは、国民とくに子供たちを放射線被曝へと誘う「ハメルーンの笛吹き男」のような死への扇動者であり、被曝による国民の大量の健康破壊や致死を正当化する「デマゴーグ」である、と言われても仕方がない。この点では、すなわち、政府との対決点である被曝の影響が「ある」か「ない」かの点では、「ある」と主張する反被曝の立場に立つ人々は、政府側専門家たちに対して絶対的な理論的科学的優位にあると自覚するべきであると確信する。
 「専門家」たちは、自分たちの仲間内では、多くの場合、国民向けとはまったく「別な言語」をしゃべっている。たとえば著名な政府側専門家は、(後で検討するように)自分が編纂した放射線医学の教科書の中では、被曝すれば影響が「ある」ことを前提に具体的な話をしている。もちろん、チェルノブイリや福島での「原発事故」を扱った箇所「以外」であるが。UNSCEARやICRPにしてもそうである。ここでは、私に可能なかぎり*、専門家たちが、一般国民向けの虚偽の言語ではなく、仲間内で交わしているまったく「別の言語」を読み解いて、その意味を皆さまに紹介しようと思う。そして、それらは全て、放射線影響が「ある」ということ、しかも深刻であるということを、はっきりと疑う余地なく示している。これらは、事故の健康影響が一切「ない」という政府や政府側専門家たちの主張を明確に論駁しその虚偽を暴露しているのである。
  *かつて私が学んだ言語教育学には、成功する学習者の鍵となる性質として”tolerance of ambiguity”という重要な概念がある。
  皆さまにもぜひお勧めしたい。Mary-Ann Reiss, Helping the Unsuccessful Language Learner,
  1981『英語科教育法セミナー』英宝社(1987年)30ページ

 本論考を、ささやかではあるが、すべての原爆・核実験・原発事故の被害者、福島・東北・関東・東京などからの避難者、トモダチ作戦によるアメリカでの被曝被害者、これらの人々の支援者と反被曝の活動家や関係するすべての皆さまとその闘いに、さらに被曝被害の問題に関心を持つすべての皆さまに、捧げたい。微力ながらお役に立つことができれば筆者にとってこれ以上の幸せはない。

  読者のための注記:
 本文中の数字は有効桁数にかかわらず、すべて大まかな概数であることを予め注記しておきたい。
 誤解を避けるためにこれまた予め付記しておくと、本論考では「民族」「国民」という言葉は、決して「愛国主義」的な含意をもつ情緒的表現としてではなく、純粋に社会学的な意味で、すなわち支配階級と被支配階級を区別せず、その両者から構成される(すなわち支配階級をも含む)、人種や国籍を問わず、国境で区切られた大きな人々の社会集団という意味で使っている。これに対して「人民」とは労働者階級と勤労人民すなわち被支配・被抑圧諸階級を表す言葉として、「住民」とは特定の地域に居住する階級を区別しない場合の社会集団の呼称として使っている。「支配層」とは「支配階級」の中の現実に権力を掌握し行使している集団のことである。
 原発事故による放射線被曝の健康影響の場合にまず第一義的に問題になるのは、基本的に階級を区別しない概念である「住民」「民族」「国民」である。放射線の作用は支配階級・被支配階級を区別しない場合が圧倒的に多いからである。もちろん二次的三次的には、避難の余裕や自由度、自覚的に汚染度の少ない食品を選んで食べることのできる条件などの諸事情が、各階級の被曝状態したがって健康状態に長期にわたって作用することとなる。
 また「帝国主義」とは、ここでの詳論は差し控えるが、レーニン『帝国主義論』の意味での帝国主義である。



  目次

はじめに                         ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・   1

第1部 放射線被曝被害をめぐる現在の情勢、日本政府・政府側専門家たちの福島原発事故放出放射能による
健康被害全否定論(「ゼロ」論、全く「ない」論あるいは「被曝安全安心」論)のさらなる露骨化・暴論化・
デマゴギー化とその反被曝運動内部への反映について、過去のグローバルな被曝被害の歴史を対置して批判す
ることの意義について                   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  11

 第1章 日本政府・政府側専門家たちの福島原発事故放出放射能による健康影響全否定論(「ゼロ」論、全く
 「ない」論あるいは「被曝安全安心」論)の新しい展開             ・・・・・・・・・  11
  1.原子力規制委員会が事実上「致死線量までの被曝」を受忍せよという恐ろしく危険な事態
  2.日本政府による「予防原則」の全否定
  3.このような法外な被曝基準解釈引き上げの背景と衝動力
 第2章 被曝被害の歴史的な経験・事実・エビデンスに立ち帰ること       ・・・・・・・・・  17
 第3章 ICRP・UNSCEAR・BEIRなどのリスクモデルの評価について       ・・・  18
  1.ICRPなどのリスクモデルは被曝影響が「ある」と認めている
  2.住民帰還政策のICRPリスクモデルによる分析:それが住民の「大量殺戮」とならざるを得ないこと
  の1つの例証
  3.放射線被曝による致死線量の国際機関による推計値
  4.バンダジェフスキー氏による内部被曝による半数致死線量
  5.復興庁パンフレットに見る放射線致死線量の公然かつ露骨な無視
 第4章 日本政府・専門家による胎内被曝影響・遺伝的影響が「ない」という虚偽主張    ・・・・  31
  1.UNSCEAR2001年報告の不誠実な引用
  2.胎児影響・遺伝性影響の存在は実証されている
  3.被曝2世調査の結果でヒトについての遺伝性影響全体を否定することはできない
  4.ICRPもUNSCEARも人間の遺伝性影響を認めている
  5.UNSCEARによる遺伝的影響の過小評価とECRRによる補正の試み
  6.遺伝的影響の中でのトリチウムの特別の危険性
 第5章 汚染水を海洋投棄するためにトリチウムの危険性ゼロを宣伝する日本政府と専門家    ・・  42
 第6章 自然放射線や医療用放射線など「身の回りの日常的に存在する放射線」について   ・・・・  45
  1.自然放射線の危険性について
  2.カリウム40の内部被曝と放射性セシウムあるいはストロンチウムの内部被曝との区別
  3.医療診断被曝のリスクについて
 第7章 「心理的ストレス」によってがんの過剰発症をどこまで説明可能か?     ・・・・・・・  51
 第8章 日本政府の被害「ない」論の暴論化とその反原発・反被曝運動への反映、福島原発事故による被曝被
 害をめぐる根本問題とそこでの理論的「動揺」の種々の諸形態        ・・・・・・・・・・・  52
  1.財界首脳でさえ影響が「ある」ことを認め福島原発事故の被害想定に言及している
  2.福島事故による被曝影響の評価に関する諸見解と反原発・反被曝の運動内の状況
  3.被曝影響をめぐる現在の根本的問題、基本的な対立関係――「ある」か「ない」か
  4.反被曝運動内部の動揺のいろいろな現れ

第2部 グローバルヒバクシャの概念とその基礎にある核被害(被曝病態・疾患・症状)のグローバルな共通性
あるいは本質的同一性                     ・・・・・・・・・・・・・・・・・  62

 はじめに――被曝集団の病態学的・症候学的序説                ・・・・・・・・・  62
  A)福島原発事故による被曝者とりわけトモダチ作戦兵士・士官・軍属に現れた疾患・症状と以下との比較
  B)すでに解明されているか推測されている放射線被曝影響と対応する基盤病態(↑↓は論理上それぞれ上
  の項目に戻る・下の項目に進むの意味)
  C)分子病態学・臨床医学などの進歩により解明されつつある上記の基盤病態から生じる広範囲の疾患・症状
  D)基盤病態を介して疾患・症状が放射線誘因あるいは関連である可能性が示唆される
  E)被曝の場合の疾患・症状の発現の特徴、不確定な複数あるいは多数の疾患・症状の同時並行的な進行

 第1編 広島・長崎原爆の被爆者、核実験での被曝者、チェルノブイリ事故の被曝者に現れた疾患・症状
                                   ・・・・・・・・・・・・・  67
  第1章 広島・長崎での原爆投下による、物理的身体損傷以外の健康被害についての記録   ・・・  67
   1.広島市・長崎市原爆災害誌編集委員会編『広島・長崎の原爆災害』
   2.原爆被爆者調査によっても低線量被曝によるがんの過剰発症が証明されている
   3.肥田舜太氏による「原爆ぶらぶら病」の提起、先駆的な業績
  第2章 核実験による健康被害             ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  71
   1.ドネル・ボードマン医師による、原爆投下後入市したり核実験に従軍したりして被曝した米軍兵士お
   よび市民などにおける「低線量放射線障害」の特徴づけ:肥田舜太訳『放射線の衝撃 低線量放射線の
   人間への影響(被爆者医療の手引き)』アヒンサー(2008年、原著1992年)より
   2.ネバダ実験場における大気圏核実験による被害健康被害に関する最近の研究(未完)
   3.太平洋諸島での核実験による健康影響、日本の漁船・船舶の乗員を含む
     ・ビキニ水爆実験による日本の漁船員の健康被害
     ・マーシャル諸島住民の被曝被害
   4.サハラ砂漠、ムルロア環礁でのフランスの核実験による健康被害(未完)
   5.中国の核実験による健康被害(未完)
   6.ソ連の核実験による健康被害(未完)
  第3章 チェルノブイリ原発事故による健康被害の全体像        ・・・・・・・・・・・・  82
   1.ヤブロコフら『チェルノブイリ被害の全貌』(原著2009年)
   2.チェルノブイリ原発事故以後の東欧諸国の人口2200万人減少――ヤブロコフらの100万人の犠
   牲者という被害推計は「控えめなもの」というのが自然ではなかろうか?
    ・ロシアの人口動向
    ・ベラルーシの人口動向
    ・ウクライナの人口動向

 第2編 最近の分子生物学・分子病態学から見た放射線被曝による健康影響の理論的に考え得る機序について
                             ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  94
  第1章 放射線によるDNA・ゲノム・細胞小器官(ミトコンドリアなど)の損傷   ・・・・・・  94
   1.一般的に考えられているモデル
   2.エリック・ホール氏による直接的作用の範囲の拡大
   3.青山・丹羽編『放射線基礎医学』による放射線のミトコンドリアやリソソームなど細胞小器官への作用
   機序の拡大
   4.吉川敏一監修の『酸化ストレスの医学 第2版』による放射線により引き起こされる酸化ストレスのミト
   コンドリア損傷を通じて慢性炎症に導く作用モデル
   5.小林正伸氏による放射線のDNAクラスター損傷のモデル
   6.DNA内部の水素結合に取り込まれたトリチウムの壊変によるDNA損傷モデル
  第2章 がん:がん生物学・腫瘍学の最近の革命的発展、がん発生・進展過程の全体的解明の進行、放射線
   影響の解明の課題――がんの遺伝子(ゲノム)変異の「蓄積」による「多段階」発症・悪性化 ・・ 102
   1.発症・進展の全体像が分子生物学的に明らかになりつつある
   2.「,気泙兇泙覆ん化関連遺伝子への変異導入とその固定、および多段階的なJ儖曚涼濱僉廚砲
   る発がんと悪性化
    ・がん生物学教科書の説明――大腸がんの例
    ・ICRP2007年勧告の説明
    ・最近の研究上のキーポイント――ゲノムの変異の全体を捉える
   3.がん遺伝子(の活性化)とがん抑制遺伝子(の失活)
   4.がんの遺伝子異常のまとめ(渋谷・湯浅前掲より)
   5.ゲノム不安定性(DNA、ヒストン、クロマチン、染色体)
   6.がん発症・進行・悪性化における免疫系および炎症の役割
   7.がんの発生・進展の原因・誘因=環境汚染・放射線被曝を含む「複合」要因
   8.がんの発生・進展に対する放射線影響:もっと広く、しかも長期にわたって蓄積されると考えるべき
    ・放射線の影響再論
    ・放射線影響下でのがん発現までの期間(潜伏期間)の問題点:がん発生・進展のどの時期でどれだけ
    の量被曝したかで違う
   9.子供の甲状腺がんについて『甲状腺腫瘍 診療ガイドライン』による放射線被曝の位置づけ
   10.各種がんの放射線感受性
  第3章 放射線が生みだす活性酸素・フリーラジカルとそれによる酸化ストレス(ペトカウ効果)による健康
  影響の可能性――酸化ストレスという機序からのアプローチ       ・・・・・・・・・・・・ 133
   1.酸化ストレスによる被曝影響の短期的および長期的過程
   2.活性酸素・フリーラジカルがもたらす酸化ストレスに関連する疾患・症状の一覧
   3.放射線被曝による酸化ストレスの例証:チェルノブイリの汚染地域の子供たちが示す高いフリーラジ
   カルの量
  第4章 放射線が生みだす長期的細胞炎症(バイスタンダー効果)がもたらす健康影響の可能性――多様な
  疾患の基板病態である慢性炎症という機序からのアプローチ              ・・・・・ 138
   1.放射線による慢性炎症
   2.慢性炎症の発生と進行の考えられているモデル
   3.放射線が生みだす長期的細胞炎症を介して放射線影響の可能性のある疾患・症状
   4.放射線被曝状況下でのがん生存期間の減少、その説明の1つとしての被曝による慢性炎症の増悪の可能性
   5.有機トリチウムが体内脂肪として脂肪組織および脂肪の比率の高い脳に蓄積し、脂肪炎症の引き金の
   一つとなり、広範囲の代謝性症候群や脳内炎症性疾患・脳腫瘍および広範囲の炎症性疾患の基礎となって
   いる可能性について
  第5章 放射線被曝によるミトコンドリア損傷を通じた機序から考えられる健康影響    ・・・・ 146
  第6章 イオンチャネル系に関連する疾患・健康障害――放射性セシウムによるカリウム・イオンチャネル
  系の阻害ほか                                ・・・・・・・・ 147
  第7章 アルツハイマー病および糖尿病と放射線被曝影響の可能性についての例証      ・・・ 160
  第8章 放射線被曝による免疫系への影響             ・・・・・・・・・・・・・・ 162
   1.青山・丹羽編『放射線基礎医学』における放射線免疫学の叙述
   2.UNSCEAR2006報告における放射線の免疫系への影響の叙述
   3.日本医師会『血液疾患診療マニュアル』(2000年)が記載する免疫機能低下による易感染性症状群
  第9章 ホルモン・代謝系への影響(三田茂医師の研究に関連して)    ・・・・・・・・・・・ 166
  第10章 腸内細菌叢の撹乱を通じた機序から考えられる健康影響      ・・・・・・・・・・ 168

 第3編 放射線による影響の受けやすさ(放射線感受性)の個人差について      ・・・・・・・ 172
  第1章 年齢別の放射線感受性の差異          ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 172
  第2章 放射線感受性の男女差               ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 174
  第3章 遺伝子変異による放射線高感受性          ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 176
  第4章 放射線感受性による被曝基準の諸個人への適用上の問題あるいは避難の権利――放射線高感受性
  集団にとってのLNT仮説の非人道的・人権侵害的側面        ・・・・・・・・・・・・・ 182

 第4編 福島原発事故における被曝被害             ・・・・・・・・・・・・・・・・ 185
  第1章 福島事故による被曝状況:福島原発事故の放出放射能量、福島事故に特有の放出形態である不溶性
  放射性微粒子、福島事故による住民の被曝量           ・・・・・・・・・・・・・・・ 185
   1.福島事故による放射能放出量の推計
   2.東京電力「福島第一原子力発電所事故における放射性物質の大気中への放出量の推定について」(2
   012年5月)より
   3.日本政府の見解:原子力安全・保安院の2011年8月26日発表「東京電力株式会社福島第一原子
   力発電所及び広島に投下された原子爆弾から放出された放射性物質に関する試算値について」
   4.福島原発事故に特徴的な放出形態:不溶性放射性微粒子の特別の危険性
    ・直接的作用と間接的作用(再提起)
   5.福島原発事故の放出放射能がもたらした実際の被曝量の推定――山田国廣氏による小児甲状腺被曝線
   量の推計
   6.米国防総省発表の福島原発事故による甲状腺被曝量の推計
   7.山田国廣氏による外部被曝初期被曝量及び積算線量の算定をベースとした福島原発事故の場合のチェ
   ルノブイリ方式による避難基準の試算
 第2章 福島原発事故での例証1:福島原発事故によって生じたプルーム(放射能雲)に突入し被曝したトモ
 ダチ作戦従軍米軍兵士・士官・軍属の訴える症状・体調不良    ・・・・・・・・・・・・・・・・ 216
 第3章 福島原発事故での例証2:三田茂医師が提起する福島原発事故での放射線被曝による「能力減退症」
                             ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 222
 第4章 福島原発事故での例証3:「能力減退症」の他の実例と放射線被曝とネオニコチノイドの複合影響の
 可能性――子供の知的能力の低下が十分に考え得るという論拠         ・・・・・・・・・・ 225
  1.衝撃的な『日経サイエンス』「宇宙放射線で脳障害」論文
  2.群馬県で行われた山林へのネオニコチノイド散布との複合影響の可能性
 第5章 福島原発事故での例証4:福島および関東圏からの避難者の経験した健康被害の概観   ・・ 232
  1.福島からの避難者の手記に現れた症状
  2.関東・東北からの避難者およびその周囲の人々が経験した症状
 第6章 福島原発事故での例証5:NHKが報道した日本の「生殖危機」         ・・・・・ 236
  1.NHKの番組が報道しなかった環境・放射線影響
  2.極低線量から観測されたチェルノブイリ事故後の鳥の精子数の減少と無精子雄鳥の顕著な増加
 第7章 現実に現れているがんとくに白血病・血液がん、子供の精神発達障害などの多発について ・・ 240

第3部 福島原発事故の放出放射能による健康被害の全否定論(「ない」論あるいは「ゼロ」論)の社会経済的
すなわち帝国主義的基礎と政治的意味、第二次大戦後のグローバルな規模での被曝過程の中で見た福島原発事故
被曝正当化論                           ・・・・・・・・・・・・・・・ 257
 第1章 UNSCEARによる第二次大戦後の人為的放射線源由来の集団線量を歴史的に集計する試みについて
                             ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 257
  1.UNSCEARの発足時から規定された二面的で矛盾した本質と核帝国主義的利害の貫徹
  2.被曝被害の全体像を世界的・歴史的に総括しようとしたUNSCEARの試み
  3.ECRRによるいろいろなICRPモデル過小評価係数について
  4.福島級原発事故が6回繰り返されるようなことがあれば全核実験放出量に匹敵
 第2章 歴史的な被曝強要政策のもつ帝国主義的性格と反被曝の要求のもつ客観的な反帝国主義的性格および
 それらの展開                              ・・・・・・・・・・・ 265
  1.広島原爆や核実験による放出放射能と比較すれば、福島事故の被害が「全くない」というようなことは
  最初からありえない
  2.被曝被害を国民に強要し受忍させることを軸に展開される政府の政策――民族自滅への道
  3.事故放出放射能への被曝による「見えざる核戦争」の世界史的な性格
  4.なぜそのような恐ろしい事態が生じているのか――被曝強要の帝国主義的基礎とそこからの出口
  5.帝国主義からの反原発要求とその限界――小泉元首相の例
  6.反被曝の運動が客観的に帯びざるを得ない反帝国主義的性格

結語に代えて――アンデルセン「裸の王様」の物語の新しい意味――「学ぶ」    ・・・・・・・・・ 274

謝辞                                  ・・・・・・・・・・・・ 275

付録 財界首脳が事故により数十万人の犠牲者が出ることを認識していたという一証拠     ・・・・ 276

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